ソーシャルメディアの友人関係に束縛される中高生
ニューズウィーク日本版 / 2018年12月5日 15時40分
<ケータイ・スマホのソーシャルを介した友人関係に縛られて苦しむ中高生が増えた今、彼らは友人が多いことを「よい」こととは思えなくなっている>
「学校では生涯にわたる友をつくれ」と言われる。成長に伴い、思考や考え方に影響を及ぼす「重要な他者」は、家族から仲間集団へとシフトする。青少年の健全な発達にとって友人関係は大きな意義を持っており、友人の数と生活満足度(幸福度)は比例すると言われる。
しかし、最近では状況が変わっている。友人の多さを「よい」とは考えない若者が増えている。博報堂生活総研の調査データにて、「友人は多ければ多いほどよい」と考える20代男女の比率の推移を見ると<図1>のようになる。
ご覧のように、男女とも右下がりの傾向にある。1998年では男性が59.4%、女性が64.2%だったが、20年弱を経た2016年では順に33.1%、23.8%でしかない。女性は半分以下にまで減っている。
SNSの普及により、時間や場所を問わない交友(束縛)に疲れているためだろう。「KY(空気読めない)」という言葉に象徴されるように、友人間での同調圧力が強まっていることも見逃せない。昔は自然な形でなされていた友人関係にも、いろいろと面倒な「スキル」が求められる時代だ。友人の多さをよしとしない人が増えているのはうなずける。
「コミュニケーション力」果ては「人間力」といった言葉で、人間の一挙手一投足までを「スキル化」するのはよくない。本来は多様であって然るべき事柄(身振り、話し方......)においてまで、劣等感が生じることにもなる。「**力」という言葉をやたらに用いるのは止めた方がいい。
ちなみに、ケータイ・スマホを持っているかどうかで中高生を分けると、所有群のほうが非所有群よりも友人の数は多い。しかし同時に、友人関係に心配や不満を抱いている者の率も所有群のほうが高い。その傾向は女子で顕著だ。<図2>を見てほしい。
女子では、所有群と非所有群の差が明瞭だ。ケータイ・スマホを持っている群のほうが、友人関係を憂いている者、それに不満を持っている子の割合が高い。所有群には高校生が多いからではないかと思われるかもしれないが、中学生と高校生で回答に大きな差はない。
これらの機器を介した交友といえば、おそらくLINEなどのSNSであろうが、すぐに返信しないといけない、話題をフォローしないといけないといった「LINE疲れ」という病が報告されている。とくに女子は友人から嫌われまいと四六時中、小さな画面に見入っている。ネットでの交友は時間的にも空間的にも際限がなく、解放される暇がない。上図のデータにはうなずかされる。
いつでもどこでも交信できる便利な小型機器も、使い方を誤ると自分を苦しめる凶器となる。自我が未熟な青少年に持たせる場合は、指導を徹底する必要があるだろう。彼らが使うケータイやスマホには、1日あたりのネット接続時間が制限されるような機能が組み込まれてもいいのではないか。
「即レスしなかった程度で失われるものを、友情とは呼ばない」。電車内で見かけたポスターだが、この言葉の意味はなかなかに重い。
<資料:博報堂生活総研『生活定点1996-2016』、
内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)>
舞田敏彦(教育社会学者)
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