「こんなんで原稿を書けなくなるのかと思うと許せなかった」 作家/被災者 冲方丁<インタビュー「3.11」第10回>

ニコニコニュース / 2012年3月10日 20時12分

「天地明察」などで知られる作家の冲方丁氏

 「天地明察」で吉川英治文学新人賞・本屋大賞、「マルドゥック・スクランブル」で日本SF大賞を受賞した作家・冲方丁(うぶかた・とう)に新たな経歴が加わった。東日本大震災が起きたその時、福島市の自宅にいた「被災者」という肩書きだ。

 冲方氏は、被災直後に北海道へと避難したものの、福島から離れて約1年経った今も、震災への「怒り」が収まらないという。そして、その「怒り」のために、あえて被災したことについて「書く」ことを止めた冲方氏が、作家ではなく被災者としてのノンフィクション・ストーリーを明かしてくれた。

・東日本大震災 3.11 特集
http://ch.nicovideo.jp/channel/311

(聞き手:大住有)

■被災した直後は、容器が無くゴミ袋に水を入れて運んだ

――東日本大震災が起きた時、福島市の自宅にいたとのことですが、その直後の様子はいかがでしたか?

 電気は来ていたんですよ。でも水が来なくなっちゃって。あと、ガソリン。地域一帯からも2日でほとんどなくなりましたね。それで、次になくなったのが水をいれる容器。ホームセンターとかも潰れて閉鎖しているし。開いているところのポリタンクは全部売れちゃって。

――ガソリンは切れたら困るというのはわかるのですが、容器が無くて困るとは・・・全然想像つかなかったです。

 僕も被災前は想像もつかなかったですね。給水所はあるんですが、汲もうにも容器がないので、結局ゴミ袋に水入れて。給水所が僕の家から5キロぐらい先にあって、40リットルのゴミ袋を9袋くらい車に詰めて持って帰って来ました。で、ガソリンが切れたんですよ。

 最後のガソリンで水を手に入れたけど、この水はいったいどれだけ保つのかと。トイレ1回流すのに8リットルの水が必要だなんて初めて知りましたよ。8リットルも!?って、結構使うなあって思いました。

――水が手に入れられない生活というのは、いかがでしたか?

 室内の乾燥がひどいんですよ。子供の咳が止まらなくなくなってしまって。で、一方外は大雪。避難をする場所には町中の人を暖めるほどの器具はないんですよ。さらに、避難指定場所がただの公園で・・・避難しても病気になりに行くようなものです。夜中の12時に子供抱えて、大雪の中立っているわけにもいかないので、やっぱり家の中にいるしかない。

 家が壊れて避難された方もいらっしゃいますが、ライフラインが途絶えた状況で自宅待機という状況も、ひどかったですね。そうしていると、僕よりも奥さんのほうが早く「ここから移動しよう」と言い出しましたね。

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