歌人・俵万智が語る“ホストが詠んだ短歌”の魅力「光源氏はチャラ男です」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年10月13日 21時50分
歌人の俵万智が、10月12日(月)のニッポン放送「垣花正あなたとハッピー!」内のコーナー「ゲストとハッピー!」に宮崎県の自宅からリモート出演。7月6日に出版された「ホスト万葉集」(発売:講談社/発行:短歌研究社)の制作秘話を語った。
夜の街への外出自粛という歌舞伎町最大の危機の中、オンラインで会議ができるアプリ「ZOOM」で歌会や勉強会を続けたホストたち。客との掛け合い、LINEでの営業など、短い言葉を駆使して日常を送るホストたちが詠んだ、短歌とは一体どういうものなのだろうか。選者の1人である俵がその制作の裏側を明かした。
俵万智:私は「ホスト万葉集」の選別をするだけじゃなくて、この歌会に参加していたんですよ。2年以上前からホストのみんなで歌会をして、そこでできた歌をみんなで選んだり、評しあったりするなかで言葉のトレーニングをしていくという。そこで1000首近く集まったので、1冊にしてみようということになりました。
垣花:それは、ホストクラブで実際に働いている方が集まった会なんですか?
俵:ホストクラブを経営している手塚マキさんっていう方が、「ホストたるもの短歌の一首も詠めた方がいい」ということを考えられて、定期的に出勤前のみんなが集まるという歌会を始めて。その会に、私と小佐野彈さん、野口あや子さんっていう歌人が加わって。ご指導っていうと僭越ですけど、楽しく短歌を作る時間を持ちました。
垣花:この本には、編者である俵万智さん、野口あや子さん、小佐野彈さんと手塚マキさんによる座談会「ホスト短歌の原点は、元祖チャラ男・光源氏です」も収録されています。ホストの方って言葉を上手に使った商売だと思うんですが、光源氏と例えるのは褒めすぎじゃないかなと思ったんですが?(笑)
俵:いやいや、光源氏がそんなに大した男じゃないんですよ(笑) これを言うとホストの方に失礼になっちゃいますけど、光源氏はチャラ男ですよ(笑) でも一人一人を真剣に愛して、和歌をもって女を口説いた男ですから。
垣花:そう考えると、繋がる部分がありますね。ちなみに俵さんは、自分で短歌を詠むのも好きだと思うんですが、人の作った短歌を聞いたりするのもお好きなんですね。
俵:大好きです。だって普通に会話していたら見えないその人の心の中を、ちょっと覗かせてもらうっていうことですから。歌は作るのも喜びですけれど、本当に(他の人の歌を)読むのは楽しいですね。
垣花:このホスト万葉集の中で、俵万智さんが気に入っている歌はあるんですか?
俵:そうですね。色々、面白い歌はあるんですけど、例えば手塚マキさんの「『ごめんね』と泣かせて俺は何様だ誰の一位に俺はなるんだ」っていうのは好きですね。お客様が、お金が続かなくて来れないとか、色々なことで泣かせてしまうこともある。それで、ホストっていうのは多くの人の1位にならないといけないんですよね。恋愛だったらたった一人の1位になればいいと。その恋愛とホストという職業の違いというか、苦しみ、葛藤を正直に詠まれてていいなぁって思いましたね。
自身で短歌を作るだけでなく、他人の短歌を読むのも好きという俵。垣花から「短歌を作る時って変に技巧を使ったりなどが照れ臭かったりするんですが」と問われると、「『5・7・5・7・7』に収めることが既に技巧ですから、心のままでいいと思いますよ。」と、誰でも気軽に楽しめる短歌の魅力を語った。
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