もう取り返しがつかない?ロシアがウクライナ侵攻で犯した5つの失策
ニューズウィーク日本版 / 2024年2月27日 17時39分
「どれもモスクワと同じ運命をたどるか、黒海東部に逃げてそこにとどまるまで、われわれはロシア艦船を攻撃する」と、ウクライナの元国防相で、現在は国防省顧問を務めるアンドリー・ザゴロドニュクは昨年9月本誌に語った。
■3)善意のしるし
最前線で停滞している現在の戦況は、流動的で機械化された戦闘が数週間にわたって繰り広げられ、領土が大きく変動した2022年の戦闘とは大違いだ。4月にロシアがキーウから撤退した後、両陣営は戦闘を再開し、ウクライナが東部ハルキウ地方と南部ヘルソン地方で大きな勝利を収めた。
ウクライナが南部からヘルソンに攻め込み、最終的にはドニプロ川の川岸まで攻勢をかけることは、以前から予告されていた。その漸進的な攻勢は8月に始まった。
北東部ではウクライナがハルキウの東で奇襲攻撃を仕掛け、比較的薄いロシアの防衛線を突破して650平方キロ以上の領土を解放した。ウクライナの攻撃隊は、その進撃の速さゆえに、自軍の補給線を追い越すことさえあった。
これは南部での成功につながり、ウクライナ軍は11月にヘルソンに到達し、市をロシアの支配から解放した。
ロシア政府によれば、4月のキーウ、9月のハルキウ、11月のヘルソンと、ロシア軍の敗北と撤退はすべてロシア側の「善意のしるし」だった。6月の黒海の要衝ズメイヌイ島(スネーク島)の放棄もそのひとつだったという。
■4)「プーチンの料理人」
ロシアのウクライナ侵攻は、ロシア政府内のパワーバランスをも動かし、権力を振るう新たなルートをプーチンの側近たちにもたらした(それを使いこなすだけの冷酷さとリソースがあればの話だが)。
この2年間のモスクワにおける泥沼の心理戦から生まれた物語の中でも最も衝撃的だったのが、エフゲニー・プリゴジンの台頭だった。彼はケータリング業で財をなしたオリガルヒ(新興財閥)で、「プーチンの料理長」というあだ名で呼ばれていた。
民間軍事会社ワグネルを率いていたプリゴジンは、軍閥の長といった存在になるとともに、戦況に大きな影響力を及ぼす立場となった。ワグネルは2022~2023年にかけて東部ドネツク州での激しい戦闘を主導し、2023年5月にはソレダールやバフムトを攻め落とし勝者となった。
セルゲイ・ショイグ国防相やバレリー・ゲラシモフ参謀総長との激しい権力闘争を経て、プリゴジンは現実主義者で民衆の味方というイメージを作り上げることができた。そして、主戦論者ナショナリストや、世論調査によれば、多くのロシア人の支持を得るに至った。
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