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ニコニコ生放送「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」(2015年7月31日放送)全文書き起こし(3)

ニコニコニュース / 2015年8月23日 12時0分

ニコニコニュース

 「ニコニコドキュメンタリー」の第1弾、第三者の視点から日韓問題を描いた「タイズ・ザット・バインド~ジャパン・アンド・コリア~」をテーマにした1回目の討論番組、「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」が2015年7月31日(金)22時から、ニコニコ生放送で配信されました。

 本ニュースでは、同番組の内容を以下の通り全文書き起こして紹介します。

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※出演者=話者表記
角谷浩一氏(MC/ジャーナリスト)=角谷
松嶋初音氏(コネクター)=松嶋
青木理氏(ジャーナリスト)=青木
潮匡人氏(評論家・軍事ジャーナリスト)=潮
木村幹氏(神戸大学大学院国際協力研究科教授)=木村
津田大介氏(ジャーナリスト)=津田
辺真一氏(コリア・レポート編集長)=辺
平沢勝栄氏(衆議院議員・日韓議員連盟幹事)=平沢
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平沢:慰安婦は、軍があれば世界中どこでもあったとは思いますよ。だけど、いいとは言いませんけど、それは世界中どこでもあった、日本もあった。だから、これについてはお詫びしなきゃなんない。その中に朝鮮の女性もいた。それは大変申し訳ないということで謝んなきゃなんない。しかし、私たちが問題にしているのは、それはお詫びしますけれども、しかし、繰り返しますけれども、アブダクトっていうか、強制的に拉致したということはなかったと。ただ、だまされたとか、そういうあれはあったと思いますけど。それで集めたのも民間の業者だったと。

辺:軍人による強制的な連行、拉致っていう、そういう事実はないというのが政府の公式な。

青木:辺さん、正確に言ったほうがいいですよ。要するに、証拠がないんです。

辺:「証拠がない」ですね。

青木:拉致がなかったかどうかっていう証拠がないんです。

平沢:証拠はないんですけれども。ただ、これを最初に言ったのは、朝日新聞が報道したのは、吉田清治という人が結局済州島でそういう女性をあれしたと。それでその後に済州島で何百人っていう女性を強制的に銃剣でトラックの荷台に乗せて運んだっていうことを言ったから、それでそれが事実かどうかっていうことで、例えばいろんな学者の方が済州島に行って、マスコミも含めて済州島で調べたわけですよ。そして、あの小さな島で誰に聞いたってそんな事実があったって人は1人もいなかったということは、これは100%かどうかは別にして私はなかったっていうことが言えるんだと思いますよ、その事実は。

