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未婚シングルマザーへの支援が少子化対策の鍵になる

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月4日 17時0分

<シングルマザーになる未婚女性が増加しているが、日本の公的支援は2人親世帯を前提にしているため行き届いていない>

子どもの貧困が社会問題化しているが、1人親世帯の現状は特にひどい。日本の1人親世帯の相対的貧困率は50%を超え、先進国の中で突出して高くなっている。様々な公的支援は、2人親の世帯を前提に制度が組み立てられているため、少数の1人親世帯には困難が凝縮する構造になっている。

ところで、1人親世帯といっても一様ではない。夫と離婚した母と子からなる母子世帯が大半だが、母子世帯の母親には、最初から結婚せずに1人で子を育てている人もいる。いわゆる未婚のシングルマザーだ。

基幹統計の『国勢調査』から、母子世帯の数が分かる。母親と未婚・未成年の子からなる世帯だ。母子世帯の母親のうち配偶関係が「未婚」の人は、1995年では2万4396人だったが、2015年では11万3562人となっている。この20年間で5倍近くに増えたことになる。母子世帯の母親のうち「未婚」が占める割合も4.6%から15.0%に上昇している。

都市部では、未婚の母の割合はもっと高い。<表1>は、47都道府県の数値を高い順に並べたものだ。上位10位と下位10位を示している。



未婚の母の割合は全国的に上がっている。10%を超える県は1995年では皆無だったが、2015年では大半の県がこのラインを越え、東京、沖縄、大阪では2割を超えている。東京では、母子世帯の母親の4人に1人が未婚の母ということになる。

なお都内の23区別の数値を計算すると、港区ではシングルマザーの中の未婚の割合が53.6%と半分を超える。稼得能力の高い女性が多い区だが、あえてこういうライフスタイルを選んでいるのかもしれない。



しかし、経済的に恵まれた女性はごく一部だ。未婚の母の年収は、夫と離別した母よりも低く、税法上は寡婦でないので寡婦控除も適用されない。寡婦控除のみなし適用が広がりつつあるが、「寡婦に未婚を加えると、結婚して出産するという伝統的家族観を覆しかねない」という政府関係者の言葉に、未婚の母を歓迎しない向きが表れている。

上記のデータから分かるように、今では未婚の母は少数派ではない。「伝統的家族観」が時代にそぐわなくなっていることを知るべきだ。実をいうと、「結婚はしなくていいが子どもは欲しい」と考えている若い女性は結構いる。結婚に対する考え方と出産願望をクロスすることで、その量を割り出せる。<図1>は、20代女性の集計結果をモザイク図で表したものだ。横幅で結婚観、縦幅で出産願望の回答比率を表現している。



日本の20代女性の半数が、結婚は「しなくていい」ないしは「しないほうがいい」と答えているが、そうやって結婚を否定する群の6割が「子どもは欲しい」と回答している。色付きのゾーンが「結婚はしなくていいが子どもは欲しい」という考えの人で、日本では20代女性全体の29.9%になる(スウェーデンでは59.9%)。

こうした女性が出産に踏み切れたら、出生数はかなり回復するだろう。若者の間では「結婚はオワコン」という見方も広まっている。「結婚して出産するという伝統的家族観」に固執していたら、少子化に歯止めはかかりそうにない。未婚の親、同性婚......どういうライフスタイルを選択しても子を育てられる社会の実現が望まれている。

<資料:総務省『国勢調査』、
    内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2018年)>








舞田敏彦(教育社会学者)

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