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ニコニコ生放送「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード2―」(2015年8月8日放送)全文書き起こし(3)反日ロビー活動の実態

ニコニコニュース / 2015年8月23日 16時0分

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 「ニコニコドキュメンタリー」の第1弾、第三者の視点から日韓問題を描いた「タイズ・ザット・バインド~ジャパン・アンド・コリア~」をテーマにした2回目の討論番組、「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード2―」が2015年8月8日(土)22時から、ニコニコ生放送で配信されました。

 本ニュースでは、同番組の内容を以下の通り全文書き起こして紹介します。

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※出演者=話者表記
角谷浩一氏(コネクター)=角谷
松嶋初音氏(コネクター)=松嶋
青木理氏(ジャーナリスト)=青木
潮匡人氏(評論家・軍事ジャーナリスト)=潮
五野井郁夫氏(高千穂大学経営学部准教授)=五野井
辛淑玉氏(実業家・のりこえねっと共同代表)=辛
津田大介氏(ジャーナリスト)=津田
平沢勝栄氏(衆議院議員・日韓議員連盟幹事)=平沢
冷泉彰彦氏(作家/スカイプ出演) =冷泉
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松嶋:続いてのテーマにまいりたいと思います。ちょっと時間も迫ってまいりましたので、続いてのテーマはこちらです。「反日ロビー活動の実態」ということにまいりたいと思います。

角谷:これはもう当初、この番組をやっているときから韓国がロビイングを上手にやっていて、日本はどうも上品過ぎて上手にできていないんじゃないかっていうのは、いろんなテーマのときにも出てきました。極めて戦略的にやっているにもかかわらず、日本の場合はあまり上手じゃないと、こういうふうな声がありましたけれども。五野井さんからいきましょうか。どんなふうに見ますか。

五野井:別にたぶんこれは反日感情的なものだけではなくて、日本の政府自体がそもそも外交下手でして、いろんな発信が遅れていますよね。実際にそれはクールジャパンっていうのを一生懸命やるにしたって、結局、あれはクールブリタニアのパクリなわけですし。なので、別に単純に韓国のほうが戦略がうまいから何かさまざまな、海の名前が変わるとかそういうふうなことではなくて、ただ単純に日本のほうが今までちゃんと海外に対して発信をしてこなかったっていうふうな。もっと言うと、発信をしなくても振り向いてくれるとか、そういうふうな慢心があったんじゃないかなという気がしています。

津田:この間、五野井さんがTwitterで書かれていた、「国際政治学者があまりにも内向きで、実際に海外で学会があったときに呼ばれたのが2人しかいなかった」っていう。

五野井:しかも、あれはオチがあって、呼ばれた2人のうちの1人っていうのは、なんとイギリス国籍の日本人なんですよ(笑)。

津田:なんでそれだったんですか?

五野井:やっぱり今の若い人なんかもそうだと思うんですけれども、海外に対して発信をしていこうっていう感覚が随分鈍い感じがします。それは別に自分の国に有利になるとかっていうふうな形で、国益にかなうとかっていうのではなくて、それ以上に日本の中でまとまって内向きにやっていくだけでも、それだけ市場が獲得できているってことだと思うんですけどね。

 というのは、ついこの前スロベニアから元文部大臣の人間が来て、ちょっと話をしたんですよ。スロベニアっていう国は非常に小さい国だと。どういうことかっていうと、国内に言論にしても何にしてもパイがない。だから、否が応でもイギリスなりアメリカなりに出ていかないといけない。

角谷:外に出ていかなきゃいけない、なるほど。

五野井:逆に言うと、教科書とかも全部英語だったりするわけですけど。だけど、日本は、それこそ津田さんのTwitterのフォロワー数を見ればわかるように、日本語のフォロワーがすごく多いわけですよね。ということは、それだけでもう市場がまわっちゃっていると。だから、これは一方では、日本という国が大変多くの日本人の読者がいるっていう点では豊かな国です。