木村:いいですか。番組のほうに少し戻ると、まず今回のドキュメンタリーでわかることっていうのは、ある意味イギリスの見方と、もう一つは実は韓国の人の見方にも結構ぶれがある、違いがあるってことですよね。平沢先生がおっしゃられたソウル大学のパク・チョルヒさんなんていうのは、逆に韓国の文脈から言うと、こんなことを言って大丈夫なんかって心配するぐらいのコメントもしているわけですね。でも、彼は実際問題、前政権のときの日本政治のブレーンで、非常に影響力を持っている人物だったりするわけです。もっと言えば、これも先ほど平沢さんがおっしゃった、慰安婦像を建てている人たちなんかは、特に海外で、韓国以外で活動している人たちはアブダクティッドって言葉も全く違和感なく使ってしまっていると。だけど、実際の慰安婦のおばあさんたちは必ずしもその運動団体と同じことを言っているわけではない。さらには、韓国のいろんな、今回のドキュメンタリーには入っていなかったんですけれども、韓国のいろんな、例えば博物館、記念館、これはもう運動団体がやっている記念館でも、実は最近ではあまり「軍人によって連れていかれた」ってことは書かないようになっていたりするんですね。そういったのは、やはり彼らも実証するのが難しいというふうに思っているからなんですね。そういったブレの部分っていうのを、意図的に取り込んだとは実は思わないんですけども、結果的に入っていたっていうのは少し見てもいいのかなっていう気がします。もっと言えば、先ほどから日本側のほうで見ているとやっぱ違和感がどうしても出がちなのは、日本側の議論の多様性っていうのはあまり描かれていなかったと思うんですよね。何となく現政権は右寄りで歴史認識に関してコントロールしようとしているという話になってくると、日本の描き方が非常に、慰安婦問題に関しても、他のものに関しても一面的で、韓国側のほうが、不勉強な部分も正直あったんだろうと僕は思うんですけど、結果として非常にブレがあって多層的なもの。そういう意味ではちょっとおもしろいっていうとこもやっぱりあるんですね。もう一つ、しっかりと言わないないといけない問題っていうのは、僕も歴史認識問題でやっていたり、慰安婦問題に関して行きがかり上調査をしたりすることがあるんですけど、津田さんは「検証は難しいですよ」ってことを言われたんですが、実はそんなこともあまりないんです。ただし、検証をやれば解決するかっていうと、それはまた別の問題で、一人一人の事情がわかったからどうなんだっていう部分もやっぱりあるんですね。ドキュメンタリーで何となくうまく入らなかって重要なポイントっていうのは、これも皆さんはよくご存じのとおり、実は慰安婦の実情がどうだったかっていう問題以上に、その賠償問題は終わっているのか、終わっていないのかっていう問題が実は一番問題重要で。これは実は日韓基本条約に、実はこの番組の一番初めに出てくるのは日韓基本条約の締結シーンなんですけど、そこにかかわる問題なんですよね。そういう意味では、どうしてもセンセーショナルな証言であるとか、博物館の表記なんかへ行っちゃうんですけど、もう一ついろんな視点があってもよかったし、逆に言えば、こうやって熱く議論をしてしまう、細かい事実に関して熱く議論してしまうことによって、実は一番重要な問題、そもそも戦後処理ってどうなったんだろうと。もっと言えば、それはどうやって、結局戦後処理を巡る理解が割れていることが実は一番問題で、そこが日韓の歴史認識の一番の中心なんですね。そこの問題を我々も見落としがちだし、でもってイギリス人から見ていてもあんま見えていないんだなっていうことですね。そういう意味では、やっぱりミクロなところに入っちゃうんだっていうのは、入ってしまっていいのかっていう問題も含めて、一つおもしろい問題提起になるかなというふうに思いました。

角谷:確かにこの問題は幅の広さと、それから縦の構造が非常に複雑だってことはわかります。

木村:ですし、個々のおばあさんの証言なんかでも、僕もいろんなことを調べていますから、「それはないでしょう」って話がやっぱたくさん入っているんですね。ただ、そういった、変な話、もう70年以上も前の証言で、運動団体ともいろんな関係があって、しゃべっているうちに本人たちもひょっとしたら本物なのかどうなのかもわかんなくなっている可能性だってあるんですね。そういった証言や、ひょっとしたらなくなってしまったかもしれない証拠って、もう完全にifの話ですよね。というのは、あんまりな議論なんですよね。

辺:ちょっと待ってください。今「それはないでしょう」っていうのはあくまで主観であって、そこをもう少し客観的に。だって、慰安婦っていう人は1人じゃないですね。少なくとも複数、もしかすると3桁、4桁いたかもしれないですね。私は正確な数はわかりません、今もって明らかにされておりませんので。ですけども、慰安婦についてはっきりしていることは、多様な手段、あるいは方法によって連れてこられたっていうことは間違いない。例えば、「日本で就職させてあげます」とだまされて連れてこられたケースですね。あるいは、「日本に行けばいい仕事がある」と、業者の口車に乗せられて連れてこられたケースとか、身売りされた女性もいるでしょう。あるいは、自ら進んで慰安婦になったケース、さまざまなケースがあると思うんですね。問題は「就職させてやる」とか、「日本に行けば金になる」と言って、そういうような甘い言葉で連れ出す、これも強制連行なんですよ。すなわち、拉致に該当するんです。というのは、自らの、明らかに本人の意思に反した行為であるからなんです。これは広い意味でですね。まして、業者によって彼女たちが連れてこられたということであれば、この業者が仮に軍の請負業者、あるいは軍によって認定、指定された業者ならば、明らかに軍の関与、すなわち国家の関与ということになってくるわけなんですね。したがって、国家が責任を負うのは当然だというのが韓国人側の、いわば考え方なんですよ。ですから、今もって平沢先生がおっしゃるように、軍人が首に縄をつけて引っ張ってきたとか、あるいは銃剣を突きつけて無理矢理に引っ張ってきたっていう、そういうような事実あるいは証拠がないという前提で、それでもこの慰安婦の問題というのは、仮に請負業者が、軍がいわば認定あるいは選定し、かつ慰安婦の管理されている場所を軍が管轄、管理していれば、これはもう直接的に国家の関与っていうことになってくるんじゃないですか。

