日本は台湾の“民主主義を越えたコロナ対策”を見習うべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年5月20日 17時45分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月20日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2020年版「外交青書」について解説した。
外交青書
茂木外務大臣)是非みなさんに、全体の外交青書がどうなっているのか、日本外交はどういう方向に向かおうとしているのか、北方領土はどういう表現なのか、こういったことをよく理解していただきたい、こんな風に思っております。
茂木外務大臣は19日の持ち回り閣議で、日本の外交活動や国際情勢をまとめた2020年版の外交青書を報告した。2019年版で削除した北方領土の法的立場について、「我が国が主権を有する島々」と再び明記した他、新型コロナウイルス感染拡大への対応にも触れている。
飯田)外交青書は、過去1年間の外交活動や国際情勢をまとめたものです。北方領土の表現などが注目されています。
台湾は極めて重要なパートナーと明記
佐々木)内容としても、総じてバランスよくできているという感じがしました。いちばんのポイントは、台湾の位置づけでしょう。中国がWHOに台湾を入れないと言っていますが、「日本は台湾を入れるよう支持している」と明記したことが大きいと思います。
飯田)我が国としては、一貫して支持して来ていると記載しています。
佐々木)昨年(2019年)の青書では、台湾は「重要なパートナー」だったのが、今年(2020年)は「極めて重要なパートナー」に変わっています。
飯田)「極めて」がついた。
民主主義的なやり方を越えた方法でコロナ対策に成功した台湾
佐々木)この微妙な表現の変化が、注目するところだと思います。台湾は、中国にいじめられている小さな島と捉えている日本人も多いと思いますが、日本にとって重要な隣国のような存在になりつつあると思います。特に、今回のコロナの対応で、日本と台湾のいちばんの違いを考えると、日本は政治の国で、政治家が指導していろいろな対策をしています。しかし、台湾は専門家が中心になって対策を打ち、それにみんながついて行く。専門家がリードしています。これは儒教的な考え方で、優秀な人が率いるのであれば、その人が民主主義的に選ばれているかどうかは関係ないという、中国の官僚システムと似たところがあります。結果として、専門家の知見がリードしている方が、コロナ対策は成功している。ある意味で、民主主義の限界を超えたやり方で台湾は成功しているのです。こういう考え方を日本も真似するべきだと思います。
飯田)民主主義は、みんなで話し合うというところがあるから、当然決定が遅くなったり、ポピュリズムに走ったりするという弊害がある。その部分を超える1つのヒントになりますよね。
民主主義の落とし穴
佐々木)去年の青書で、「北方領土は日本に帰属する」という記述を削除して大問題になりました。今年、それを復活させたわけですが、復活させたことには特に理由がなくて、単にみんなが批判したからだというだけです。外交は本来、民意とは関係なしに、「国が国際社会のなかで、どうすれば生き延びて行くのか」ということを中心に考えなければなりません。そこで民意に引きずられすぎてしまうと、戦前の日本社会のように戦争に進んでしまうようなことが起きるので、一歩置いた方がいいのです。そこのバランスを、日本を含む民主主義国家はうまく取れないところがあります。
飯田)専門家の知見を入れようとすると、御用学者だということで批判ばかりが高まるというのは、3・11の直後もあったし、今回もあります。
佐々木)専門家会議の尾身先生を「御用学者」と言っている人もいますからね。
飯田)そういう空気をつくってしまうと、ものが言えなくなるというのは、健全でも民主的でもないですよね。
佐々木)そこが民主主義国家の落とし穴です。ここをどう乗り越えるかの話だと思います。
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