辛:そうね。

五野井:そこだけでまわっていくっていう、豊かさがあると思うんですよ。

津田:でも、それは韓国の音楽業界でも全く同じことが起きて、2000年代ぐらいにどんどんCDが売れなくなっていったときに、韓国って本当に800億ぐらいのCD市場があったのが100億を切るぐらいに一気になくなっちゃったんですよね。結局どうなったのかっていうので、外に出るしかないっていうので、映画と音楽っていうのは国際的な活動というのを非常に力を入れてやったっていう。それがある意味では、日本のK-POPブームにもつながってもいるんだけれども。だから、市場規模が日本ではやっぱり大きすぎるんですよね。国内の市場が大きすぎるから外に向かないっていう、そういう環境的な要因はありますよね。

角谷:なるほど。それが結果的に上手にできなくなっている。

津田:ロビーっていう話でいっても、つながっている部分はあるんじゃないですかね。

松嶋:ちなみに、冷泉さんにせっかくなのでお話を聞いてみたいなと思うんですが。冷泉さん。

冷泉:はい。

松嶋:この反日ロビー活動といいますか、そういったところはアメリカにお住まいになられていて感じる部分っていうのはどういったところがありますでしょうか?

冷泉:2つありまして、1つは韓国系の団体を主として、実際に地方議会で議決をしたりとか、あるいは慰安婦像をあちこちに設置したりってことがあるんですけども、それだけ取り上げて日本から見ていると、やっぱり非常に憤慨される方も多いと思うんですけども、実際アメリカの全国レベルはほとんど話題になっていない。ですから、本当に地域的な問題で、例えば私が住んでいるのはニュージャージー州で、ニュージャージー州の場合はフォートリーっていう大きな町の隣にクリフサイド・パークっていうのがあって、ここは韓国人の方が非常に多いわけです。そこに実際に慰安婦像っていうのが設置されているんですけども、そのことに対して、全国紙はもちろんニュージャージーの地方新聞、あるいはニュージャージーのローカルなテレビなどで大きな記事になったってことは全くないんですね。ですから、非常に影響力っていうのは限られているし。例えば、日本海の呼称問題なんかについても、例えばバージニアなんかでいろいろ問題になっていますけども、これも全国的な形では話題になっていないですね。ですから、その辺はあまり、ちょっと過大評価され過ぎかなというような感じが1つあります。

 それから、もう1つは、日系人ってそんなロビイングをやっていないじゃないかとか、例えば各地方議会なんかでいろいろと、日本に有利ないろんな決議を引き出すとかやってないじゃないかって、それは確かにそうなんですけども、それはもうとにかく戦後の中で、旧敵国であった日本、そして収容所というような問題もあったりして、日系人の強制収容って問題があって、そこから例えば日系人が自ら欧州戦線へ志願して名誉回復すると。今の日本人の感覚からしたらちょっとやり過ぎと思われることもあるかもしれませんけども、でもとりあえずアメリカの非常に名誉のある模範的な市民になるんだっていう形で日系人はずっとやってきたわけですね。そういう日本人の信用っていうのがあって、その上で例えば60年代以降、怒涛のように日系企業がアメリカに進出していったときに、例えば政治問題、イデオロギー問題、歴史問題なんかでトラブルっていうのが全くなかった。それはどうしてかっていうと、日系人がやっぱり自分探しとか自己満足のためのイデオロギー的なロビイングなんてことはやらなかったし、実際後で出ていった企業なんかもやらなかった。やらないことによって、悪く言えば無色透明な無国籍なビジネスをやったのかもしれないけど、でもそれは今になってみれば、例えばトヨタにしたって、レクサスにしたって、ホンダにしたって、ソニーにしたって、やっぱりクールジャパンだって形で、明らかに日本っていう形で評価を高めてきている。そういうストーリーをみんな知っているので。例えば、朝鮮半島のたまたま東側にあるからって、自分たちからだけの視点で「東側の海ですよ」なんてことを大騒ぎするみたいな発想っていうのは、日系人も日系企業も全く持たなかった。結果的にここまでの時点は、それはうまくいってきたっていうことがあると思うんですね。

角谷:なるほど。青木さん。そうなると、実は日本の外交面が日中アメリカの記事以外、ほとんど出てこないっていう、そういう問題もありませんか?

