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政治報道に隠れた“夢”のあるニュース(1) はやぶさ2の動向

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月24日 17時20分

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「報道部畑中デスクの独り言」(第208回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、小惑星探査機「はやぶさ2」の動向について—

リュウグウと小惑星「1998KY26」との比較 中央左側白抜きの四角部分が小惑星に相当する(JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産能研、Auburn University 提供)

自民党総裁選、立憲民主党結党大会、菅内閣誕生と、このところ永田町の話題が世の中を賑わしていますが、そうしたなかでも科学技術、自動車の分野でいくつか“夢”のあるニュースがありました。遅ればせながら、それらについてもお伝えして行きます。

まずは、小惑星探査機「はやぶさ2」の動向。今年の暮れ、2020年12月6日に、小惑星「リュウグウ」から採取した粒子が封入されたカプセルが地球に帰還します。いまはそのゴールに向けた運用が着々と進んでいます。

9月15日夜、はやぶさ2はイオンエンジンを点火して軌道の微修正を行い、イオンエンジンは無事に帰還ミッションの任務を終えて「完走」。JAXA宇宙科学研究所のツイッターによると、速度誤差はわずか秒速0.05ミリで、「100点満点のフィニッシュ」だったということです。

一方、探査機「はやぶさ2」本体は以前小欄でお伝えした通り、カプセルを分離した後は拡張ミッション=「第二の宇宙への旅」に向かいます。

その行き先について、JAXA=宇宙航空研究開発機構ではこれまで綿密な検討がされて来ましたが、310個の小惑星から2つの候補に絞られ、今回、そのうちの1つ、「1998KY26」と称する小惑星を目指すことが明らかになりました。

その小惑星「1998KY26」は、直径わずか30mほどの天体です。探査機「はやぶさ2」が粒子を採取したリュウグウは直径約900mで、その30分の1の大きさとなります。

この小惑星は、いまから22年前の1998年6月、地球から約80万kmの距離を通過し、アメリカのレーダーに観測されました。惑星の直径の他、自転周期10.7分、つまり、わずか10分ちょっとで1周してしまうことがわかっています。

目標までのプロセスですが、カプセル帰還後の2020年12月に、探査機「はやぶさ2」は地球の引力などを借りて向きを変える「スイングバイ」により、金星と地球の公転軌道の間を回ります。その後も小惑星の近くを通る「フライバイ」や、地球からの「スイングバイ」を経て、2031年7月に小惑星に接近する計画です。

小惑星「1998KY26」と探査機「はやぶさ2」との比較 右上にあるのはやぶさ2(Auburn University、JAXA 提供)

太陽の周りを約11周、飛行距離約100億km。リュウグウへの着陸、粒子採取は打ち上げからカプセル帰還まで約6年半を費やしますが、今回はそれよりもはるかに長い、10年半あまりもの「長旅」になります。

JAXAの吉川真准教授は9月15日のオンラインでの記者会見で、拡張ミッションについて「時間との競争、未知の領域、宇宙空間でどれだけ長い期間、イオンエンジンが運用できるかの挑戦ということになって行く」と話しています。

今回のミッションの意義について、まずは小惑星自体の正体をつかむことが挙げられます。約10分で1周という速さで高速自転する天体、重力も非常に小さいなか、遠心力でも振り回されず、固まっている小惑星の物質とは何なのか……今風の言葉で言えば「固い絆で結ばれている」ということになるのでしょうか。

プロジェクトメンバーの1人、名古屋大学大学院の渡邊誠一郎教授は、今回の挑戦を「ラグビーのワールドカップで2回のトライを遂げた選手が引退し、その後に突然フィギュアスケートをやって、10年後にオリンピックに出るようなイメージ」と語ります。高速で回転=スピンする小惑星への接近をスケートになぞらえました。

さらにもう1つは、「プラネタリー・ディフェンス」……地球を守ること。思い出すのが2013年2月、隕石がロシアのウラル地方に落下し、周辺のガラスが割れるなど4400棟以上の建物が損壊、1500人近くの負傷者が出ました。

このときの隕石は「チェラビンスク隕石」と名付けられ、大気圏に突入した際の直径は17mとされています。地球に比べたらほんのわずかな大きさとは言え、猛スピードで隕石として落下すれば、膨大なエネルギーが放出され、多大な影響を及ぼします。

直径30mを超えるような隕石が地球に衝突するのは、数百年に一度と言われていますが、このような隕石の正体はよくわかっていません。今回の挑戦はその正体に迫り、地球防衛に関わるような情報獲得につながることが期待されます。

直径100m未満の天体の近くを観測することができれば、もちろんこれは世界で初めての快挙です。宇宙開発については、米中を中心とした開発競争が「スターウォーズ」などと呼ばれますが、一方で、地球の平和を守るためのこんなアプローチはいかにも日本らしく、これもアリだと思います。

まずは12月6日のカプセルの無事帰還が大前提。JAXAの津田雄一プロジェクトマネージャは、9月2日のオンラインによる記者会見で、「カプセル分離と離脱噴射の一連の作業。(いちばん緊張するのは)12月5日の朝から夕方」と話しており、帰還までの精密な調整は直前まで続きます。しかし、その先にあるものはさらに深遠、目指す挑戦はさらにスケールの大きなものになりそうです。(了)

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