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「10億ドルの鉄壁」が破られた、アメリカがハマスの奇襲成功から学ぶべきハイテクの欠陥

ニューズウィーク日本版 / 2023年12月11日 12時5分

アイアンドーム関連で言えば、迎撃ミサイルは主にアメリカ製で、米海兵隊は2000発を発注済みだ。

ミサイル発射台はイスラエル製で、アメリカは2基を保有している。いずれも近々、防衛力強化のためにイスラエルに送られる予定だ。両国が共同開発したさらに強力なハイテク防空システム「ダビデの投石器」も、米軍とイスラエルの双方で運用されている。

メルカバと同様、米軍のM1エイブラムズ戦車やその他の装甲車両もハイテク防護システムで守られているが、その一部はイスラエル軍と共通だ。

例えば飛来するミサイルなどを探知し、自動的に小型ミサイルを発射して爆破する「トロフィー」。飛来するミサイルのすぐ近くに「迎撃体」を発射して爆発させ、その衝撃波で破壊または軌道をそらす「アイアンフィスト」もそうだ。

イスラエルはさらに、戦車の装甲板の上に装着し、弾丸が当たると外側方向に爆発させて戦車内部を保護する「爆発反応装甲」用のタイルを米軍に納入している。

加えて国防総省は10億ドル以上の年間予算をAIにつぎ込んでいる。

その一部は人間の兵士の関与を減らす目的、つまり自律型の車両や兵器の開発・生産に使われる。既に自律型の対潜水艦無人艦や対戦車自動誘導ミサイルのテストは、かなり進んでいる。

ハマス程度の弱小集団がイスラエルのハイテク防御を突破できるなら、はるかに進んだ技術力を持つ潜在的な敵性国家が防御技術におけるアメリカの優位を脅かす可能性も考える必要がある。

「これらの国とその代理勢力のテロ組織は、ますます能力を高め、極めて高度な技術を手に入れようとしている」と、民主主義防衛財団のボーマンは言う。

中国とロシアは、今やサイバー戦争とAIのエキスパートだ。

独自のステルス爆撃機や、既存のミサイル防衛システムでは撃ち落とせない極超音速ミサイルを実戦配備している。

イランは世界有数の爆弾搭載ドローンの保有国であり、北朝鮮は射程距離1万キロ以上の核ミサイルを最大60発発射できる能力がある。

10月7日の惨劇から学べる最も重要な教訓は先端技術だけに頼りすぎることの危険性だと、イスラエル軍と密接な関係を持つ防衛シンクタンク「IDSF」のヨッシ・クーパーバッサー研究部長は強調する。

「遠くから状況をコントロールできるので、現場にいる必要はないと感じるようになったら、それは大失敗の始まりだ」

クーパーバッサーは陸軍情報部隊の元調査責任者。2度の戦争に従軍した経験から、先端技術の限界を痛感しているという。

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