青木:あるんでしょうけど(笑)。ただ僕は、韓国のロビー活動って日本のネットなんかでいろいろ出ていて、きょうも1つのテーマになるって言うから「へー」って思ったんだけど、僕は韓国に5年か6年くらい特派員としていたんですけど、韓国のメディアが「韓国のロビー活動がうまくいった」とか見たことがないですよ。むしろ逆に、日本の政治、外交がなかなかうまくいっていて、例えば今の日米関係、あるいは米韓関係、その是非は別として、「日米関係はかなりうまくいっているように見える」と、「それに引きかえ、朴槿恵大統領の対米関係っていうのはあまりうまくできていない。どうなっているんだ」みたいな(笑)、そういう論調のことを読むことが多くて。だから、日本にいると韓国ロビーっていうように見えるのかもしれないけど、でも韓国にいれば、僕はそんな記事を見たことがないし、むしろ「日本の外交に負けてはならぬ」みたいな(笑)、そういうトーンのほうが強いですよね。

 ただ、1つだけ言えるのは、やっぱり僕は実際にちゃんと取材したことがないんで、取材したことのある仲のいい、親しい記者たちにアメリカなんかでそういう慰安婦像とかっていうことを展開している人たちっていうのはどういうことかっていうと、むしろ韓国にいる人たちよりもある種過激化しがちな面はあると。つまり、母国に対してアピールするためにどうしても過激化しがちな面はあるんだっていうような話は聞いたことがあるけど、あれをロビー活動っていうのかなっていう気はしますけどね(笑)。

角谷:辛さんはどんなふうに見ますか。

辛:私は「反日ロビー活動」って言った瞬間に正直何の話かと思った。全く興味のない世界ですし、それから、在日として生きてきて韓国のロビー活動なんて一体何をやっているんだろうと思ったんで。そしたら、名前の東海(トンヘ)のことだって、これをもらってわかって、ちょっと吹いちゃったんだけど(笑)。国境の合間で生きている人間にとって、国家というのは両方とも抑圧団体なんですね。その中で、領土問題にしても名前にしてみても、そういう問題が起きたらいつでも叩かれるのはここなんだという、そういう感覚は持っているけれども、ロビー活動がうまくいったとかうまくいかないとか、それが反日的だとかそうでないとか、そういうことが表に出ることのほうがやっぱり生きづらさに加わっていきますよね。

青木:もう1つ追加させていただくと、この問題を、例えば慰安婦の問題を今回イギリスのBBCがつくったドキュメンタリーがこういう形になったので、「これは韓国のロビーが功を奏しているんだ」みたいな受けとめは、僕はしないほうがいいと思いますよ。つまり、これは前回潮さんなんかもおっしゃったけれど、例えばイギリスっていうある種戦勝国から見た主観でもあるわけですよ。

辛:そうですね。

青木:アメリカから見たらまた違うだろうけれども、ただこう見えているんだと。韓国ロビーっていうことよりも、やっぱり是非は別として、敗戦国であって、侵略をして、それを認めるかどうかっていうのは今度の安倍さんの談話のまさに注目点なんだけど、侵略したのは間違いなくて、敗戦国であってっていう日本と、それから解放されたって立場だけど分断されているって朝鮮を見るときに、こう見えてしまうんだということはロビーとかじゃなくて、やっぱりそれは、ここから先はたぶん是非が分かれると思うんだけど、受けとめざるを得ないですよね。

平沢:いいですか。

角谷:はい、どうぞ。

平沢:反日ロビー活動っていうか、ロビー活動っていうのはどこの国も外務省がやっているというよりは、むしろインテリジェンスがやっているんですよ。世界でインテリジェンスのない、珍しい数少ない国の1つが日本なんですよ。日本はインテリジェンスがないんです。外務省に任せたって、これは無理なんですよ。それで、今インテリジェンスをあれしようっていうことがあるんですけど。

