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「斜めに入っていく」のがコツ...なぜ、富川悠太は相手の心を開かせる? 報ステ、トヨタで培った関係構築力

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月30日 15時32分

そうしたタイミングでいただいたのが、今回の執筆依頼。私自身が学んできた「伝える力」を届けるタイミングだと思い、一歩を踏み出そうと決めました。

なぜ、富川さんは「上がり込みの達人」と呼ばれるのか?

──富川さんが「相手に寄り添うこと」を大事にしているのが著書からも伝わってきました。

「相手に寄り添う、相手の役に立つことを探す」のは、人間関係で普通のことなんですよ。特に災害や事件の現場だと、困っている人の役に立ちたい一心で自分にできることを探すようになります。被災地なら、たとえば瓦礫の片づけを一緒にしていると、相手が自然にお話をしてくれるんです。

「何か私にできることはないですか」というスタンスでいる。すると、「とりあえず家に上がりなさい」と誘われて、一緒にお茶を飲みながら話す機会が増えていくんです。

こうした「斜めに入っていく」スタイルのほうが、質問して答えてもらおうとする「直角」スタイルより、リアルな話が聞けます。やがて「富川さんの取材なら答えてもいい」という方が増えていき、撮影スタッフから「上がり込みの達人」と呼ばれるようになりました。

──特に印象に残っているエピソードはありますか。

2016年に熊本地震の際に出会った八重子さんのことです。民家の被害の様子を取材していたら、避難所にいたはずの八重子さんという方が自宅に戻っていました。「お困りのことはないですか」と聞くと、入れ歯がなくて困っているというのです。家は物が散乱して足の踏み場もない状態。僕も一緒になって入れ歯を探したところ、無事発見することができた。水道が止まっていたのでペットボトルの水で汚れを洗ってからお渡しすると、八重子さんは涙を流して喜んでくれたんです。「あなたは命の恩人です」と。僕も嬉しかったですね。

八重子さんはその後お亡くなりになりましたが、彼女のご家族とは今もつながっていて、先日も連絡をとって、ご家族のお宅にお邪魔してきたばかりです。

──取材の一度きりの関係で終わらずに、その後もご本人やご家族と関係性を育てられているってすごいことだと思いました。

取材先で出会った方とは自然と仲良くなりますし、僕のことを家族のように思ってくださる方が全国にいる。だから、その人たちに会いたくて会いに行くという感じです。それで迷惑がられたことはありません。人って「自分の役に立とうと真剣に考えてくれる人」を無下にはしないと思うんですよね。

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