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新型コロナの影響で、テロのリスクも上がっている~同時複合危機とは

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年7月27日 6時50分

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月24日放送)に国際政治アナリスト・NPO法人海外安全危機管理の会の代表理事 菅原出が出演。同時複合危機について解説した。

カブールで起きたテロによって破壊された建物=20170531アフガニスタン・カブール 写真提供:時事通信 People survey the the scene of a suicide bomb attack in Kabul, Afghanistan, 31 May 2017.

同時複合危機とは

NPO法人海外安全危機管理の会 代表理事を務める国際政治アナリストの菅原出氏がいま提唱するのが『同時複合危機に備えよ』というもの。この同時複合危機とはどういうものなのか。

飯田)菅原さんは、グローバルリスクアドバイザリーという会社の代表も勤められています。そこで様々なレポートも出されていますが、このなかでも同時複合危機に備えよということを提唱なさっています。これはどういう概念ですか?

菅原)はい。いま日本でも同時多発的な災害が言われるようになって、新型コロナがあるなかですでに災害などが起きていますよね。それと同じように、海外でもコロナの影響があるなかで他のいろいろなリスクも高まっていますので、同時にいろいろな非常事態が起きて、複合的な危機がおきることに対しての認識を深めてほしいと思っております。日本にいるとあまり意識をしないのですが、世界を見渡してみると、コロナの影響で、いろいろな社会経済的な状況が悪くなっていて、それによって暴動や犯罪テロのリスクが上がっています。

飯田)国家のグリップが弱くなっている。

菅原)弱くなっているというのもあります。後は経済的な影響というのも大きいですよね。特に日本でもこれだけ厳しいのですから、資源輸出に依存している国や観光業への依存が高い国、中東などの国は先進国に出稼ぎに行ってその収入で経済が、という国は軒並み壊滅的な影響を受けて、失業率がものすごく上がっています。日本と違ってそういう国は政府からの支援も非常に少なかったり、金持ち優先で不平等だったりということもあって、弱者はほぼ見捨てられているわけですね。そうすると政府に対するデモや抗議行動、略奪などをしなくてはいけなくなってきます。また、いろいろな形で貿易、流通が縮小していますから、不法な麻薬取引なども縮小しているわけですよ。

飯田)なるほど。

菅原)そうすると、いままでは、ここは自分の縄張り、ここは自分の縄張り、と分け合っていたのがある意味市場の取り合い、小さくなった麻薬マーケットの取り合いでメキシコなどではカルテル同士の抗争が激しくなっています。そうすると、いままではそういった麻薬カルテル同士の抗争が起きるのは一部の地域だったのだけれども、いままでなかったような地域でもそういう暴力が流れてきて、先月6月のメキシコシティの首都の高級住宅街、大使館や外国人がたくさん住んでいる場所でいきなりドンパチが始まってしまったということがあるのですね。その影響なのですよ。

飯田)なるほど。高級住宅街などには日本からの駐在の方も住んでいらっしゃると思いますが、特に治安には気を遣って治安の良い場所を選ぶということをやっていますよね。そこがドンパチの場になってしまう。

公開された「イスラム国」(IS)の最高指導者バグダディ容疑者とされる男の映像=2019年4月 写真提供:時事通信

ISが息を吹き返している

菅原)そういうことが実際に起きておりますし、ほとんど日本では報じられませんがイラクではまたIS ・イスラム国テロ組織が息を吹き返していますよね。

飯田)確かトップと言われていたバグダディという人は確か殺害されましたよね。

菅原)殺害されてほぼ壊滅状態まで弱体化していたのだけれども、コロナが流行り出してから、そもそもイラク軍への訓練をやっていたアメリカ軍、そしてフランスもイギリスも、みんな自分の国のコロナが大変なので撤収したり縮小したりしているわけですね。そして軍のなかでも感染が広がったりしていますので、そもそもテロ対策も制限されてしまっているのですね。ある意味イラクではIS が復活するためのスペースができてしまって、数カ月そういうことが続くと息を吹き返してくるのですよね。

飯田)そういうものなのですね。お金とかってどこから出てくるのですか?