 ちなみに、慰安婦の問題が、私がかつて防衛庁と警察庁にいたときに、韓国のインテリジェンス、治安当局と何回も話をしたときに、1990年代の半ばころですね。あのときに韓国の治安当局は何と言ったかというと、慰安婦の人たちを応援している挺対協ってあるんですけど、挺対協っていうこの組織がなかなかこの慰安婦の問題が解決しない1つの大きなあれなんですけど。「挺対協っていうのは北朝鮮の影響を相当受けている」ということを私はそのときに韓国の治安当局からはっきりと何回も聞いたんです。あのときは向こうとしっかりと対峙していましたから。ですから、実際に挺対協の人たちが北朝鮮に行ったことがありますし、それでそのときに「ねらいは何だ?」って言ったら、日本と韓国を離反させて、そしてお金をいっぱい取ることが北朝鮮の目的で、それを今韓国を利用してやっているんだと。だから、人によっては、今日本と韓国がこういう形でいがみ合っていることを一番喜んでいるのは北朝鮮じゃないかと言われていますけども。それが事実かどうかは別として、その可能性は私は否定できない。

青木:平沢さん、そんなことは言わないほうがいいですよ。だって、そんなことを言ったら、アメリカで慰安婦像をつくっているのも北朝鮮の工作ってことになっちゃうじゃない。

平沢:そう言っているんじゃない。

辛:あはは(笑)。

平沢:それはわかりませんけども、北朝鮮がいろんな形で、少なくとも挺対協の幹部が金日成に会っていることも事実なんです。ですから、私が今言っているように、それを当時韓国のKCIAっていうのがあって、そのKCIAの人たちが私に言ったんですから。

青木:僕もKCIAの人を何人も知っているから言えば、韓国において民主化運動をやった人たちっていうのは、どちらかといえば北朝鮮とのいろいろな交流だったりとか、接点があったわけですよ。挺対協はたぶんその1つなんですよ。挺対協がいいか悪いかは別として、そこで北朝鮮が日韓の間を分断するから、それも1つの仲良くなる方法のような気はするけど(笑)、あまりそんな話は。

辛:というか、北朝鮮にも被害者がいたわけですから、それをちょっとこちらに置いといて。私は、韓国政府というのは長い間北朝鮮の脅威を利用しながら国内をしっかりとハンドリングしてきたわけですね。だから、あるときは日本を使い、あるときは北朝鮮を使い、そうやって国内の軍事独裁政権をずっと維持してきた。だから、私は謀略史観というよりか、みんな自分たちが生き残るためにうまく敵をつくってやってきた中にそういうものが組み込まれていくっていうのは、私はしょうがない話だと思うんですね。

 それで、それよりも何よりも、既に歴史の被害者になっている人たちを、いかにして国境を越えてみんなでその問題を解決していくのかっていう立場に立つべきだと思うんです。私は、例えば、植民地支配に関して、私は私の在日としての課題がある。けれども、そのときに私は、例えば強姦をされたわけでもないし、そのときの問題について謝ってもらうこともないと思う。かといって、韓国に「道路もつくりました、何もつくりました」って、あなたがつくっていないのに、さも自分がつくったように言うのもそれもおかしいと。そういうことは全部、私は今を生きる時代の、私たちにとっての責任と、被害者を救済し、そのときにやった、悪いことをした人たちはちゃんと加害を、どんな、亡くなっていてもしっかりと処罰されて、そして今の繰り返さない社会をつくるためにはどうしたらいいのかっていうところにやっぱり立つべきだと思うんですね。だから、今も続いている被害があるのであるならば、それをいかに救済していくのかっていうことは国境を越えてやるべき問題じゃないかって思うんですよ。

 そこに向かっていかない限りは、いつまでたっても、私は人をベースにして物事を考えていったときに、国という単位で物事を考えると、間違っちゃうんじゃないかなって気がするんですね。もちろん平沢さんは国会議員ですし、それからそういう立場であるから、国という単位で物事を考えていかなきゃいけないと思うんです。でも、私は個人の被害をいかに救済していけるのか、それはヘイトスピーチにおいても同じことが言えると思うんですね。それをどうするのかって考えていったときに、私の立場でできること、それから政治家の立場でできること、それから社会学者の立場でできることはやっぱり違うと思うんです。それぞれができることをどうやってやっていくのかっていうことを、もう少しお話しさせてもらえたらいいかなと思っているんですが。

