「世界一セクシーな男」が次にやりたいのは恋愛コメディー

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月17日 14時40分

<映画化もささやかれる人気ドラマ『刑事ジョン・ルーサー』に主演する、英国人俳優イドリス・エルバの意外な素顔>

イギリス人俳優イドリス・エルバ(46)は、南アフリカの英雄ネルソン・マンデラから『アベンジャーズ』シリーズの戦士まで、約30年間の俳優生活でさまざまな役を演じてきた。なかでも本人が気に入っているのは、ロンドン警視庁の主任警部ジョン・ルーサー役だ。

英BBC制作のドラマ『刑事ジョン・ルーサー』は、猟奇的な(しかしリアルな)殺人事件を解決する過程で、ルーサー自身も心の闇を抱えるようになるサスペンススリラー。10年に第1シーズンが放送されて大きな話題となって以来、米エミー賞の常連となるなど高く評価されている。

「ルーサーを演じることは大きなストレス解消になる」と、エルバは言う。「飛び抜けた才能を持つ一方で、(警察の)ルール違反もたくさんする。大声を出したり、何かを壊したりと、大量のエネルギーを発散する。だからルーサーの役になり切るのは本当にいい気分だ」

15年の第4シーズン放送後、しばらく制作がストップしていたが、イギリスでは19年元日から4夜連続で第5シーズンが放送された(日本では動画配信サイトHuluとケーブルテレビ局AXNで見られる)。映画化の企画も噂されるなど、波に乗るエルバに本誌ジャニス・ウィリアムズが話を聞いた。

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――ルーサーを演じる上で一番楽しいことは何か。

複雑なキャラクターであること。自分の演技力をフルに駆使しなくてはいけない。ルーサーは知的だが、直感的でもあり、肉体派でもある。大局的な思考ができて、「このやり方でいくぞ」と決めたらブルドーザーのように突き進む。自分の決断を疑うことがなく、実際それが正しいことが多い。とにかくダイナミックな人物なんだ。その一方で、バットマンのようにダークな側面を内に秘めている。

――第5シーズンの見どころは?

第4シーズンから間があいたから、まずは楽しみに待っていてくれたファンにお礼を言いたい。新シーズンもとてもダークなドラマになっているから、それを存分に楽しんで、しばし現実を忘れてほしい。映画も応援してほしいね。映画化の可能性があるんだ。

――あなたはこれまでいろいろな役を演じてきた。

「この役をイドリス・エルバがやるのか?」とみんなが驚くような役を演じるのが好きだ。自分の異なる側面を見せられるような役だね。いい奴が悪いことをしたり、悪い奴がいいことをしたりする複雑なキャラクターが好きだ。いつも同じような役は引き受けたくない。

――まだやったことがなくて、トライしてみたい役は?

純粋なロマンチック・コメディーをやってみたい。愛とロマンスといろいろな感情が押し寄せてくるような感動物語を探しているところだ。

――相手役の希望は?

特にない。重要なのはストーリーで、相手役に誰がいいかは、今すぐには思い付かない。

――ホラー映画もやったことがないのでは?

実は、大昔に端役で出演したことがある。でも誰も見たことがないような映画だから、その話はしないよ(笑)。



――最近は俳優だけでなく、脚本家や監督にも黒人が増えた。

時代を象徴していると思う。私はこの業界に30年近くいるが、その間にいろいろなことが変わってきた。今は演じる側だけでなく、製作陣にも黒人が増えている。女性も重要な役割を果たすようになった。昔は圧倒的に男性ばかりの業界だったが、それが変わってきたことは素晴らしいと思う。変わるべくして変わってきたことだ。

――あなたがDJだと知って多くの人が驚いた。今年のコーチェラ・フェス(アメリカの野外ロックフェスティバル)にも出演したとか。

実は、私のDJ歴は俳優歴と同じくらい長い。ただ、あまり言わなかっただけだ。最近は自分の音楽活動やDJ活動に自信がついてきて、誇りに思っている。昔は第2のキャリアとしてかなり真剣に取り組んでいたから、素人ではないと思う。

世界最高のラッパーも、そうなる前は自分の寝室で音楽を作っていた。世に出てくるまでみんな知らないだけでね。でも、音楽業界でコーチェラに出演するのはすごいことだから、今年出演できたことをとてもうれしく思っている。

――あなたの娘のイサン・エルバは、今年のゴールデングローブ賞授賞式のアンバサダー役(トロフィーなどを運ぶ役)を、心の病について意識向上を働き掛ける機会にしたとか。

娘をとても誇りに思っている。ゴールデングローブ賞の仕事が決まったとき、「奇麗なドレスを着て目立つチャンス」ではなく「何かを伝える機会にしたい」と言ったんだ。主催者もそれを快諾してくれた。

娘は心の病について世の中の関心を集めたいと思っていた。彼女は昔、学校でひどいいじめに遭ったことがあったが、それは相手の少年が心の病を抱えていたせいだと分かった。彼は薬物治療を受けていたが、その薬を飲んでいなかった。

彼は娘に罵詈雑言を浴びせ掛け、娘は本当につらい思いをした。でも、彼は自分をコントロールできない状態だった。娘はそれを知って、彼の悩みを聞いてあげる人が必要だと思った。そういう場所がないから、友達に暴言を吐くのだ、と。

それを聞いてとても感動した。娘がつらい経験を、ポジティブな運動に変えたことを本当に誇りに思う。しかもゴールデングローブという世界の注目を集める舞台を、そうした問題に対する意識向上に使おうというのだから、親としてこんなに誇らしいことはない。

<本誌2019年07月16日号掲載>


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ジャニス・ウィリアムズ

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