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【追悼父ブッシュ】アメリカの大統領がまだ「まとも」だった頃

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月3日 16時30分

<11月30日に死去したジョージ・H・W・ブッシュが、次の大統領になるビル・クリントンに残した置手紙が、感動を呼んでいる>

11月30日にジョージ・H・W・ブッシュ第41代米大統領(共和党)が死去した。94歳だった。訃報が流れた後、彼がホワイトハウスを去る前に民主党のビル・クリントン次期大統領(当時)に残した手紙が脚光を浴び、感動が広がっている。

「今や君の成功はこの国の成功だ。心から応援している」と、ブッシュは1993年に政権を引き継いだクリントンに宛てて書いた。ブッシュは1992年に再選を目指して大統領選に出馬したが、選挙人投票で200票以上の差をつけられて敗北し、12年間続いた共和党政権は終わりを告げた。

73年連れ添った最愛の妻バーバラ・ブッシュは今年4月に92歳で死去したばかりだった。

11月30日の夜、長男のジョージ・W・ブッシュ第43代米大統領が父の死を発表すると、哀悼のメッセージが続々と寄せられた。

クリントンは12月2日の朝に米紙ワシントン・ポストの電子版に追悼文を寄稿。その冒頭で、初めてホワイトハウスの執務室に入った際に残されていたブッシュの手紙を紹介しながら、こう書いた。

「彼との友情は私の人生で最も素晴らしい贈り物の一つだ。(中略)数カ月前、メイン州ケネバンクポートで最後に会った時も、彼は家族に囲まれ、バーバラがいないことを寂しがっていた。私は一瞬を惜しんで彼から学んだ」

退任後さらに深まった友情

クリントンは、インドネシア・スマトラ島沖地震(2004年)とハリケーン・カトリーナ(2005年)の復興支援で二人三脚で陣頭指揮を執ったのをきっかけに、2人の友情がさらに深まったエピソードも詳しく書いた。2人は2006年、カトリーナで甚大な被害を受けた米ルイジアナ州ニューオーリンズにあるテュレーン大学に依頼され、卒業式で共にスピーチを行ったこともある。

「われわれ全員が、ジョージ・H・W・ブッシュの長寿と素晴らしい生き様に感謝し、彼がいつもそうしていたように、最もアメリカらしい方法で前途を切り開くことによって彼の生涯を称えるべきだ」と、クリントンは締めくくった。

1993年にブッシュがクリントンに残した手紙の全文は以下の通り:



ビルへ

たった今(大統領)執務室に入ったとき、4年前と同じ畏怖と敬意を感じた。きっと君も同じように感じるだろう。

ホワイトハウスでの君の幸福を祈る。数人の歴代大統領が語ったような孤独を、私は一度も感じなかった。

非常に困難な時期はきっと来る。君がフェアでないと思うような批判にさらされ、さらなる困難が生じることもあるだろう。私はあまり良い助言者ではないが、批判する者たちのせいで希望を失ったり道を外れたりしないでほしい。

この手紙を読む時、君はわれわれの大統領になっている。ご繁栄を祈る。君の家族のご繁栄を祈る。今や君の成功はこの国の成功だ。心から応援している。

幸運を、
ジョージ


(翻訳:河原里香)


アレキサンダー・ハッスラー

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