角谷:なるほど。潮さん、ロビイングっていうと、すごいざっくりして、いろんな情報工作みたいにも聞こえるし、それからいろいろプロパガンダにも聞こえるし、いろんな方法があって、確かに日本がそういうのに積極的にかかわってきたっていう感じはしませんけれども、今皆さんの声を聞くと、さしてそんなもんじゃないんじゃないかって感じですけど、どんなふうにご覧になりますか。

潮:一面において、まず青木さんが指摘されたように、韓国人であれ、日本人であれ、海外に、特にアメリカのような国であればその傾向が強いと思いますが、本国で暮らしているよりもより愛国的になるという傾向は両国ともあると思いますし。実際に日本の場合、私の周辺を仮に保守と言ってよければ、そうした団体に対し、例えば巨額な寄附が海外から来るということは決して珍しいことではないというのは、1つのそういう証左であり、今回のケースについて、韓国においてもその側面は当てはまるというふうに思いますが。同時にそれだけですべて語れるのかと。例えば、本国から一切の支援、資金が出ていないのかということについて、私は少なくとも否定する材料を持っておりませんし、仮に出ていたとしても、それは別に国際法上の何らかの犯罪や違法行為でもないということであり、なおかつ、今回は反日というふうにそこにかぶせているわけなんですが、本当に韓国政府がそうした工作活動を行っているのであれば、それは主権国家として当然の行為であり、それに対抗する措置を日本国政府、特に外務省が怠ってきたのだとすれば、そのことの責任が強く問われるべきだと思います。その点は五野井さんが先ほどご指摘されたことに大きな異論はありません。

 ただ、「外交下手」というふうにおっしゃったことを、あえて言葉尻をとらえれば、うまい下手以前の問題ではないかと。私が言うのも何なんですが、そもそもやる気がないんじゃないですか。外務省設置法に、何のために外務省があるのか、日本国の、我が国の国益を増進させるためにあるんですよ。その使命をきちんと感じてきたのかと。今回の慰安婦の問題でも、いつどの政権が事実関係についてきちんと、例えば、英語で反論してきたのかと。それをしてこなかったから、こんなふうにどんどん押し込まれてきたということじゃないかと思います。この点は、この問題、あるいは対韓国に限らず、どの国に対しても日本国の外交は多く見受けられることであり(笑)、私はそれはいわゆる悪い意味での役人体質、官僚的な事なかれ主義とか、特に東大の、外務省は昔は外交官試験っていうのがあって3年で受かっちゃうと東大法学部を卒業せずにスコーンと入っちゃうわけですよね。例えば、特定のポストに長くて2年ですよ。1年かそこらでコロコロかわるわけですよ。黙って何もしなかったら、次の(笑)。ということが、やっぱり個々のケースに影響してきたんじゃないかなと私は強く思います。

 今回、安倍政権は、これまでの政権に比べれば、少しそこはポジティブであり腰が据わっていると思いますし、人事のことについても内閣人事局を設置するなどして前向きな動きが見られますので、ぜひその方向で、この問題についてもこれまで安倍晋三さんが政治家としておっしゃってきたことを実現する方向で努力をしていただきたいというふうに思います。

平沢:ちなみに、広報予算は大幅に増えていまして、外国に今いる日本の大使館の人たちの意識も変わって、もし現地の報道等に日本に対して間違ったあれがあれば、大使自らが反論を書いたり、直接出向いたりっていうことを世界中で今やっているんですよ。今までは完全に、いわば見て見ぬ振りっていうか見逃してきたんです。これからはそういった間違った報道は許さないっていうことで、それはもう世界でやるし、そのかわり、そのための予算っていうのは大幅に増えて、もう何百億。

青木:平沢さん、気をつけてほしいなと思うのは、確かに間違った報道にはそれはいいんですけれど、例えばドイツの特派員協会の会長さんだったのかな、日本を離れるにあたって書いたことっていうのを「気に食わないんだ」、「間違っているんだ」って言って、ドイツの大使館が。

