“日本が学ぶべき”は中国をうまく追い返した「2014年のベトナムの喧嘩の仕方」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年3月23日 17時40分
南シナ海・西沙(英語名パラセル)諸島付近で、ベトナム船に向けて放水する中国海警の船。ベトナム当局が5月7日、公表した(南シナ海・西沙(英語名パラセル)諸島付近)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月23日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。南シナ海に中国漁船220隻が集結したニュースについて解説した。
南シナ海に中国漁船220隻が集結~フィリピン政府が抗議
フィリピンが領有権を主張する南シナ海の海域にあるサンゴ礁周辺に、中国漁船およそ220隻が集結しているのが見つかった問題で、フィリピン政府は3月21日、中国に対し外交ルートを通じて抗議したことを発表した。
飯田)スプラトリー諸島のサンゴ礁周辺ということですが、写真を見ると漁船と言ってもかなり大きいですよね。
奥山)壮絶な感じの写真です。
飯田)それが横1列に並んでいる。これはもう艦隊行動ですよね。
奥山)そういう組織的な動きであることは間違いないと思います。こういう事態を、日本は教訓として見なければならないと思います。このような準軍事的な動きに対して、国はある程度、対処の仕方を考えておかなければならないと私は常に感じています。フィリピンはこういう形で抗議するということで、穏便に終わらせるのかも知れませんが、私はそういう対処は好きではありません。
ベトナムが中国をうまく追い返した2014年の例~喧嘩のステージを変える
奥山)今回と同じようなことを、2014年にベトナムがうまく追い返した例があります。これをご紹介して参考にしていただければと思います。
飯田)2014年のベトナムの例。
奥山)2014年、ベトナム沖のカムラン湾に、中国が石油掘削装置(リグ)を設置したのです。そのときベトナムは、27隻ほどのベトナム海軍のすべての船を出して抗議行動をしました。それに対して、今度は中国が200隻近くの大量の船を出して来たのです。ベトナム側は、海では勝てないことを早々に悟り、喧嘩のステージを変えました。目の前の海では勝てないと思ったら、戦法を変えて左に行く。左に行って何をしたかと言うと、陸の方に軍隊を出したのです。ベトナム軍を中国との国境付近に出し、それだけでなく、反中デモを行いました。突然、ベトナムの愛国者たちが出て来て、中国系のお店や中国人が経営していると思われる工場を焼き討ちにして回りました。中国と対抗するために、焼き討ちするのがいいこととは思いませんが、「ステージを変えてさまざまな方向で対抗すること」を日本は覚えておかなければいけません。日本もベトナムほどではありませんが、尖閣で「ここでは無理だ」と思ったら、別のステージで対抗できるようにしておかなければならないのではないかと、常々感じます。
日本は「ステージを変えるという喧嘩の仕方」を覚えなくてはならない
飯田)日本は、いまいちばんホットな正面の話にフォーカスが行き過ぎる感じがありますかね。
奥山)日本は目の前のことにフォーカスを当てて、一生懸命に対処することをしがちです。尖閣でも、日本側が1歩踏み出して「実効支配を固めるためである」と言って誰かが上陸したとなると、2010年には中国漁船がぶつかって来た。あのときは、レアアースを中国側が止めたのです。そして中国国内にいる日本の方々が拘束されました。中国は目の前のことだけではなく、別のステージでやって来るという喧嘩の仕方をすることを、我々は覚えておかなければなりません。日本も別のやり方で、それに対抗する経済的手段や、EUに経済制裁を頼むなど、そういう喧嘩の仕方を覚えなければなりません。
経済を中華系に握られているフィリピン
飯田)フィリピンも2013年~2015年くらいに国際仲裁裁へ提訴して、国際法の判断では、「スプラトリー諸島周辺の埋め立て地はフィリピンの領有であることは間違いない」というところまでの展開はしました。しかし、それ以上ができなかったのですね。
奥山)それができず、「中国と仲よくやろう」ということになってしまいました。中国側に折れるということは、「これをすれば相手は折れる」とわかってしまい、中国はさらに上乗せしてやって来ます。
飯田)フィリピンのなかにも中華系の財閥がかなりあります。
奥山)経済は中華系の人が握っているという現実もあります。
飯田)東南アジア諸国はそういうところが多いですね。
奥山)電力会社には、すべて中国系が入っています。東京電力が中国系であることなど、私たちは考えられませんが、同じような状況がフィリピンでは起きています。
飯田)産業の首根っこを掴まれているのですね。
奥山)そうです。そうするとなかなか対抗しづらく、脅しに弱くなってしまうのではないでしょうか。
中国に対抗できる手段を日本政府は考えているのか
飯田)重要な駐屯地や社会インフラの発電所周りの地域の売買を、一部規制する法案が出て来ています。こういうところの守りを固めておかなければいけませんね。
奥山)そこはアメリカも苦慮している場面はありますが、日本は遅きに失したところがあります。特に経済面でやられることを私は危惧しています。このまま行くと、脅しに屈してしまうという状況が出て来るのではないかと非常に心配です。
飯田)アメリカとカナダが経済面でファーウェイに対抗していますが、カナダ人の方々が中国国内で拘束されてしまっています。
奥山)実力がなければならないのです。カナダも結局、アメリカに泣きつくくらいしかできません。カナダ人の拘束の話は、今回、アラスカでの米中外交トップ会談のときに出て来ています。中国側はそのタイミングでカナダ人2人を裁判にかけると言い、実際に裁判にかけて3時間ほどで判決が出たようです。外交も喧嘩の部分はありますから、1つの喧嘩の作法として、何か対抗できる手段を日本政府は考えているだろうかと、いつも心配しています。
中国が狙うのは「日本側が先に手を出す状況」をつくること
飯田)一方で、カナダとは比較にならないほど、中国には日本のビジネスマンが駐在しています。
奥山)そういう人たちを、うまく帰せるようにするなどの法的措置を持っておかなければならないのではないかと、この手のことが起こると感じます。
飯田)柔らかい脇腹を狙って来ますね。
奥山)彼らが狙っているのは、「日本側が先に手を出す状況をつくること」です。シミュレーションゲームを向こうもよくやっていますが、そのシミュレーションを見ると、必ず日本側が先に手を出すことになっています。まず日本に手を出させる状況をつくりますので、日本側は絶対に先に手を出してはいけません。それをしてしまうと、相手の望む通りです。その前の部分での、エスカレートしない形で、どこか別のところで対抗して行くことを日本も備えておかなければいけません。そのためには、経済的に「これをやってはまずいですよ」ということや、逆に「ジェノサイドを認定しますよ」ということをやって行かなければならないのではないでしょうか。
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