平沢:辺さんの言われているのがちょっと違うのは、一番最初は、この強制連行っていう言葉は強制的に銃剣で脅して連れてきたからだっていう、これを強制連行とずっと言ってきたんですよ。ところが、どうも風向きが変わってきてから、今のような話が出てきたんですよ。最初から言っていたんなら、まだ100歩譲ってわからんでもないけど、最初は吉田清治さんって人が、要するに「おれは銃剣でさらった」と。「おれはそれを申し訳ないと思う」というようなことを言ったもんだから、それにみんな、朝日新聞ものったわけですよ。だから、最初は強制連行っていうのは銃剣で脅して連れてきたっていうのが強制連行っていうことでずっと言ってきていたんですよ。ところが、どうもそれが事実と違うなということになってきてから今みたいな話を結局言い出したわけですよ。ですから、確かにそういう可能性はあるとして、これを強制連行と言うのかどうかっていうのは、私はいろんな見方があると思いますよ。例えば、軍が業者に頼んだと。そうしたら、その業者がだまして連れていったら、これは全部強制連行だと、アブダクトにあたると言われましたけど、北朝鮮が連れていったアブダクトっていうのは、あれはまさに猿ぐつわをはめて強制的に連れていったんですよ。これとは違うんじゃないですか。

潮:ちょっとよろしいですか、その点。

辺:ちょっと待ってください。そうすると、平沢先生、例えば、ならば有本恵子さんの場合は猿ぐつわで北朝鮮が引っ張っていったんじゃないですね。あれは俗に言うところの、よど号の連中らが関与していると。よど号の連中らが仮に北朝鮮の特殊機関の請負業者っていう形で彼らがヨーロッパに出て、それで言葉巧みに誘って引っ張ってきた。これもはっきり言って、明らかに拉致なんですよ。

平沢:有本さんの場合は、結局問題は連れていったいきさつもあるけども、行って出られないってとこが一番大きな問題。行ったでしょう。

辺:だから、慰安婦も全くそうなんですよ。慰安婦もそのまま完全にすべて外出。

平沢:出られなかったんですか?

