突然姿を消した荒川ホームレスの男性 何が起こったのか、残された「兄弟」は...
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月4日 19時20分
いずれにしても、斉藤さんがその後戻ってきて、桂さんにきちんと説明をし、ついでに荷物を片付けたりすれば、丸く収まるはずだ。
そうすれば、私たちは彼のために送別会を開くかもしれない。しかし、そんな思いに反して、斉藤さんは急に出て行って以来、一度も姿を見せていない。桂さんだけでなく、斉藤さんのことを気にかけている友人たちにとって、どれほどやるせないことか。
桂さんと斉藤さんは兄弟のように親しかった
器用で細やかな桂さんと、マイペースな斉藤さん
桂さんと斉藤さんは、私が最もよく知っているホームレスの2人だと思っている。
2人は同い年で、斉藤さんは桂さんより数カ月年上だ。ともに70歳になったという。
しかし、性格は大きく違う。
桂さんは器用で、生活の上では斉藤さんより有能で洗練されている。彼は見識が広く、器用だし、何をするにも細やかだ。しかも趣味が幅広く、将棋がとても上手だ。将棋を指せば、斉藤さんはずっと敗者だった。
斉藤さんは穏やかな性格をしており、マイペースで、少しだらしないところがある。自転車で缶を拾ってお金を得ているが、一番の趣味は競馬で、勝つことより負けることのほうが多い。しかし、斉藤さんはなかなかの囲碁の才能がある。その点、桂さんは脱帽しなければならない。
若い頃は会社員だった...非行少年グループに属していた
私はそれぞれの人生経験を聞いたことがある。
斉藤さんは岩手県の海辺の農村で生まれ、幼い頃から水泳が好きで、海に潜って魚を捕まえたりエビを触ったりしていた。
ご両親は早年に亡くなり、妻も20年前に病気で亡くなったという。斉藤さんの家族は、兄が一人だけ健在だが、長い間連絡を取っていなかったので、今はどうなっているのか分からない。斉藤さんは若い頃会社員をしていたが、業種はいろいろと変えてきた。日本は一度も出たことがないという。
桂さんの少年時代は、いたずらっ子で、かなり波乱に満ちていた。子供の頃は水泳も好きで、学生時代は選手として水泳の大会にも出場したことがある。
彼はバイクに乗るのも好きで、スピード違反で警察に追われることが多かった。飲み物が飲みたくなったら、何人かの不良の友達と商店の倉庫に侵入して、飲み物がたくさん入った箱を持っていったという。バイクはガソリンがなくなったら、駐車している他人の車を探して、そのタンクから勝手にガソリンを抜く。当然、借用書などは書かない。他の非行少年グループとの喧嘩も日常茶飯事だった
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