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世界一人気のコーヒー豆、アラビカ種を温暖化から救え

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月4日 13時34分

気候変動の影響を既に感じていると語るケニアのコーヒー農家、ンギブイニ JONATHAN W. ROSEN

ジョナサン・ローゼン(ジャーナリスト)
<気候変動の影響により大幅な収穫減が予測されるなかで、世界の主要産地が協力して品種改良の取り組みが始まった>

デービッド・ンギブイニ(32)は、ケニア中央部のハイランド地区で親から受け継いだコーヒー農園を営んでいる。この一帯は標高が高く、涼しい気候と火山灰の堆積した肥沃な土壌に恵まれていて、世界有数のコーヒー産地として知られてきた。

雨期が終わった今年5月、約4万5000平方メートルの農園では、6000本ほどのコーヒーの木にたくさんの美しい実がなっていた。品種はほぼ全てがアラビカ種。最も普及しているコーヒーの品種だ。

今シーズンの収穫こそ絶好調だが、コーヒー生産を取り巻く状況は厳しい。ケニアで19世紀から栽培されてきたアラビカ種は、気候変動の影響に極めて弱いのだ。チューリヒ応用化学大学(スイス)の研究チームが2022年に発表した論文によると、アラビカ種の栽培に最適な土地の面積は、2050年までに現在の半分以下に減るという。

ンギブイニは既に影響を実感している。気温の上昇により、コーヒー豆の成長が妨げられたり、木が病気に弱くなったりしているのだ。しかも、降雨パターンが不規則になり、コーヒー豆の品質と収穫高も安定しなくなった。

ンギブイニは20~21年の農期に、近隣の農家から集めたものと合わせて過去最高の200トン以上のコーヒー豆を加工した。ところが、翌年にはその量が80%近く減ってしまった。「大々的な害虫被害があったわけではない」と、ンギブイニは言う。「気候面の要因だけが原因だ」

コーヒー豆の生産を守るために品種改良を目指す GERALD ANDERSONーANADOLU AGENCYーGETTY IMAGES VIA GRIST

収穫高に関する不安が高まる一方で、需要は増すばかりだ。一部の予測によると、世界のコーヒー消費量は現在1日当たり23億杯だが、今世紀半ばまでには2倍に跳ね上がる可能性がある。

コーヒー業界は、供給不足に対処しようと躍起になっている。アラビカ種以外の品種を栽培したり、ヒヨコ豆やデーツ(ナツメヤシ)の種などにカフェインを注入して代替コーヒーをつくったりする試みも行われている。

しかし、昔ながらのコーヒーを愛する人やンギブイニのようなコーヒー農家にとって最善の対応策は、アラビカ種の気候変動への適応力を高めて収穫高を増やすことだろう。非営利団体「ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)」が主導するプロジェクト「イノベア」は、この目標に向けてアラビカ種の品種改良を促進しようとしている。

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