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「川越いも 友の会」で“おいもの地位復権”目指したアメリカ人

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年12月23日 17時20分

写真

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

東京国際大学・名誉教授 ドゥエル・ベーリ(Barry Duell)さん

「♪石焼き芋~ 早く来ないと~行っちゃうよ~」……寒さが厳しくなると、恋しくなるのが「焼きイモ」ですね。

サツマイモの産地で知られる埼玉県川越市。この川越で「おイモの先生」と呼ばれているアメリカ人がいます。

東京国際大学・名誉教授のドゥエル・ベーリさん、71歳。自然豊かなオレゴン州に生まれたドゥエルさんが、日本へ来たきっかけは何だったのでしょうか?

「私の父は19歳で徴兵され、南太平洋で日本軍と戦いました。子供のころ、戦争体験を自慢げに話したがる父親が多いのに、私の父は一切しませんでしたね……」

ドゥエルさんとご家族(1991年当時)

ある日、手の届かない棚の上に赤い人形が置いてあるのを、好奇心旺盛なドゥエル少年は見つけます。じっと観察すると、その人形の胴体がちょっと壊れていて、文字のようなものが見えました。

「何だろう、あれは?」

後で知りますが、その人形はダルマで、船便の途中で壊れ、下地に使われていた日本語の新聞紙が見えていました。

「終戦後、父は進駐軍で赤十字関係の仕事をしていました。本当は禁じられていたのですが、日本人の友達ができて、帰国後も交流があったんです。そんな父の影響で私も日本に興味を持ち、『いつか行ってみたい』と大学で日本語を学び、23歳のとき、姉妹校だった国際商科大学(現在の東京国際大学)に短期留学しました」

おイモの「紙芝居」を披露するドゥエルさん

ホームステイ先の娘さんが、おやつに出してくれたのが、生まれて初めて食べたサツマイモでした。ジャガイモと違い、ねっとりとして甘みが強く、その美味しさにドゥエルさんは驚きます。

「実は、サツマイモも美味しかったんですが、そのサツマイモを出してくれた娘さんに恋をしてしまい、もっと日本を知りたくなったのが正直な気持ちなんです」

その恋は見事に叶って結婚。その後、2人の子どものパパに。ここからドゥエルさんの奮闘が始まります。

「いまでこそ『蔵の街』として観光客で賑わっていますが、私が川越に住み始めた70年代当時は、蔵がボロボロでほったらかしのまま、とても寂しい場所でしたよ」

『サツマイモまんが資料館』外観

活気もなく閉鎖的な川越に馴染めず、妻に愚痴をこぼすと、「だったらPTAの活動でもしてみたら?」と言われて小学校へ。PTAのお母さん達のなかで、背の高いアメリカ人のドゥエルさんはひときわ目立ちました。

さらに公民館での地域活動に参加し、「川越まつり」の山車を引くうちに、地元のお年寄りとも仲よくなりました。次第に、川越のよさを肌で感じるようになります。

そのよさの1つが「おイモ」だとドゥエルさんは思うのですが、「イモなんて自慢にもならないよ」と言われるほど、地元では“恥ずかしいもの”のように思われていました。こんな現状に、ドゥエルさんは立ち上がります。

地元の有志と共に「おいもの地位復権」を目指し、『川越いも 友の会』を発足。おイモの体験栽培、シンポジウム、お祭り、イモ料理講習会など、「川越いも」の啓蒙に務めました。

『サツマイモまんが資料館』のイベント参加者

こうした活動に刺激されて、「蔵の街」を中心に、お菓子専門店や料理店が増えて行きました。県外からも観光客が訪れるようになり、この活動が評価されて、1991年に「サントリー地域文化賞」を受賞。

「あのころはテレビや新聞など、毎日のように取材を受けて忙しかったけれど、いまはもう、その役割は果たしましたね」と言うドゥエルさん。

現在は『サツマイモまんが資料館』の館長を務め、さらには障がい者が働ける「干し芋工場」の建設など、まだまだ多忙な日々が続いています。

ドゥエルさんの好きな言葉を伺うと、返って来た言葉は「キュリオシティ」。「好奇心」という意味だそうです。その好奇心旺盛な輝く瞳で、いまも川越の魅力を探しています。

ドゥエル・ベーリ(Barry Duell)さん

■『サツマイモまんが資料館&川越いも学校』
住所:埼玉県川越市元町1丁目15-5 紋蔵庵蔵の街店2階
https://sweetpotato.info

■ドゥエル・ベーリ(Barry Duell)/サツマイモ文化研究家

・1949年生まれ。アメリカ・オレゴン州出身。
・1974年より、川越市に在住。
・1981年より、川越いもの研究をはじめ、国際的なイモ類学会にも参加。
・1986年より「川越いも友の会」会長を務める。
・著書に『アメリカ・サツマイモ事情』(1999年)などがある。
・東京国際大学名誉教授。

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