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突然姿を消した荒川ホームレスの男性 何が起こったのか、残された「兄弟」は...

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月4日 19時20分

一度、池袋での集団の喧嘩で、相手が拳銃を取り出し、桂さんの仲間の一人が足を負傷させられたことがあったと話す。その時、彼は怖くて、素早く逃げたという。

成人してからは、バーテンダーをしたり、会社の営業マンをしたり、ハワイ、オーストラリアを旅行したりしたことがあるという。

桂さんと斉藤さんは、性格も趣味も人生経験もまったく異なるが、互いに親密な関係を築き、まるで「手足」のように(兄弟姉妹や親しい仲を指す中国語)兄弟のように助け合ってきた。お互いの欠点をからかい合うのも日常だった。

桂さんは斉藤さんのことを「競馬場に金を捨てに行くだけで、ほとんど勝って帰ってこない』と冗談交じりに批判し、斉藤さんは桂さんを「女の子のところばかりに行って遊んでいるけど、ただしゃべって帰ってくるだけ」と茶化す。これは、桂さんが公園などで若い女性に会うと話しかけて、会話を楽しむことを皮肉っているのだ。

そんな2人だが、私が2人の関係に感銘を受けて書いた本連載のシリーズ第13話「ホームレスは助け合うのか、それとも冷淡で孤独なのか...不思議な『兄弟分』の物語」に描写したように、全く異なる背景を持ちながらも支え合う姿は感動的だった。

それが、斉藤さんの突然の失踪で状況が一変した。

斉藤さんが家を出た後、何の連絡もない状態が続き、記事の内容がまるで現実と合わなくなったことに、私はどのように自分の顔を潰せばいいのか分からないほどだった。確かに「手足情深」(中国語で、手と足のように離れられない、兄弟や親友の間にある深い情愛を表す言葉)ではあるが、「いくら情が深くとも、いつか別れの日が訪れる」のかもしれない。

1年後、急に戻ってきた斉藤さん。そして桂さんが...

それから、1年が経った。

斉藤さんがある日、突然、荒川河川敷に姿を現した。

桂さんと再会しても、斉藤さんは何も反省の素振りを見せなかったそうだが、桂さんは何も文句を言わなかった。互いに淡々と会話を交わして、何事もなかったかのように穏やかであった。

その時期の斉藤さんは、福祉施設から独身アパートに引っ越していて、足の病気も回復しつつある頃だった。

2人はしばらく話をして、別れるときに桂さんは斉藤さんに柔らかいスリッパを贈った。靴を履くと足が痛くなると言ったから、桂さんが自分のスリッパを斉藤さんに上げたのだ。

だがその年の初夏、斉藤さんはまた荒川河川敷にやって来た。桂さんに、こちらに戻りたいという話を持ち出したという。

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