鐘つき堂から子猫の声~消防・お寺も巻き込んだ2日間の救出劇
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年11月11日 17時25分
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
「猫の恋」と言いますと、俳句の世界では「春の季語」になります。猫が甘ったるい声で「にゃあ~、にゃあ~ん」と鳴いている、あれが猫の恋です。
実際の猫の妊娠期間は、およそ2ヵ月。一度の出産で平均5匹の子を産み、約2ヵ月後に子猫が離乳すると、次の妊娠が可能になります。
その子猫たちも生後6ヵ月前後で繁殖可能な年齢に達するため、猫の繁殖サイクルはとても速いのです。タイミングが合えば、2匹のオスの子どもを同時に妊娠することもあると言います。
環境省は計算上、1匹のメス猫が3年後には2000匹以上に増えると試算しています。そのため、野良猫の殺処分問題は依然としてなくなりません。
「野良猫ゼロ・捨て猫ゼロ」を目指して、野良猫の保護、不妊・去勢手術、子猫の里親探しなどの活動をしているボランティアグループ『命にやさしいまちづくり ハーツ』の本部は、愛知県豊橋市にあります。代表の古橋幸子さんが、18年前にスタートした運動です。
「野良猫への無責任なエサやりはやめましょう」といった呼びかけを素直に理解してくれる人は少なく、「動物のための戦いは無理解な人たちとの戦いでした」と、古橋さんはふり返ります。
さて、今年(2020年)9月28日午後に、古橋さんの携帯が3度鳴りました。違う3人から、同じ内容の電話でした。
「お寺から、子猫の鳴き声がするんです!」
その3人のなかに、ハーツのメンバーの1人である鈴木さんがいました。
「一応、山口さんにも知らせたんですけれどね」
「そう、私もすぐに行くから、お願いね。頼んだわよ」
山口次朗さんは植木屋さんで、ハーツの中心メンバーの1人。猫のためなら仕事を途中で中断して、駆けつけてくれる人なのだそうです。
耳を澄ませてみると、子猫の鳴き声が聴こえて来るのは、確かに近所のお寺「豊橋別院」の鐘つき堂の天井付近から……。
「あそこなんだけどさぁ、あんな高いとこ、どうやって登ったんだろう?」
「いや、親が登って、あそこで産んだんでしょう」
必死に親を呼ぶ声。しかし、声はすれども姿は見えず。思い思いの想像をめぐらしながら、2時間ほど作戦会議をしました。もちろん、地下足袋姿の山口さんもいました。
「親が戻って来るかも知れないから、しばらく様子をみましょう」ということで、その日は解散。子猫の甲高い声が辺りに響いていたと言います。
さて、翌日の午後のこと。「親は無事に戻って来たかしら?」と、もう一度「豊橋別院」に行ってみると……何と、子猫はまだ鳴いていました。しかも、その鳴き声は前日と比べると、明らかに弱々しくなっています。
「天井板の上に潜り込んでる」「これはもう、レスキュー隊に頼むしかない!」
実は、古橋さんには10年以上も前の苦い思い出がありました。やはり猫のためにレスキュー隊を要請したところ、「人の命が優先なので」と断られた体験があったからです。
しかし、いまにも消え入りそうな子猫の声に、もはや一刻の猶予もありません。お寺に承諾を求めると「命がかかっていることですからね」と、鐘楼に登ることを快諾してくれました。
早速、レスキュー隊に連絡をすると、10年前とは対応が全然違いました。小さな消防車に3人の隊員が乗って、駆けつけてくれたそうです。みんなで鐘つき堂の天井付近に耳を近づけると、子猫は天井板の裏側で、か細い声で鳴いています。
「やっぱり、この板を破ってみるしかないな」と思ったとき、植木屋さんという商売柄、高所での作業が得意な山口さんが叫びました。
「この天井板、持ち上がるぞ!」
上げた板のすき間から天井裏を覗き込んだ山口さんが言いました。
「いた、いた! 黒と白の子猫がいるぞ~!」
しかし、ここからが大変でした。子猫の大好物、チュールでおびき寄せようとしてもダメ。猫用の捕獲機を設置して、1時間後に戻ってみてもダメ。最後の手段として、とうとう山口さんが天井裏に潜り込みました。
天井板を踏み破らないように気を配りながら、梁の上をほふく前進……こうして、ようやく1匹の子猫を保護しました。「鐘つき堂」で保護されたので、名前は「かねこ」と名付けました。
里親と巡り会える日まで、「かねこ」はハーツのメンバーの家でスクスクと成長しています。1匹の子猫のため、消防とお寺と植木職人、それを取り巻く人々が心をひとつにした2日間。寒い朝、何とも心温まる話ではないでしょうか。
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