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あいちトリエンナーレの展示中止騒動をめぐって

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月6日 12時0分

<あいちトリエンナーレ2019で、展覧会内企画展「表現の不自由展・その後」が開幕後わずか3日で展示中止になった。他国と同様、日本でも状況は悪化の一途を辿っている......>

2006年、石原慎太郎都知事(当時)がとんでもない無責任発言を行った。東京都現代美術館(MOT)で開催された『カルティエ現代美術財団コレクション展』のオープニングレセプションで「私は巨大ブランドは嫌いだ」「すばらしい展覧会だというから楽しみにして来たが、大したことはなかった」「ここにあるものはすべて下手物だ」「説明されなければわからないものはよい作品とはいえない」などと、祝辞とは思えない個人的意見を並べ立てたのだ。

数百人の招待客には、顧客を含む多数のカルティエ関係者がいたことは言うまでもない。直後に『フィガロ』『リベラシオン』などフランスのメディアが次々に発言を記事化し、国際的なアート雑誌『アートフォーラム』ウェブ版も『リベラシオン』の記事を引用する形で事件を報じた。同展は典型的な外部協賛企画であり、MOTの副館長(当時)によれば予算の分担は「我々は1000万円以下、カルティエさんが1億円以上」。つまり石原知事は、上得意に対して暴言を吐いたことになる。

「憲法21条で禁止された『検閲』と取られてもしかたがない」

あいちトリエンナーレ2019で、展覧会内企画展「表現の不自由展・その後」が開幕後わずか3日で展示中止になった際に、そんなことを思い出した。河村たかし名古屋市長が「(企画展に出展された「平和の少女像」は)相当多くのほとんどに近い日本国民が反日作品だと思っている」と述べて、大村秀章愛知県知事に展示の即刻中止を申し入れたからだ。松井一郎大阪市長(日本維新の会代表)が事前に河村市長に連絡し、展示が問題だと指摘したともいう。ポピュリズム右翼政治家による、これもとんでもない発言だ。

説明が前後したが、愛知県知事はトリエンナーレの実行委員会会長、名古屋市長は実行委員会会長代行を務めている。予算は県が約6億円、市が約2億円を負担し、文化庁からの補助金8000万円弱を見込んでいる。菅義偉官房長官は「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と恫喝したが、知事と津田大介芸術監督は、河村氏と菅氏の発言は展示の中止決定にまったく影響せず、主な理由は大量のいやがらせ電話とテロ予告とも受け取れるファクスだと述べた。

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