トランプ当選を予言した2人の監督が語る、アメリカのカオスと民主主義
ニューズウィーク日本版 / 2018年10月31日 16時30分
<トランプとアメリカ社会を描写した新作を公開したマイケル・ムーアとジェームズ・スターンが本誌に明かす本音>
ドナルド・トランプが大統領に当選して約2年。中間選挙が迫るなか、2つのドキュメンタリー映画がアメリカで公開された。いずれも、16年の大統領選前に有識者がトランプ勝利の可能性を笑い飛ばす映像で始まる。
1つはマイケル・ムーア監督の作品で、トランプをめぐる2作目。大統領選の直前に撮影・公開した1作目『マイケル・ムーア・イン・トランプランド』でムーアは、トランプの当選を予想した。というより当選を疑わなかった。
2作目の最新作『華氏119』(日本公開は11月2日)は、自らの04年の作品『華氏911』をもじったタイトルだ。ニューヨークの世界貿易センタービルなどがテロの標的になった01年9月11日と同じくらい、トランプの大統領選勝利が判明した16年11月9日も政治的に大きな意味を持つ、と言いたいのだ。
もう1つの作品『アメリカン・カオス』(日本公開は未定)を監督したのは、ジェームズ・スターン。16年の大統領選でトランプが勝利した労働者階級の町、ミシガン州フリントでムーアが育ったのと対照的に、リベラルなシカゴの出身だ。スターンも早い段階で変化を感じ取り、フロリダ、ウェストバージニア、アリゾナ各州でトランプ支持者を取材した。
本誌ニーナ・バーリーが2人の映画監督に話を聞いた(取材は別々に行った)。
***
――ジム(ジェームズ)、トランプ勝利をなぜ予測できた?
<スターン>私の周囲の(リベラル派の)人たちは、トランプが共和党の候補者指名を獲得することを望んでいた。本選挙でトランプが勝つわけがないので、彼が共和党候補に選ばれれば民主党のヒラリー・クリントンの勝利が確実になると期待していたからだ。
私の考えは正反対で、クリントンがトランプを上回る数の大統領選挙人を獲得できないのではと心配していた。
誰も人々の声を聞いていないように思えた。低所得者層は知的水準が低いとあざ笑う人もいるが、私はそんなふうに片付ける気になれない。
――マイケル、今回の映画を作ろうと思ったのはいつ?
<ムーア>トランプ政権の時代に突入して1年たった今年1月だ。人々は、トランプの頭がイカレているのではないか、精神に破綻をきたしているのではないかと心配したり、大統領になっても大したことは実行できていないと言って安心したりしていた。
私の見方は違った。トランプはイカレているというより、邪悪な天才と言ったほうがいいのではないかと思い始めていた。トランプはパフォーマンスにたけていて、その場の空気をうまく読み、人々の、とりわけリベラル派の精神をかき乱す方法をよく心得ていた。
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