辺:慰安婦もそうですよ。

平沢:いや。

木村:辺さん、そこは無理がある。それは無理がある。

平沢:それは違いますよ。それは事実と違う。

辺:私は全部って言いませんけど、慰安婦もそうですよ。

平沢:いや、慰安婦が出られなかった、外出できなかったっていうのは、そこは完全にあれしていたっていうのは、それはどうですかね。それは事実と違うんじゃないですか。

木村:すいません。これは僕が例の「慰安婦の管理係の日記」っていうのをやったから、断片的な話でしかないんですけど、ちょっとだけ補足しておくと、慰安婦の人たちの状況は個人も違うだけじゃなくって、時期によっても違うんです。わかりやすく言っちゃうと、1943年ぐらいまでで交通機関が生きていて、朝鮮半島その他から行くから、新しい慰安婦の供給があったときには、これは帰れていました。これは間違いないです。帰れていましたし、お金も持って帰っているんですね。だけど、44年、あるいはその後半になってくると、そもそも本土や朝鮮半島との船のパイプが切れているし、新しい慰安婦の供給がないので帰れなくなったって話なんです。ですから、いずれにしても、先ほど津田さんが「我々専門家の部分のところでは情報が積み上がっているけど、一般の人のところには伝わっていない」っていう話も、やっぱり政治やジャーナリストの話もそうなんですけども、ちょっとやっぱ議論が非常に単純化してしまっていて、ステレオタイプな議論になっているんですね。あともう一つ、どこからどこまでが強制連行なのかっていうのは、一種の解釈論になってしまって、僕は決着がつかない話なんだと思うんですよ。繰り返しになるんですけど、やっぱ僕は大事なのは、変な話、「慰安婦の方に賠償すべきだ」っていう方ももちろんおられるわけですけども、そういったことを行うことに関しても、やっぱり一番大事なのは法律問題なんですね。ですから、あまり抽象的な、神学論争的な解釈をしても意味がないし、あるいはステレオタイプな議論をしても、結局本当は韓国側も日本側も両方とも僕らに言わせたら足元をすくわれるっていうか、雑な議論をしているんだと思うんですよ。ですから、先ほども申し上げたことの繰り返しになってしまいますけど、このドキュメンタリーにもたくさん矛盾している部分があるんですね。その中から、正しいぞとか、我々はどこを通っていって、日韓の個々の問題なら個々の問題、日韓双方の友好関係なら友好関係、その必要性も含めてどういうふうに考えていくのかって考え直す、そういう意味ではステレオタイプな見方っていうのを日本や韓国でドキュメンタリーをつくるとやりがちなんだけど、少なくとも日本や韓国のステレオタイプのドキュメンタリーではなかった。韓国人が見ても、すごくこれは不満があるドキュメンタリーなんだと思うんですね。そういう意味ではおもしろかったかなと。もっと言えば、そういうことを考えさせるきっかけにはなったのかなっていう気がします。もっと言えば、慰安婦が、何が慰安婦なのかとか、強制連行なのかっていうこと自身も実はこのドキュメンタリーには出てこなくて「関心がないんだな」っていうこともわかりますよね。

潮:ちょっとよろしいですか、今の点。だまされて連れていかれた慰安婦がいたということは、日本国政府は、例えば河野談話などを通じて既に繰り返し認めてきている事実ですので、そこは。

角谷:その河野談話の発言を、今の自民党は否定し始めているということは。

潮:いや、それはまた別の次元だと思うんです。

角谷:別の次元でいいんですね、わかりました。

潮:今申し上げているとおり、だまされて連れていかれた方がいると。例えば、甘言を弄すなどしてですね。このことの問題は少なくても2つあると私は思いますが、それを辺さんのように、広い意味での強制連行だというふうに言うんであれば、これは強制連行があったという話になるわけですよ。しかし、逆に言えば、狭い意味では強制連行ではないということになるわけですよね。そして、平沢先生がご指摘されたように、当初この問題で論争になっていたときは、どういう立場の方も強制連行といえば、狭義の強制連行を指すものとしてあった、なかったと論争してきたわけですよ。そして、後に虚偽証言とわかる朝日新聞の報道などについて、一連の朝日の報道について、いわゆる保守の陣営が「これは事実関係が間違っている」という形で反駁を越え、一つ一つ論破していった結果、具体的に言えば1997年の3月31日に朝日新聞は慰安婦問題について大型の検証記事を載せるんです。それは今回問題になっている最近のものではない、ひと昔前の検証記事なんですが。その中に社説やあるいは本文の記事の中で、要は、私の目から見れば、論争に負けた負け惜しみだと思いますが「人権という、より高次の、高い観点から見れば、広い意味での強制性は認められる」というふうに朝日は書き、だから、やはり強制連行はあったんだと、これは消せない真実とドーンと打って、そして後の泥沼に朝日は突っ込んでいくというふうに私は思いますが。要は、強制連行はあったか、なかったかともし議論をするんであれば、強制連行の定義は何なのかと、強制性とは何をもって定義するのかということを、まず共通の前提、土台をつくらないと全く意味のない議論になるだけ。

角谷:潮さん、それは僕は素人だけどぜひ教えてほしいのは、自分の自由がきかない戦時下で、それが業者であったり、ブローカーだったり、軍に関係する人だったり、日本と韓国の当時の関係や主従関係から言えば、少なくてもそれに「嫌だ」とか「冗談じゃない」とか「ふざけるな」という立場でない人たちがやっぱり強制力を持つ何かのエネルギーで、本人の意思にかかわらず何かあれば、そこには何かあったと思うのは。

潮:まさに。

角谷:個別のものに関しては、1個1個検証はたぶんもうできない。なぜならば、自分が嫌だったことをしゃべりたがる人はそうはいないんじゃないでしょうか、男性にしろ、女性にしろ。それで武勇伝だったり。

潮:ちょっとよろしいですか。

角谷:もうちょっと待ってください。だから、つまり、極めて定義をつくろうとか、論理的にとか、論争をするならばというのは、これは我々がする論争であって、やっぱりその議論っていうのは弱者の声を拾わないことを前提にしてしまいませんか?