角谷:南ドイツ新聞ですね。

青木:ええ、抗議したと。

辛:あれは恥ずかしい。

青木:僕はよっぽど気をつけて、それこそロビーの失敗でしょう。だって、あんなのは日本を「なんだ、この国は言論の自由もろくに保障していない国なのか」っていうことを逆宣伝しちゃうことになりますよ。

平沢:いや、青木さん、それはそれぞれの外交官の資質の問題だと思う。だから、あのドイツの例は、資質が悪いんですよ。

(一同笑)

平沢:それだけの問題ですよ。それはその外交官が「これは絶対に許せない」と思って、自らが反論するものかどうかっていうことは、その外交官が判断すればいいんですよ。

五野井:だけど、それだけじゃなくて、例えば今この前出た中野晃一さんの『右傾化する日本政治』っていう本にも書いてありますけど、まさにフランクフルター・アルゲマイネの記者に、それこそ外務省の方が反論をするとかってこと以外にも、実際に例えば中野さんも私もそうですけど、BBCであったりとか、あるいはロイターであったり、いろんなとこから取材を受けるわけですね。その中で、中野さんに限って言えば、「こいつは反政府的で言っていることが正しくないから、政府が推薦する人間にインタビューをしろ」なんていうことを政府の側が言っていると。これはもう民主主義国っていうよりは、もちろん国益増進のためにいろいろやるのは非常に大事なことなんですけれども、むしろ失点になってきているんじゃないかなっていう感じがするんですよね。

角谷:予算を増やして失敗になっちゃっているんじゃないですか。

平沢:いやいや、ですから、そんな指示はしていないと思いますよ。

五野井:ということは、じゃあ、つまり。

平沢:現場での判断だと思いますよ。

角谷:そういう人は、もう早く日本に戻してください。

五野井:現場が忖度をして、勝手にやっちゃう。

平沢:ということだろうと思いますよ。

青木:外交官ってそういうのばかりなんでしょう。

辛:確かに。じゃなくて、現場の忖度によって、通達が出ていてもそれがきちんとできないっていうところは多々ありますよ。

松嶋:じゃあ、ちょっとここで。

角谷:冷泉さんにいきましょうか。

松嶋:はい、冷泉さんがコメントをしたいとのことですのでお願いします。

冷泉:今安倍政権の、いわゆる情報発信のお話が出ていましたけども、実際に安倍総理ご自身の、例えば今回第二次政権になって、2013年9月の国連総会で、戦時の女性の人権に関するセッションっていうのがあったんですね。つまり、戦争が起きると、そこで女性の人権が非常に蹂躙されることがあると。そのことに関して、安倍総理ご自身がスピーチをされて、非常に立派なスピーチをしているんですね。それがまさに、ある意味では例えば過去に日本が従軍慰安婦の問題で実際に慰安所を設置したみたいなことがあって、それに直接触れるわけではないけれども、少なくとも未来志向で、「今の日本はそうではありません」と。むしろ、世界における戦時の女性の人権の問題について関心を払う国だっていうことを堂々と述べたスピーチだったと思う。

 それから、例えばことしの4月の訪米のときも、実際にホワイトハウスでの共同記者会見のときに慰安婦に関する質問が出たんですけれども、安倍総理ご自身の口から、「人身取引の犠牲になった方だというふうに理解はしているけど、大変これは痛ましいことである」というような話があり、さらに突っ込んだ発言としては、その直後に菅官房長官が実際に主催されている人身取引に関するいろんな研究っていうのがあるわけですけども、その中で過去は、いわゆる日本で外国人女性を人身取引をして、いわゆる風俗営業等で酷使するっていう問題があったわけですけども、ことしになって日本人の被害者のことについても言及をするというような取り組みがあるわけで。そういう意味で、そういったことは結構アメリカのメディアなんかで報道されているんです。

