それでも私は辞めません......安倍首相の異例の長期政権が意味するもの
ニューズウィーク日本版 / 2018年9月15日 16時20分
<「モリ・カケ」問題も支持率低下も関係なし、異例の長期政権は旧来の日本政治を打破する?>
安倍晋三首相は伝統を好む。教育では伝統的価値観を、宗教では論争の的となる神社が象徴する伝統的な信仰を、軍事の分野ではかつて存在したような軍隊を。ところが、ただ1点においては、過去と決別する明確な意思を示している。すなわち、政治的な自己犠牲だけは払わない、と。
日本の経済界では、自社の未来を揺るがす不祥事が起きたら、経営者はほぼ間違いなく辞任する。自社製エアバッグのリコールが各国で拡大したタカタのように大規模なスキャンダルに見舞われた場合はもちろん、限定的な事件でも多くの場合で辞任は必至。00年には、雪印乳業(現・雪印メグミルク)の工場の1つで製造された製品が集団食中毒を引き起こした事件を受けて、社長が引責辞任した。
日本の政界では、内閣支持率が30%を切ったら退陣に追い込まれてもおかしくない。いい例が在職期間約1年で突然辞任した福田康夫や鳩山由紀夫、菅直人だ。安倍自身も、06年から率いた第1次政権は366日間で終わった。
だが12年に首相の座に返り咲いて以来、長引く2つのスキャンダルにもかかわらず、安倍は退く気配も見せない。今年2月の建国記念の日に当たっては「伝統を守りながら、同時に、変化を恐れず、困難な課題に対しても果敢に挑み、乗り越えていく......その決意を新たにしております」とのメッセージを発表。この言葉が安倍の個人的な野心、そして日本の政治文化を変えてみせるという野望の深度を示している。
「安倍降ろし」が起きない訳
安倍政権に付きまとう2つのスキャンダルは、ある意味では平凡だ。米政界であれば、物事を円滑に進める手法にすぎないと見なされるかもしれない。
その1つが、いわゆる加計学園問題だ。安倍の長年の友人が理事長を務める同学園が昨年、獣医学部の新設を認可された件をめぐって安倍が影響力を行使したとして糾弾されている。
安倍とその側近は、実際には行われた面会を否定した揚げ句、事実を暴かれるという罠にはまった。そうした面会の1つで、首相秘書官が「本件は首相案件」と述べた記録があることも明らかになった。安倍のお粗末な抗弁は、国民にとって到底信じられるものではない。日本経済新聞が今年5月下旬に実施した世論調査では、加計学園問題への関与を否定する安倍の説明に「納得できない」と回答した人の割合が74%に上った。
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