「斜めに入っていく」のがコツ...なぜ、富川悠太は相手の心を開かせる? 報ステ、トヨタで培った関係構築力
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月30日 15時32分
配信にあたり、社内から「(従業員とその子どもが職場にいるシーンを流したら)視聴者が子どもに気をとられてミスにつながると思うのでは?」と不安視する声もありました。もちろん、「トヨタを守りたい」からとそういう意見が出るのは理解できます。ただ、だからといって伝えるものを削っていくと、伝わるものも伝わらなくなってしまう。そこで、色々な部署の力を借りて、取り組みの良さが最大限伝わる形に工夫を重ねていきました。実際配信すると、社内外から良い反響を得られました。
トヨタの現場には、世の中に伝えきれていない良い面がある。それをありのままに伝えれば、社内外で幸せになる人が増えるし、トヨタの開発も加速するはず。そのように確信しているので、トヨタのリアルを見つけ出し、伝えていくことが僕の役割だと捉えています。トヨタの社員でありながらも、これまで通りの感覚を大切にして、「当たり前」と思われていることでも、伝える価値のあるものがたくさんあるので、そこに目を向け続けたいですね。
それは、報道キャスター時代に培ってきた「俯瞰的に見る」ことにも通じます。現場から中継するときは、カメラの動きを見ながら、いまの自分を含めた現場が視聴者にどう見えているのかをイメージしていました。
──「相手の視点に立つ」と「俯瞰的に見る」の両立に活きるトレーニング方法はありますか。
おすすめは、自分が話している様子を動画撮影して、自分で見ることです。僕が恵まれていたのは、自分が出演した映像を録画してその日に確認するのを習慣にできたこと。自分を見ると、「こう説明するとよかったな」などと気づきがあるものです。
たとえばプレゼンをする予定なら、本番に近い状態で話している動画を撮って、見てみてください。自分が話す姿を自分で見るのは俯瞰するトレーニングになります。反省しすぎず、視聴者として気楽に、前向きに見るといいですよ。
いかに一人ひとりの力を引き出して最大化するか
──富川さんは、「相手に寄り添い、みんなのために動く」という利他的な精神に徹しているように思います。こうしたあり方や価値観に影響を与えた出来事はありましたか。差し支えない範囲でお聞きできれば幸いです。
自分一人の力は微々たるものだと常々感じてきたことです。番組の収録一つとっても、ディレクターや取材する人、ADなど全員が力を合わせてはじめてできることです。報道ステーションの場合は100人以上が関わっていますし、トヨタイムズは、出演者、ディレクター、動画編集者、CGデザイナーなどの協力のもとで成り立っています。だからこそ、「いかに一人ひとりの力を引き出して最大化するか」という問いと向き合ってきました。
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