 ですから、かなりそういう意味では努力をされているし、きちんとメッセージが少しずつ伝わっている面があるんですね。だから、逆に、それが日本に伝わっていない。何となく安倍総理がやっているんだから、表と裏を使い分けて、例えば、「日本向けには何となく保守に受けるようなことをやって、海外向けにはきれいなことを言って調整しているだけなんだろう」みたいな、そういう姿勢で見られているんじゃないかと。そうじゃないと思うんですね。やっぱり内閣をあげてやることはやって、予算をつけて発信して、ちゃんと届いているんで。そのことを日本の国内にもうちょっときちんと広めたらいいんじゃないかなと私は思うんですけども。

角谷:ありがとうございます。

松嶋:ありがとうございます。

角谷:ということは、やっぱりフィードバックがあまりできてないっていうこともありそうですね。

平沢:そうですね。今までやっていなかったことを急にやりだしたから、慣れていないっていうこともあるし、そういったマインドがそちらに向かっていないっていうこともあるんでしょうけども。先ほど青木さんが言われたように、そういったドイツのような例もありますんで、そこは気をつけて、しっかり教育したいと。

角谷:ただ一方で、政治家、安倍さんの発言がやっぱり世界に影響を与えているということも考えれば、やっぱり政治家の発言は大きいんですよ。日本の政治家や、ことに日本の与党の政治家の発言っていうのは大きいけれども、やっぱり与党の政治家に滅私奉公の気持ちがなくなったとか、若い人たちが自由自在にいろんなことを言うけれども、自民党でももう少しそういうのは整理させないんですか?

平沢:最近いろんな発言が出ていますけども、私からしても考えられないですね。考えられないような。

角谷:だから、平沢さんから見ても、やっぱり政治家の発言の重みみたいのは、少し自民党の中でも若い人にいろいろ注意したほうがいいんじゃないですか。

平沢:昔は派閥みたいのがあって、その中でしっかり訓練みたいのをしていたんですけど、今はそういったあれが、ありますけども非常に弱体化して。

角谷:弱体化しちゃった(笑)。

平沢:要するに、訓練するところがないものだから、結局自分で試行錯誤しながらやっていくっていうようなとこがあって。その過程で今回いろんな発言っていうか、私からすれば、私から見ても許しがたいような発言がいろいろ出ていますけども。

角谷:やっぱり情報発信は誰がやるにしても、それはもう我々も含めて。

青木:角谷さん、ごめんなさい。さっきの冷泉さんの話は、僕はすごく大切だと思うんだけれど。安倍さんが国連総会で「紛争地の女性の重大な人権侵害を何とかしなくちゃいけない。これを解決するために日本は世界の先頭に立ちます」っていうことをおっしゃった。冷泉さんのおっしゃるとおり、立派な演説ですよね。例えば、これを慰安婦問題の解決の枠組みの1つにすることはできないだろうか。例えばですよ。あるいは、例えば、韓国との間では法的な問題はすべて解決済みだと、最終かつもう完全に解決済みなのでできないっていうのはわかるんだけれども、そういう枠組みだってあり得るわけですよね。例えば、紛争地の女性が非常な人権侵害を受けた事例のうちの1つなわけですから、それをそういう枠組みで何とかできないだろうかっていうことで朴槿恵大統領に声をかけるとか、日韓でそれを模索するっていうことだって、僕はそれは安倍さんも納得できる一つの方法じゃないかなって気もするんだけど。

平沢:紛争地っていうのは、私もわかりませんけども、恐らく過去のというより、そういう意味で言われたんだろうとは思いますけども、それは1つのあれであるとは思いますけども。あくまでも今起こっている、あるいは今後起こり得るだろうことについて言われたんだろうと思います。

青木:もちろんそうなんだけど、でも、あれを1つの例として日韓で枠組みを作るっていうような形というのも、安倍さんの言っているのは全くそのとおりだし、僕は全く賛成ですよ。だから、国際社会で、国連でそこまでおっしゃったんだったら、その1つの枠組みの中で慰安婦問題を何とか前進できないかっていうようなことを考えるっていうのも手なのかなという気はするんですけどね。

(つづく)

◇関連サイト
・[ニコニコニュース]「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード2―」全文書き起こし(1)~(4)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20150808_「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド_エピソード2―?sort=created_asc
・[ニコニコ生放送]「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド_エピソード2― - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv227559271?po=newsinfoseek&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/

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