潮:少し論点がずれていると思うんですが、私を含めて日本政府、あるいはいわゆる保守の陣営の多くもそういうものすごく広い意味での強制性を否定している人なんてほとんどいないわけですよ、まず。そして、今おっしゃったようなことがまさに朝日新聞のロジックだったわけですよ。

角谷:でも、書き込みの中に存在すらないっていう人がいるのは、それはやっぱりまだそれが「誰もいないんですよ」って言うけど、こんなにたくさんいるんですよ。

潮:いやいや。

津田:「高給取りだった」っていうのもいっぱいいますからね、書いていますね。

潮:だから、例えばそういう事例もあるわけですし、木村先生が先ほどご指摘されたように、例えば年代や地域によってかなり自由が認められていたケースがあって、だからいいとか何とか私は言っているわけじゃないんですよ。

角谷:それはわかります。

潮:問題は、先ほどのことに戻りますと、だまされて連れていかれたというもう一つの問題は、だましたのは誰なのかということなんですよ。これを仮に日韓の問題だとすれば、本当は日本国が統治していたわけですから、日本国ということに法的にはなると思いますが、そこはちょっと別のところだというふうに、あえてそこには目をつぶれば、日本人がだましたのか、そうではなく韓国、朝鮮人がだましたのかということは実質的には重要な論点であり、この番組は先ほど皆さんがご指摘されているように、日本のテレビで従来そこをスルーして来た問題について、韓国側の当事者の証言として、「韓国、朝鮮人のブローカーにだまされた」と、「韓国にも悪いやつはいる」という証言が出たことについて私は意義を認めています。ただ、公正を期すためにもうひと言言わせていただければ、もうひと方のご証言については感情的なお話でしたし、理性的にも疑念の余地があるということは平沢先生のご指摘されたとおりであり、正確に計算したわけではありませんが、お二人の話された時間はかなり長短があったように私は記憶していますし、せっかくそうした意味のある証言を引き出しておきながら、これまでのような、いわば言い尽くされた一面的な、かぎかっこつきの証言でその後を埋め尽くしてしまったことがこの番組の価値をその限りにおいては相殺させてしまった残念なところではなかったかというのが、私が申し上げたかったことです。

角谷:最後の部分は「なるほど」というふうなことはよくわかります。だけど、やっぱりその人たちの思いが出てきにくい環境があったっていうことはあったんじゃないかと僕は思うんですけど。

