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(ネタバレ有り)『シン・エヴァンゲリオン』は宮崎駿に対する庵野秀明の“父親殺し”――制作手法に込められた自身の師への30年越しの回答【話者:岡田斗司夫】

ニコニコニュース / 2021年4月22日 11時30分

 2021年3月22日にNHKで放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀』 庵野秀明スペシャルが、あらゆる方面から話題を呼びました。これを受け、ニコニコ生放送『岡田斗司夫ゼミ』では、同番組を視聴したパーソナリティの岡田斗司夫氏による考察と所感が述べられました。

岡田斗司夫氏

 この放送の中で、岡田氏は、かつて自身がプロデューサーとして携わったアニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼(以下、オネアミスの翼)』の制作技法を取り上げ、庵野氏が『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(以下、シン・エヴァンゲリオン)』の中で行った手法は同作品のオマージュに近いと解説。

 また、『シン・エヴァンゲリオン』のアングル主義については庵野氏の師匠である宮崎駿氏の名前を出し、その独特な作品の作り方の違いから「宮崎批判であると同時に、肩を叩くというのもあるでしょうね。もう引退してもいいよという意味もあるんだと思います」と述べました。

※本記事は『シン・エヴァンゲリオン』のネタバレが含まれます。

※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。この番組は2021年3月28日に放送されたものです。

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岡田:
 『プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』の中で、『シン・エヴァンゲリオン』に登場する第三村が木造のミニチュアで作られているシーンが映されていましたね。
 おそらく建物をすべて3Dデータで作って、デジタルデータをレーザーカッターに読ませて、部品を切り出して組み立てたんだと思います。

 映像を見る限り、2.7メートル×7.2メートルぐらいで作ってるんじゃないかなと思うんです。かなり大きいミニチュアセットですよね。このミニチュアセットの中を、スマホなどで実際に撮影してアングルを決めたんだと思います。これは、なかなかすごいです。

『シン・エヴァ』は『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の作り方を倣った?

岡田:
 このミニチュアを見て思い出したんですけども、庵野監督は、この作り方を以前経験しているんです。
 1987年に公開された『王立宇宙軍 オネアミスの翼』という、庵野監督が参加したアニメも同じ作り方をしたんですよね。

 劇中に出てくる宇宙軍の本部の建物がものすごい複雑な構造だったので、1.5メートル×1.5メートルくらいの大きい模型を発注して、それでスタッフがいろんなところにカメラを中に入れて撮影して、それでアニメのアングルを決めていたんです。

 なぜそんなことをしたかというと、『オネアミスの翼』の監督の山賀博之さんが「アニメーターの頭の中でレイアウトを組むのが嫌だ」って言ってたんですね。「絵描きが頭の中で描いたら、結局は絵描きにとってのいい絵になってしまう」と。そうではなくて、リアルな構図を撮ろうとしたんです。
 だから『オネアミスの翼』の半分以上のカットは、実はアニメーター自身がビデオカメラで演技しています。演技して、それをビデオに撮って構図を決めたんですね。あれはたぶん、日本で最初のプレビズだったと思います。

 『シン・エヴァンゲリオン』は、実は40年以上前に『オネアミスの翼』で山賀さんがやったことを倣ったのが、NHKのドキュメンタリーを見て分かったんです。

庵野監督、スタジオに遊びに来た宮崎駿に説教される

岡田:
 『オネアミスの翼』制作当時、「真実に勝る創作なし」というのが合言葉で、外国の写真集とかを買いまくって現実にある構図を探してきたんです。
 でも、その当時、スタジオに遊びに来た宮崎駿さんが、庵野さんが描いているアニメを見て「だから庵野はダメなんだ」って、宮崎さんが庵野さんを名指しで批判したんですよ。「アニメで現実を真似ても仕方がないだろ」と。

 庵野さんに対するこの批判は、宮崎さんはアニメの雑誌とかいろんなところで言っていたんですね。「最近のアニメーターは、現実の映像を参考にしている」とか、「映像を見て映像をトレースしてもダメ。そうじゃなくて、現実を見て自分が頭の中でそれを演技しなきゃダメなんだ」って言うんです。

 その当時、やっぱり絵描きは宮崎さんの言葉でめちゃくちゃ影響を受けたんですよね。だから貞本義行さんとか前田真宏さんは、実は山賀さんの批判をしてました。「アニメでプレビズみたいなことするんだったら、実写でやればいいんですよ」というのを散々言われたんです。

 庵野さんにとっては、絵コンテを書かないのも『オネアミスの翼』が初めてで、批判もされて、当時はかなり心が揺れていたみたいなんですよね。

『シン・エヴァンゲリオン』は庵野監督による師匠殺し宣言

岡田:
 庵野映画も『オネアミスの翼』と同じで、絵で説明することよりもアングル優先なんです。アングル優先で説明を放棄してるから、観客が考えなきゃいけなくなってる。そこで「難しい映画だ」「かっこいい映画だ」というのになるんですね。
 それは、宮崎映画とまるで逆だなと思います。

 宮崎映画と庵野映画は本当に真逆で、宮崎駿ってイメージカットを自分で描くんです。自分で書いたものを、その通りにスタッフに作らせようとするんです。
 ところがそれに対してNHKのドキュメンタリーで庵野さんは「自分のイメージなんていうのは、つまらない。そんなものをやっても、それは自分の中にあるじゃないですか」って。「そんなものを作っても意味がない」というふうに言っているんですね。

 庵野さんは宮崎さんに対して「宮さんの映画スタッフは下駄です」って言うんですね。スタッフは宮崎さんに使われるのが目的の下駄だと。「本来は宮崎さんのアニメっていうのは、宮崎駿が何十人もいればいいだけなのに、宮さんはひとりしかいない。だからスタッフを使ってるんですよ」というふうに宮崎駿のドキュメンタリーで、庵野秀明が笑いながら語ってるんですよね。

 『シン・エヴァンゲリオン』は庵野さんによる宮崎駿のやり方の否定というか、弟子による師匠殺し宣言なんですよ。
 何回もインタビューの中で語っている「自分の頭の中に面白いものっていうのがなくて」っていうのは、宮崎駿の否定なんですけども、その『シン・エヴァンゲリオン』のアングル至上主義やプレビズの手法は宮崎批判であると同時に、肩を叩くというのも意味もあると思うんです。
 
 『シン・エヴァンゲリオン』に、ミサトさんの「息子が父親にしてあげられることっていうのは、肩を叩くことか父親を殺してあげることだ」っていうセリフがあるんですけど、まさにそれですよね。「もう引退してもいいよ」という意味も込めて、宮崎駿批判をしたんだと思っています。

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