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夫と対等以上に稼ぐ妻の割合、日本は世界最低レベル

ニューズウィーク日本版 / 2018年11月21日 17時50分

<配偶者控除が足枷になって女性のパート就労が多い日本では、女性の稼ぎが不自然に抑制されている>

世紀の変わり目に大学を出た日本のロスジェネ世代も40代前半にさしかかっているが、一昔前の同年齢層と比べると稼ぎはだいぶ減っている。40代前半男性の所得中央値を計算すると、1992年には524万円だったものが、2017年では472万円だ(総務省『就業構造基本調査』)。この四半世紀で50万円以上減っている。

世代の要因だけではなく、日本で長らく続いてきた年功賃金が崩れていることもあるだろう。これから子どもの教育費等がかさんでくるが、それを男性の稼ぎだけで賄うのは難しい。夫婦の二馬力が求められる時代だ。

しかしながら、日本は女性が稼げない国だ。OECD(経済協力開発機構)の国際成人力調査「PIAAC 2012」では、対象の成人に年収をたずね、有業者全体の中の相対階層に割り振っている。ざっくりとした3つの階層の分布をとったグラフにすると、<図1>のようになる。日本とスウェーデンの比較図だ。



日本では、年収が有業者全体の下位25%未満の人が多くなっている。結婚・出産を経た30代後半以降は、加齢とともにその比重が増してくる。対してスウェーデンでは中間層が厚く、上位25%以上の層も日本より多い。

言うまでもなく、日本では家計補助のパート就業が多いためだ。妻の稼ぎが一定額を超えると、夫が配偶者控除を受けられなくなる制度もある。それを意識した働き方をしている女性も多く、25~54歳の非正規雇用女性(既婚)の46.7%が「就業調整」をしていると答えている(総務省『就業構造基本調査』2017年)。かき入れ時にパートの女性が出てこなくなる、という事業主の嘆きもよく聞く。

今年からこのラインが103万円から150万円に引き上げられたが、額の問題ではないだろう。配偶者控除は、配偶者の稼得能力が低い場合、主たる家計支持者の所得控除をしようという制度だが、女性に自らの稼得能力をおさえさせる方向に機能している。配偶者の稼ぎの額ではなく、稼ぎが少なくならざるを得ない事由(子育て、介護、病気等)を控除の要件にするべきではないだろうか。



配偶者控除というと、反射的に妻の所得が問題にされるが、夫の方が就業調整をしている夫婦もある。主な稼ぎ手は妻という夫婦だ。日本ではこういう夫婦は少数だが、海外はそうではない。<図2>は、夫と対等以上の収入がある妻の割合を高い順に並べたグラフだ。25~54歳の既婚女性の回答による。



日本はわずか5.6%だが、アメリカは34.8%、フランスは40.4%、インド・ポルトガル・スイスでは半数以上の妻が夫と対等以上に稼いでいる。日本の状況は普遍的ではなく、国際的にみるとアブノーマルな部類だ。ジェンダーフリー教育の一環として、こういうデータを生徒に見せてはどうだろうか。日頃目にしている光景が普遍的ではないことを、はっきりと理解することが重要だ。

労働力不足の時代にあって、配偶者控除のラインがああだこうだと言って、女性の稼得(就業)を抑え込んでいる場合ではない。個々の家庭で見ても、夫婦の二馬力でないとやっていけない。それが不可能でないことは、今回の国際比較のデータから見れば明らかだ。

<資料:OECD「PIAAC 2012」、
ISSP「Family and Changing Gender Roles IV - ISSP 2012」>


舞田敏彦(教育社会学者)

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