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アカデミー4冠 ヨルゴス・ランティモス監督が仕掛ける不思議世界 「憐れみの3章」

日刊スポーツ / 2024年9月23日 7時0分

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

今年のアカデミー賞で4冠となった「哀れなるものたち」には、全編不思議な違和感が漂っていた。

テーマパークの書き割りのような背景、サイズ感のゆがみ…その中で当たり前のように振る舞う登場人物にいつの間にか引き込まれ、独特の作品世界が脳裏に焼きついた。

そのヨルゴス・ランティモス監督がエマ・ストーン、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリーらを引き続き起用して撮ったのが「憐れみの3章」(27日公開)だ。

邦題通り3章構成の作品は、メインキャストがそれぞれ別々のキャラクターを演じつつ、どこかにかぶる部分があって、見終わってみればぼんやりと起承転結が浮かび上がる。

前作のような背景の違和感はないが、ストーリーの接ぎ目の微妙なゆがみが気になり、それが展開とともに霧消していく。ヨルゴス作品ならでは「快感」がある。

デフォーは第1章で部下のすべてを支配しようとする、高圧的な上司を演じ、第3章にはカルト教団の教祖として登場する。

ストーンは第1章で上司の理不尽な要求を、ためらう部下に代わって実行する謎の女。第2章では行方不明の末に人が変わったようになって帰宅する妻として登場。そして第3章ではデフォー演じる教祖の意を受け、奇跡を起こす女性を探す従順な教徒を演じている。

何となく重なっているようにも見える3つの物語は、ラストで1つになり、思わず膝を打つ。まるで複雑なパズルの最後のピースがはまるようにヨルゴス作の「抽象画」が完成する。

章ごとに役柄が変わることへの違和感は、役柄よりは、演じるストーンやデフォーという生身の俳優への意識を強くする。演劇を観ているのに近い感覚だ。

自身の技量を見透かされるような気になるからだろうか。2人はもちろん、今回メインキャストに起用されたジェシー・プレモンス、マーガレット・クアリー、ホン・チャウらも演劇的なメリハリを付けて熱がこもる。稽古中の「生身の姿」を見ているようで、思わずそれぞれの人柄を想像してしまう。

渥美清さんに生前、こんな話を聞いたことを思い出した。渥美さんは暇さえあれば、映画や演劇を本当によく見ていた。

「見る側としては(俳優の)歳がいくつとか、出身はどこかなんて分からない方がいい。愛妻家でいいパパなんですなんて言われると、僕なんかゲンナリしてしまう。これ(俳優)やる前、泥棒でもやってたんじゃないか、と思う方が面白いね」

余計なことかも知れないが、第一章の冒頭に登場する男のシャツに刺しゅうされた「R.M.F.」の文字を覚えておくと、ラストの納得感が強くなるはずだ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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