加賀温泉駅「のどぐろだし巻き玉子弁当」(1180円)~駅弁屋の厨房ですよ!(vol.24「高野商店」編(4))

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年1月7日 11時50分

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

683系電車・特急「サンダーバード」、北陸本線・加賀温泉駅

大阪からの特急「サンダーバード」が、加賀温泉駅に到着します。
「サンダーバード」は大阪を出ると、新大阪・京都・敦賀・武生・鯖江・福井・芦原温泉などに停車し、加賀温泉までは概ね2時間15分あまり。
この先は小松に停まり、大阪~金沢間は2時間30~45分程度で運行されています。
一部の列車は、金沢からIRいしかわ鉄道経由で七尾線の和倉温泉まで直通します。

高野商店社屋から加賀温泉駅を望む高野宣也社長

そんな加賀温泉駅を発着する列車をのぞき込んでいたのは、この地を拠点に駅弁を手掛ける「高野商店」5代目の、高野宣也(たかの・よしなり)社長。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第24弾は、この高野商店に注目しています。
北陸トンネルの開通に伴い、福井・今庄(現・南越前町)から県境を越え、石川・加賀市へと移ってきてまもなく60年、今回は加賀温泉駅での駅弁販売について伺いました。

山中温泉 総湯「菊の湯」

●冬にお客様のピークを迎える加賀温泉駅!

―開業50年を迎えた加賀温泉駅ですが、1年で最も賑わう時期はありますか?

加賀温泉駅は温泉へお越しになるお客様がメインですので、圧倒的に冬が多いですね。
かつて、加賀温泉駅だけでも1日500~600食は普通に売れていました。
正月にいたっては、1日1000食を超えることもありました。
当時は加賀温泉駅構内にも、小さな自社売店を設けていました。
そこにお客様が群がって、我先にと駅弁を取り合うような光景も見られました。

―加賀温泉駅へ移ってきたころは、積み込み駅弁最盛期だったとおっしゃっていましたが、当時の車内販売にまつわるエピソードはありますか?

かつて、北陸本線沿線の駅弁業者が出資して「北陸トラベルサービス」という車内販売のための会社をつくっていて、各社が同じ値段で幕の内弁当をつくったりしていました。
例えば、金沢で幕の内をつくって積み込み、売れたら加賀温泉で幕の内を積み込んで、また売れたら福井で積み込む……といったこともやっていました。
そのくらい、北陸特急の駅弁へのニーズが高かったということですよね。

485系電車・特急「雷鳥」、北陸本線・金沢駅(2007年撮影)

●昭和・平成から令和、大きく変わる「旅のスタイル」!

―加賀温泉郷というと、団体のお客様も多かったでしょうね?

企業の団体慰安旅行も沢山行われ、加賀温泉郷の各旅館も大型化が進んでいました。
私が会社に戻ってきた約25年前もまだ団体旅行はあって、忘・新年会のお客様が40人ほどでお越しになって、40人みんな、同じ土産袋を提げて特急に乗車されることがありました。
駅弁40個、ビール40個をまとめて、駅まで持って行った記憶がよみがえります。
あと、特急で大勢のお客様が着くのを見ると、急いでつくって持って行くこともありました。

―正直、「団体旅行」って、まだあるんですか?

いまもゼロではありませんが、幹事さんも、「各自でみんな好きなものを買って」と言うだけで、お求めになるものも、みんなバラバラですよね。
まして、このコロナで、団体で動くことが推奨されなくなり、せいぜい家族止まり。
そうなると、お求めになる駅弁は、もう千差万別ですね。
昔はとにかく「幕の内」でしたが、いまは各自の趣向性が高いチョイスになりました。

運行終了から20年の485系電車・特急「白鳥」、東海道本線・大阪駅(2001年撮影)

●列車の高速化が変化をもたらした「駅弁」

―積み込みが減り、旅も集団から個人へ、潮目が変わってきたのは、どの時期ですか?

ちょうど、北陸特急が高速化して、大阪~金沢間が約2時間半になったころからです。
まず急行がなくなって「雷鳥」になり、雷鳥は「サンダーバード」になって速くなりました。
新潟発着の「雷鳥」や青森発着の「白鳥」といった長距離列車は、駅弁がよく売れていたんですが、これらも金沢・富山発着の列車に代わりました。
加えて、駅の開発が進んで、売店やコンビニが増えたことも追い打ちをかけました。

―いまや車内販売も希少な存在となりましたが、変わってきたことはありますか?

2010年代に入って、JR全体で、車内販売は新幹線に集約される方向性となりました。
車内販売が減って、駅での販売重視に変わったことで、駅弁そのものの地域の特色性が強まってきた傾向もあります。
車内販売メインですと、どうしてもお客様が駅弁を選べる時間が限られますし、売る方も最低限、幕の内があればいいとなってしまいますから。

(高野商店・高野宣也社長インタビュー、つづく)

のどぐろだし巻き玉子弁当

幕の内弁当から、より地域の特色が強い、個性的な駅弁へ。
2010年代半ば、有名スポーツ選手の発言をきっかけに一気に注目が集まった日本海の海の幸といえば、「のどぐろ(赤ムツ)」です。
高野商店でもさまざまなのどぐろを使った駅弁を積極的に開発していて、「のどぐろだし巻き玉子弁当」(1180円)もその1つです。

のどぐろだし巻き玉子弁当

【おしながき】
・炊き込みご飯(石川県産コシヒカリ使用)
・のどぐろ
・だし巻き玉子

炙りのどぐろ

のどぐろだし巻き玉子弁当

塩麴と照り焼きという2種類の味付けで炙ったという、高野商店ののどぐろ。
自慢のたれが塗られたのどぐろはいいテカリで、香ばしさと相まって食欲をそそられます。
脂がのって濃厚な味わいが楽しめるのどぐろと、優しい味わいのだし巻き玉子が一緒に、炊き込みご飯の上に載ったことで、いざ口に運べば心地よい味わい。
温泉帰りに小腹を満たすのにちょうどいい、程よい量なのも嬉しいですね。

683系電車・特急「サンダーバード」、北陸本線・加賀温泉駅

昭和45(1970)年10月、「加賀温泉駅」となって50年あまり。
高野社長によると、いまでも百貨店の実演販売に行くと、大聖寺時代に駅弁を購入した年配のお客様から、往年の大聖寺駅の思い出話をしていただくこともあると言います。
なお1/7から始まった京王百貨店新宿店「第56回 元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」にも高野商店は、「のどぐろと香箱蟹と甘えびの三昧弁当」で参加中(1週目のみ)。
お近くの方は、買い物がてら、駅弁屋の技を堪能されてみてはいかがでしょうか。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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