菅原)お金はいままでずっと貯めていたものなどがけっこう残っている部分がありますし、いろいろな形でイリーガルな活動を続けますから、そういう意味で言うと警察などの治安能力が低くなってイリーガルな活動もしやすくなっているという部分もありますね。

飯田)そういう破綻国家みたいなものができたり、空白ができたりすると、テロの温床になるというのは前から言われていましたけれど、いまそれがそこかしこにできつつあると。

菅原)できつつあるということですね。しかも政府のそういった非常事態での国民に対する支援が不平等だったり不均衡だったり、もともと少数派だったり反政府的な傾向のある地域にはもう支援を回しませんから、そういうところにどんどん不満が溜まっていくという構図がありまして、テロなどは非常に危なくなっていますね。

飯田)リーマンショック並みだとか、それ以上だとか、日本国内でも経済の面で言われていて思うのですが、結局リーマンがきっかけでいろいろなところでジャスミン革命が起こり、そして不安定になってテロの温床になってIS も出てきたと、すべてつながっていますものね。同じことが起ころうとしている。

菅原)後は、IS などが最近プロパガンダで言っているのは、そもそも共産主義の、イスラムとは敵の中国でウイルスが流行り、その後またIS の敵のシーア派のイランで流行り、その後イタリアのローマ、キリスト教の総本山で流行り、最後本丸のアメリカで流行りと。これはアッラーの神の助けであると。いまこそ我々は復活するべきだというプロパガンダをやっているわけですよね。

飯田)これがまた周りの状況を見ると説得力が。

菅原)説得力があるのですよ。そして自分たちが復活するための手助けをしてくれたという理解ですね。

飯田)しかし、その文脈で言うとバグダディという人は聖なる殉教者みたいな。

菅原)殉教者ですよ。

飯田)その意思を自分たちが継ぐのだ、みたいな。

菅原)ええ。侮ってはいけないですよ。

飯田)しかし、あのIS というところは東南アジアにおいても、勢力を伸ばしていたという報道がありましたよね。そのくすぶりというのも。

菅原)インドネシア辺りにはシンパもいるのですが、アジア方面はあまり活発になっていなくて、最近はナイジェリアや西アフリカの方がアフリカ方面がすごいですね。

爆発で天井が崩れたスリランカ・コロンボ近郊の教会(スリランカ)=2019年4月21日 写真提供:時事通信

海外でテロに遭っても救援できなくなる

飯田)レポートを読んですごく気になったのが、そういうリスクが高まってきて、何かが起こったときに日本の政府が何かできるかというと、外務省はなんと言っているのですか?

菅原)外務省は6月の後半に企業向けに、新型コロナウイルス感染症時代のテロ対策というメッセージを出していまして、皆さんコロナで手一杯かもしれませんがテロのリスクも上がっていると。コロナがあるので、いろいろな活動も制限されていて、外務省の邦人援護というか、日本人を保護するための活動にも制約が出てきますと。だからそういうことも考慮して、テロ対策をもう一度見直してテロに遭わないように気を付けてというメッセージを発しているのです。

飯田)日本から、おいそれと救援チームがいけないかもしれない。

菅原)いけないのですよと。いままでであればERTとか救援チームを立ち上げてすぐに現場に送って情報収集したり支援したりするのですが、そういうことができませんと。だからこんな時にテロに遭ってくれるなというメッセージを出しているのはそういう危機感の現れですね。

飯田)そうするとひょっとしたら拠点から動けない。自宅やオフィスから動けなくなるということも考えられるわけですか?

菅原)あるわけですよね。だから、その国で、コロナがあってテロという同時複合だけでなくて、例えば日本の本社でコロナ感染が出て、手一杯になっている時に海外現場でテロが起きたら対処できるか、とかそういう複合もあるわけですね。

飯田)なるほど国をまたいだ複合。

菅原)ええ。日本で災害が起きて、そんななか海外現場で暴動が起きて孤立して助けを呼んでいる。どうしますかと。そういうことまで考えて、なるべく現場は現場で対応できるような体制を取らなくてはいけないし、そういうことを含めていままでの1つの事態に対する緊急対策だけではなくて、複合的に起きたらどうするか、というマニュアルも必要だということをわたしはいろいろなところで言っているのですけれどね。

飯田)なるほど。それこそが同時複合危機に備えよということなのですね。

菅原)はい。

飯田)この番組は海外で聴いていらっしゃる方もいるので、まったく人ごとではなく、そして日本の国内でも備えておかなくてはいけないと。

菅原)はい。そう思います。

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