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世界の株式市場をにぎわす「逆イールド」は景気後退の予兆──とは限らない

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月11日 18時20分

<8月に米国債市場で「逆イールド」が発生、ダウが下落した。今後の景気後退のサインとも言われる「逆イールド」だが、それは正しいのか。株式市場にどんな影響を与えるのか>

なぜ逆イールドが注目されるのか?

2019年8月14日のアメリカ株式市場で、ダウ工業株30種平均が800ドル下落しました。きっかけは、アメリカの国債市場で長短金利の逆転現象、「逆イールド」が起こったことです。

この逆イールドは「景気後退の予兆」とされ、マーケット関係者は警戒しています。しかし、本当に逆イールドが起こると景気は後退するのでしょうか? また、日本市場にはどのような影響があるのか。逆イールドが与える影響を、過去の例をひきながら考えてみます。

■そもそも「逆イールド」とは

逆イールドとは、満期までの期間が長い債券の利回りが、短い債券の利回りよりも低くなることです。アメリカ国債では、長期金利の指標となる10年債国債の利回りと、2年物・3カ月の国債の利回りを比較するのが一般的です。

債券の利回り(金利)と償還期間との相関性を示したグラフを「イールドカーブ」といいます。利回り曲線ともいい、債券投資で重要視される指標の一つです。

通常、イールドカーブは右上がりの曲線(順イールド)になります。期間が長いほど価格変動などのリスクが高くなるので、投資家がリスクに見合った利回りを要求するからです。しかし、長期債の利回りが短期債の利回りを下回る場合があります。これが「逆イールド」です。



逆イールド、つまり長短金利の逆転が生じるのは、現在の景気が良くても将来は低迷する可能性がある、と考える投資家が多いからです。

短期債の利回りは、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が決める政策金利の影響を強く受けますが、長期債の利回りは投資家の将来への見通しによって決まります。将来の見通しに不安を持つ投資家が多くなると長期債に買いが集まり、その結果、長期金利が低下するのです。



■逆イールドとアメリカ景気の関係

逆イールドが、株式市場でここまで注目されていることには理由があります。

アメリカでは1988年以降に3度、10年債と2年債の逆イールドが起きているのですが、いずれもその1~2年後に景気後退しているのです。そのため、2019年8月の逆イールドも「景気後退のサインが点灯した」とみなす声が多くありました。

ここでいう景気後退とは、実質国内総生産(GDP)が連続してマイナスになるなど、経済活動が縮小・衰退する状態です。前回のアメリカの景気後退局面は、リーマンショックを含む2007年12月~2009年6月でした。その後は回復し、2019年7月には史上最長となる11年目の景気拡大期に入っていました。

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