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「小皿に盛り付け」の減量効果はどれくらい?

ニューズウィーク日本版 / 2018年8月21日 16時0分

<目の錯覚を利用して脳をだませば少量の食事で満足できるという説に異議あり!>

減量したいなら、料理を小さなお皿に盛り付けなさい──近頃、ダイエットの専門家がインターネット上で盛んにそうアドバイスしている。「デルブーフ錯視」と呼ばれる目の錯覚を利用して脳をだませば、少量の食事でも満足感を得られるというのだ。

デルブーフ錯視とは、同じ大きさの2つの円を並べ、一方を小さな同心円で、もう一方を大きな同心円で、それぞれ円の外側を囲むと、前者のほうが大きく見えるというもの。つまり、小さな皿に盛った料理は大きな皿に盛った料理より量が多く見えるということだ。

この仮説を支持する研究はいくつかある。14年に国際肥満ジャーナルに掲載された論文もその1つで、皿の縁の幅が広いと、被験者は盛られた料理を少なく感じることが分かった。

それに先立って12年に行われた実験では、被験者に大きさの異なるボウルを渡して、飲みたい量だけスープをつがせた。すると小さなボウルを渡されたグループは、大きなボウルを渡されたグループに比べ、少量のスープで満足する傾向が認められた。

ただし、問題は空腹時でもデルブーフ錯視で脳をだませるかだ。

ネゲブ・ベングリオン大学(イスラエル)の研究チームは、実験前の1時間に何か食べた「満腹グループ」と、実験前の3時間は何も食べていない「空腹グループ」に被験者を分けて、デルブーフ錯視の効果を調べた。

すると、車のハブキャップなど食品以外の物の大きさを比べさせる場合は、どちらのグループも錯視に引っ掛かった。だが皿にのせたピザの大きさでは、「空腹グループ」は錯視にだまされず、正確な判定を下した。

地道な正攻法が一番

「ダイエット中は空腹な状態にあることが多いが、その状態ではデルブーフ錯視を利用して脳をだまし、食べる量を減らそうとしてもうまくいかないようだ」と、ニューヨーク州立大学ダウンステート・メディカル・センターのスザナ・マルティネスコンデ教授(この研究には参加していない)は科学誌サイエンティフィック・アメリカンに語っている。つまり「小皿ダイエット」に減量効果は期待できないということだ。

この研究は比較的小規模なものだが、減量と体重管理の難しさを浮き彫りにした意義は大きいと、英栄養士会の広報担当エースリング・ピゴットは本誌に語った。「減量のための『魔法のテクニック』はないかとよく聞かれるが、カロリー制限はそう簡単ではない。確かに欠乏感や空腹感は、食べ物の量に対する見方に影響を与えると考えられる。カロリー制限をしているときに限って食べ過ぎてしまうのも欠乏感のなせる業だろう」



ピゴットによると、ダイエット中は欠乏感や空腹感をなくすためにも「減らす」とか「制限する」という言葉を使わないほうがいい。「楽しむ」「味わう」といった表現で、「自分の変化をポジティブに捉える」ことが効果的だという。

満足感を持続させるには、極端な糖質制限に走らず、1日の消費カロリーを考慮した上で、炭水化物とタンパク質をバランスよく含んだ食事をきちんと取ることが大切だと、ピゴットは助言する。栄養バランスのよい食事を取っていれば、ついジャンクフードを食べてしまうといったことも防げる。

脳をだますトリックに頼るより、地道な正攻法を続けることがダイエット成功の秘訣だ。

<本誌2018年8月14&21日号掲載>


カシュミラ・ガンダー

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