青木:恐らく、これがたぶん僕は日本人同士で、日本に住んでいる、暮らしている者同士でこうやって話をしたときの限界だと思うんだけれども。つまり、このドキュメンタリーから見えてきたのは、恐らく強制性っていうことの定義とかっていうことを議論するっていうのがあまり意味がないんですよ。実を言うと、国際的、イギリス視点で見れば。それは恐らく彼らにしてみれば、角谷さんがおっしゃったように、もうそのときは植民地支配をされているわけだから、「韓国人にも悪いやつがいたよね」っていうような連れていかれ方だろうが、あるいはそうじゃなくて、本当にあるかどうかは知らないですよ、証拠は少なくともない、銃剣を突きつけて、首に縄をつけて連れていったんだろうが、これは要するにアウトなんだと。つまり、慰安婦問題に関して、日本が強制性があったのかなかったのか、強制性とは何なのかっていう議論をしているっていうことも恐らく国際的にはあまり意味がない、むしろよろしくないことなんだということはもう言いわけの余地はないわけですよ。僕は慰安婦問題の本質というか、慰安婦問題って何かって考えると、つまり日本がかつてした植民地支配の巨大な負の遺産のうちの一つに過ぎないわけですよ。僕が議論をもうちょっと発展させたいなと思うのは、その植民地支配をどうやって、とりあえず日韓の間で1回終止符を打とうとしたかっていうと、まさに今年50年目になる日韓国交正常化、1965年だったわけですね。その部分がドキュメンタリーに出てきて僕は非常に興味深く見たんだけれども、僕らはもちろん当たり前のように知っている話なんだけれども、要するにあのとき韓国は朴正煕っていう独裁政権だったわけですね。軍人出身の独裁政権ですよね。あのときの朴正煕政権ってどうだったかっていえば、もともと朴正煕さんっていうのは陸軍士官学校出身で非常に日本の保守政界と人脈があって、彼は日本から金を受け取って、その金をバネにして漢江の奇跡と言われる経済成長を成し遂げたわけですね。日本側も反共っていうか、共産主義の脅威と向き合うためには、アメリカの希望もあり、日本と韓国は国交正常化しなくちゃいけないんだってことで国交正常化したわけですね。その過程の中で、個人の補償、個人の賠償請求権っていうのは一切やめましょうということで、韓国が独裁政権だったからそういうことが可能になったわけですね。ドキュメンタリーの中に出てきましたよね、慰安婦に限らず強制連行されたと、強制労働させられたと言っている人たちも、「おれたちは日本政府にも韓国政府にも捨てられたんだ」と言っているわけですよね。つまり、日韓の当時の両政府がそうしてふたをしたわけですよ。それは韓国が独裁政権だったから可能だったんだけれども、それが今になって出てきているわけですよ。韓国が非常に民主化をして「おれたちは何にももらってないじゃないか」、「慰安婦だって何も言えなかった。その後になって言えたじゃないか。何にも日本政府はしてくれない。逆に言えば、韓国政府もしてくれない」っていう状況になっているわけですね。僕が今思うのは、安倍さんっていうのは、おじいさんは岸さんですよね。岸信介さんのことをかなり尊敬されているらしい。日韓国交正常化に岸信介さんっていうのはものすごく巨大な、陰に陽にですけれども力を発揮されたわけですね。一方、朴槿恵さんっていうのはご存じのとおり、朴正煕さんの娘さんですよね。つまり、おじいさんとお父さんが、そのときいろんな思惑があった、共産主義の脅威だったり、日韓関係だとか、あるいは朴正煕さんと岸さんとかの個人的な関係もあってふたをしたわけですね。そのふたをしたことによる矛盾が今いっぱい出てきているわけですよ。それを孫の安倍さん、それから、あるいは娘さんの朴槿恵さん、あなたたちはもうちょっと向き合うべきじゃないのっていうのが、僕は今真剣に考えなくちゃいけないことじゃないかなという気がするんですよね。

角谷:そうなんです。その中でこの議論がこのドキュメンタリーをフックにして、何かいろんなものを進められたらというのが。

青木:そう。だから、そのヒントがいくつかやっぱり出てきているわけですよね。確かに韓国寄り過ぎているじゃないかっていう見方もできるかもしれないけれども、でもあの中にいくつも出てきているんですね。要するに、朴正煕さんは本当は国民にやらなくちゃいけなかったものをとったわけですよ。だから、被害者にしてみれば非常に不満なんです。ところが、韓国で朴正煕さんっていうのはどういう評価かっていうと、いまだにアンケートをすると歴代で一番評価の高い大統領なんですよ。なぜかっていえば、韓国をこれだけの経済成長に導いた大統領、偉大な大統領だっていう評価があるわけですよね。もちろん反発する人もたくさんいるんだけれど。だから、それは韓国の中でも矛盾なわけです。まさにこのドキュメンタリーに出てきたけど、朴槿恵さんっていうのはその矛盾をある意味一身に背負って、前にも行けない、後ろにも行けないっていう状況になっている。その韓国と日本はまさに岸さんの孫の安倍さんが執権している時期にどう韓国と向き合うのかっていうのは、平沢さんなんかもそうですけど、やっぱり自民党政権がある意味宿題、自分たちがしたふたを、出てきているものをどうやって処理するのか、50年たって、お互いの政府の大変な宿題だと思いますよ。

(つづく)

◇関連サイト
・[ニコニコニュース]「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」全文書き起こし(1)~(5)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20150731_「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド エピソード1―?sort=created_asc
・[ニコニコ生放送]「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド エピソード1― - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv227558581?po=newsinfoseek&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/

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