電車の遅延が減る? AIカメラで豪雨対策...JR武蔵野線の新システム
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月4日 10時0分
分電盤の状況を監視するAIカメラ
こちらは排水槽の状況を監視
JR東日本 八王子支社 八王子電力設備技術センターの福原安志氏は次のように説明する。
「これまでは現場から異常が通報されても、満水なのか故障なのか内容が特定できず、技術部門のスタッフが現地で確認する必要がありました。しかし、今回のシステム導入により、遠隔地からでも異常の原因をある程度把握でき、仮設ポンプや修理の準備を整えて現場に向かうことが可能になりました」
融雪器の監視や動物の検知にも対応へ
システム導入以降、異常検知の事例はまだないが、もし発生した場合には、従来約3時間かかっていた修理時間を約1時間短縮できる見込みだ。また、従来は異常発生後1週間現地で経過観察を続けていたが、遠隔監視の導入により検査の省力化と品質向上、さらには働き方改革にもつながると期待されている。
さらに、システムでは「α(アルファ)」と呼ばれる統合管理ソフトを活用し、電力使用量や電流、電圧といった計測データを可視化。平常時と異常時の比較など詳細に情報確認でき、予防監視や予防保全への活用が可能となる。
加えて、クラウドサービスを活用した実証実験も進行中だ。パナソニックEW社 ソリューション事業本部エンジニアリング推進センター 村田康史氏は「クラウド化により、データ収集拠点が増えても一元管理が可能となり、運用の効率化が図れます」と、将来の展望を語る。
パナソニックEW社 ソリューション事業本部エンジニアリング推進センター 村田康史氏(左)とJR東日本 八王子支社 八王子電力設備技術センターの福原安志氏
パナソニックEW社は、2025年にはこのシステムをパッケージ化し、融雪器など他設備の監視にも展開する計画だ。さらにAI機能を拡張し、動物の検知にも対応できる仕組みを目指している。2026年には事業化を見据えているという。
豪雨による水災害の増加が予測される中、鉄道インフラの安全確保は喫緊の課題である。こうした自然災害を完全に防ぐことは不可能だが、AI技術を活用することで被害を最小限に抑え、迅速な復旧を実現する。AIは我々の生活の安全性の向上に貢献するツールとして、今後ますますその存在感を高めていくだろう。
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