英EU離脱どう動く? 次の政権は短命に終わる可能性が高い

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月27日 11時15分

<EU離脱の迷走を理由にメイ首相がついに辞意表明。しかし、誰が後任になっても、ブレグジットの十字架からは逃れられない>

5月24日、ブレグジット(イギリスのEU離脱)をめぐる混乱を理由にメイ首相が辞任の意向を明らかにした。この辞意表明は、与党・保守党を待つ未来の厳しさをあらためて浮き彫りにした。

幹部の間では、党の先行きへの悲観論も広がっている。支持者の間では、いつまでもブレグジットを実行できない政権への不満が強い。このままでは、離脱強硬派のナイジェル・ファラージュ率いるブレグジット党への支持者の流出が続くだろう。

「離脱強硬派が次の党首になることは避けられないが、メイが結んだものより有利な離脱協定案をEUとの間で結ぶことは誰にもできない」と、ある元閣僚は言う。「(離脱後も)EU加盟国としての恩恵を全て保持できるように協定案を交渉し直すことなど不可能だ......それを約束しておいて実行できなければ、私たちは有権者から厳しく罰せられるだろう」

少なくとも最近の1年間の世論調査を見る限り、イギリスの世論全体はEU残留に傾いているようだ。残留支持が離脱支持を一貫して上回っている。

しかし、残留派の政党はどこも有権者の心をつかめていない。欧州議会選前に行われた世論調査によれば、残留派の自由民主党、チェンジUK、緑の党、そしてスコットランドとウェールズの民族主義政党を合わせた支持率は30%に届かない。

最大野党の戦略も裏目に

方針がはっきりしないのは最大野党の労働党だ。支持者の大半は残留派だが、党指導部はこの問題で態度を鮮明にすることを避けている。

コービン党首は「おいしいところ取り」をしようとしていると、ブレア元首相の側近だった人物は指摘する。どっちつかずの態度を取ることで離脱派と残留派の両方から支持を得たいともくろんでいるらしい。

コービンと側近たちの作戦は裏目に出たようだ。労働党は、離脱派からも残留派からもそっぽを向かれ始めている。支持者の中でも離脱派はブレグジット党に、残留派は自由民主党に流出している。5月初めの統一地方選で自由民主党と緑の党が躍進したことからも明らかなように、ブレグジット問題は保守党だけでなく、労働党の未来にも暗い影を落としているのだ。

「労働党が次の総選挙で勝ちたければ、反ブレグジットの姿勢を強く打ち出すしかない」と、この人物は言う。「コービンは、党員と有権者の多数派の声に従うべきだ」



一方、保守党では党首選びが始まる。主な候補はいずれも離脱支持を表明しているが、最も強硬なのはジョンソン前外相。ジョンソンは、もっと強い姿勢でEUとの交渉に臨むべきだと主張し、「合意がまとまらなくても」期限どおり10月31日でEUを離脱するとも述べている。

【参考記事】メイの有力後継候補ジョンソンはヤバい?「合意なき離脱」率25%に

ただし、ジョンソン政権が発足しても短命に終わる可能性が高い。保守党は議会で単独過半数を確保できていない。北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)の閣外協力を得て辛うじて過半数を押さえているが、DUPは合意なき離脱に反対している。DUPの協力を失えば、次期首相は早々に解散総選挙に追い込まれかねない。

総選挙を行わなければ、与野党の議員のほとんどが(離脱強硬派にせよ残留派にせよ)現在の離脱協定案に反対する状況は変わらない。しかし、EUからこれ以上有利な条件を引き出すことも期待しづらい。次の首相は、メイと同じ手詰まり状態に陥る可能性が高い。

From Foreign Policy Magazine

<2019年6月4日号掲載>


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オーエン・マシューズ

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