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凶暴な保護猫が心を許す少女の力とは?~猫は友だち! 猫の気持ちを尊重して!~

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月7日 21時50分

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【ペットと一緒に vol.219】by 臼井京音

ニッポン放送「ペットと一緒に」

犬と猫の保護活動を行うママ獣医師の娘のさわちゃんには、どんな猫も心を開くようです。

今回は、小学3年生のさわちゃんと、猫パンチや咬みつきで人を攻撃しがちな保護猫との交友のストーリーをお届けします。

 

性格が真逆な保護猫がやって来た

保護猫の医療ケアを含めた一時預かりを行っている、ペットスペース&アニマルクリニックまりも(東京都)院長の箱崎加奈子獣医師。その娘の8歳のさわちゃんは、なぜか猫とすぐに心を打ち解けられると言います。

以前に奄美大島の“ノネコ”と仲よくなったエピソードも紹介しましたが、現在、さわちゃんはとても手ごわいアメリカン・ショートヘアーのマドレーヌちゃんの人馴れに力を尽くしているそうです。

加奈子さん宅に滞在中のマドレーヌちゃん

3歳のマドレーヌちゃんは、2020年の5月末にブリーダー廃業現場からレスキューされて“まりも”にやって来ました。同じ繁殖場から保護された4歳のスコティッシュ・フォールドも到着しましたが、2匹は性格がまるで逆だったとか。

「スコは人懐っこくて甘えん坊、アメショは人間嫌い。保護直後、マドレーヌはひどい目ヤニとアンモニア臭で、下痢も続いていたんです。そこで検査をしてみると、猫コロナウイルス(※新型コロナとは関係ありません)などへの感染が判明したので、治療を行わなければなりませんでした」(加奈子さん)

繁殖崩壊現場から保護時のマドレーヌちゃん

その後、人馴れしているスコティッシュのゆなちゃんはクリニックで、マドレーヌちゃんは8月半ばから加奈子さんが自宅で面倒を見ることに。

ちなみに、“まりも”に残ったゆなちゃんは室内を自由に闊歩し、あっという間に患者さんやお客さんの人気者になったそうです。

クリニック内でくつろぐ保護猫のゆなちゃん

決して咬まれず交流を深める小学3年生

“まりも”から移動させるためキャリーバッグにマドレーヌちゃんを入れる際、加奈子さんはマドレーヌちゃんにガブリと咬まれて手が血だらけになったと言います。

「レスキュー当初は緊張していたせいもあってか、ちょっとは触らせてもらえたんですけれどね。我が家に引っ越して来てからも、環境の変化による緊張があったようで、少しはブラッシングもできたのですが、『触らないで!』という気持ちがマドレーヌの表情や全身からひしひしと伝わって来ました」(加奈子さん)

キャリーバッグのなかで警戒しているマドレーヌちゃん

そこで登場したのが、加奈子さんの保護猫ボランティア仲間から“猫の妖精(キャットシー)”とも呼ばれているさわちゃんです。

「さわは、ケージの外からマドレーヌに話しかけていました。『おやつをここに置くから、食べてね』などと。マドレーヌは、大人の私や夫などに見せるような緊張した表情を、さわには少しゆるめているように見えました。さわも、きっと目の前の保護猫に対して『怖い』とか『凶暴』というレッテルを貼らないし、緊張せずナチュラルな姿を見せていたからかも知れませんね」

こうして、さわちゃんはマドレーヌちゃんとどんどん距離を縮めて行ったそうです。

 

保護して5ヵ月目から変化が!

9月の末頃から、マドレーヌちゃんに少し変化が現れたと言います。

「まず、初めて猫ベッドに入って丸くなってスヤスヤと眠ったことですね。緊張が解けて来たのかも知れません」と、加奈子さんは振り返ります。

ベッドで初めて安眠

もうひとつは、「ニャン、ニャンッ」と鳴き声を出すようにもなったとのこと。

「少し不思議な鳴き方だったので、猫に詳しい方の知恵を拝借したいと思ってFacebookに動画を投稿しました。すると、耳や尾や四肢の動きと位置を観察した上で、私を信頼しかけているけれども、まだ怖さや不安があるようだと指摘されました。信頼関係が構築できつつあると知り、私にも勇気が湧いて来ましたね」

そう語る加奈子さんは、8月下旬からはマドレーヌちゃんに軍手をして手からごはんを与えていたそうです。

「シャーシャーと怖い顔で威嚇しながら、時には猫パンチも繰り出しますが、大人の手にも慣れてもらおうと思って頑張って来たんですよ。9月初めには素手であげるようにしていましたが、毎回咬まれていて……。でも、変化を感じ始めて頑張ろうと思えたんです」

軍手から進歩して素手でごはんを与える加奈子さん

少女の力で人との交友を楽しめるように

さわちゃんだけでなく、加奈子さんもマドレーヌちゃんの人馴れに力を注いでいた10月半ば、さわちゃんが病院に入院することになりました。入院中、さわちゃんはマドレーヌちゃんとビデオ通話をしたいと加奈子さんに伝えたそうです。

「さわは、『マドレーヌは私にしか心を開いていないでしょ? だから、私がいなかったら、マドレーヌは心配しているし寂しいはずだよね』と。

そこで、スマホを使いテレビ電話をさせると、さわは『ねえマドちゃ~ん、あのね、さわは善逸のグッズが欲しかったのに、パパってば伊之助のほうを買って来ちゃったの。あ、“鬼滅の刃”の話ね』などと、まるで友人にでも話しているかのようで……(笑)。マドレーヌは、無表情のまま画面をじっと見つめていました」

さわちゃんとマドレーヌちゃんのビデオ通話の様子

10日間ほどの入院を経て、再びマドレーヌちゃんのもとに戻ったさわちゃん。

「マドちゃん、ただいま。でも、マドちゃんは人が嫌いなんじゃなくて、そもそも人に触られることが苦手なんだよね。だから、あんまり近づき過ぎないようにするからね」と話していたそうです。

「あいかわらず、私の手にはパンチを振り落としてごはんを奪うという暴挙に出ますが、さわには心を開いている様子で楽しそうに遊んでいますよ。やっぱり、さわは“猫の妖精”なんでしょうか」と、加奈子さんは笑います。

ケージから出て来てさわちゃんと遊ぶのが日課

先日は、“まりも”のホームページの家族募集中コーナーに載っているマドレーヌちゃんを見て問い合わせがあったそうですが、加奈子さんは次のように答えたと言います。

「動物園のライオンやトラと暮らすイメージを抱いてください。人になついてはいませんが、人の存在には慣れて来ています。けれども、『いまはまだ怖いから、触らないで』とマドレーヌは言っているように感じます」

加奈子さんは獣医師として、病気の検査や治療で人がマドレーヌちゃんの体を触るときに、マドレーヌちゃんのストレスが減って治療もスムーズに進められるようになるのを目指していると語ります。

「さわの力を借りて、もう少しだけ人馴れに取り組みたいですね。さわが言うように、決して無理強いすることはなく、マドレーヌのペースに合わせながら……」

マドレーヌちゃんの運命の家族との縁は、さわちゃんの力添えで、きっとつながるに違いありません。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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