Go To トラベルで盛り上がる観光業も~未だに残る「地方との温度差」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年10月7日 17時45分
GoToトラベル東京追加関連・奈良 観光客らで賑わう奈良公園 =3日午後、奈良市
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月7日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。公明党の山口代表がGo To トラベルの期間延長を要請したニュースを受け、Go To トラベルによって盛り上がる旅行地の状況について解説した。
Go To トラベル~公明党・山口代表が期間延長を要請
政府の観光需要の喚起策「Go To トラベル」について公明党の山口代表は10月6日、政府与党連絡会議で来年度も利用できるよう政府に期間延長を要請した。Go To トラベルは当面、2021年1月末まで行われる予定である。山口代表は予算の積み増しについても要請している。
新行市佳アナウンサー)7月からスタートしたGo To トラベルキャンペーンですが、10月から東京発着の旅行も対象に加わりました。
佐々木)東京が入って一気に爆発的なブームになっています。福島民友新聞の記事によると、福島市内のある老舗の旅館では、11月上旬まで平日を含めてすべて予約で埋まったそうです。4~6月くらいがコロナの自粛時期で、8月まではみんな旅行をしていませんでした。その反動が9月くらいから出て来ているのではないでしょうか。私も9月中旬に音楽フェスの仕事があって八ヶ岳に車で行ったら、行き帰りの道路が大渋滞でした。その後のシルバーウイークでも、各地に人が溢れていました。
観光業以外の地方の人は「来て欲しくない」と思っている
佐々木)福島民報という福島のもう1つの新聞では、「Go To トラベルの旅行の範囲をどう思うか」というアンケートを取ったら、「全国に旅行してもいい」と答えた人は10%弱でした。残りは首都圏を除いた全国ならいいとか、県内含めて近隣ならばOKと言う人で、「旅行自体を控える」という人も2割いました。観光業の人は来て欲しいのですが、観光業ではない地方の人は来て欲しくないということですね。
新行)心配だと言う気持ちはありますよね。
未だに地方にある「県外お断り」~地方との空気感のズレをどう解消するか
佐々木)いろいろと出張で移動し始めているのですが、「県外お断り」という店が未だにあります。福井にも拠点を持っているのですが、知り合いがやっているカフェでは、「感染者がいる地域の方はお断りします」という張り紙を出しています。ここへは東京からは行けないなと思いました。その温度差は相変わらずあります。県外ナンバーで行くと微妙な扱いをされたりします。この前も、知り合いが仕事で地方に行って、路線バスに乗ろうとしたら運転手に「乗れません」と言われてトラブルになったそうです。そこで営業所の係員の人がやって来て、ようやくそれで乗ることができたそうです。Go To トラベルで盛り上がって、観光業の人が復活するのはうれしいのですが、一方で、地方との空気感のズレをどう解消するかということが悩ましいところだと思います。
新行)旅行に行ってもコソコソ過ごさなければいけないような。
コロナを機に「オーバーツーリズム」から「アンダーツーリズム」へ
佐々木)感染症の専門家は、「旅行することは問題ではない」と言っています。移動することで感染はしないけれども、行った先で大騒ぎしたり、新幹線で飲み食いしたり密になるのがいけないのです。滞在型の旅行をして、「町に住んでいる人の気分になって、静かに暮らす」というような旅行のスタイルがもっと広まってもいいと思います。コロナになる前にオーバーツーリズムが問題になりました。観光客が多過ぎて、京都では駅前のタクシーに何百メートルも行列ができたり、路線バスにスーツケースを持った観光客が多くて、地元の人が乗れないということがありました。そういう状況がやり過ぎなのではないかと、一部でアンダーツーリズムという言葉も出て来ました。アンダーツーリズムとは、デンマークのコペンハーゲンなどが打ち出したのですが、観光地に行くのをやめましょうと。「有名なところはありませんが、気持ちいい町だから滞在しに来てください」というものです。最近、キッチン付きの民泊の物件がありますよね。そういうところに泊まって、日本で言うと道の駅のようなところに行って野菜などを買い、キッチン付きの物件で料理して暮らすというようなことです。そういう新しいスタイルの旅が、コロナ前から徐々に盛り上がって来ています。コロナを機にそちらの方向に行くということも、いいのではないでしょうか。
リモートワークの定着で可能に
新行)たくさんの観光地をめぐるよりも、1つの地域との関わりを生み出すということですね。
佐々木)リモートワークが定着して、「ワーケーション」という休暇を取りつつ仕事もするということも出て来ました。ライフとワークをきっちり切り分けるのではなく、気持ちのいい方に混ぜて行くということです。Go To トラベルは盛り上がり過ぎなのですが、もう少し穏やかな旅の方向に進んで欲しいと思います。そうすると、地方との温度差も解消されるのではないでしょうか。
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