バイデン政権の100日を点検する
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月11日 11時40分
就任式で宣誓後、手を振るバイデン米新大統領=20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月9日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。4月30日で就任から100日を迎えるバイデン政権について、ワシントン在住のキヤノングローバル戦略研究所主任研究員でスティムソン・センター東アジア共同部長の辰巳由紀氏を電話ゲストに迎えて解説した。
バイデン政権~就任から間もなく100日間
アメリカのバイデン大統領は4月30日で就任から100日を迎えるため、アメリカのメディアでは「The First 100 Days」という見出しがさまざまなところで見られる。ここではバイデン政権の100日を点検する。
飯田)ワシントンからキヤノングローバル戦略研究所主任研究員でスティムソン・センター東アジア共同部長の辰巳由紀さんにお話を伺います。電話がつながっております。辰巳さん、よろしくお願いします。
辰巳)よろしくお願いします。
飯田)バイデン政権の100日、ざっくりとしたテーマではありますが、まずはここまでどうご覧になりますか?
コロナ対策と景気対策が中心に
辰巳)内政問題としては、「1にコロナ、2にコロナ、3、4がなくて5にコロナ」という感じで、コロナの感染拡大をどう阻止して行くかということと、ワクチンの全米での流通をできるだけ加速させる。そして、それに並行して景気刺激策です。コロナウイルスでアメリカ経済も打撃を受けました。いちばん影響を受けている外食産業や旅行業界への支援、または国民1人1人への補助金などを含めた景気対策が、これまでの中心になっていました。
飯田)やはりコロナですね。
辰巳)ワクチンの流通が少し見えて来て、いよいよ本丸の国内経済の立て直しということで、大規模なインフラ投資計画をこの間発表したばかりです。かなり規模が大きいもので、これが実際に法案になって議会で成立するかどうか、バイデン政権の手腕が試される側面になると思います。
同盟国重視が強く表れている
辰巳)外交面でも、トランプ政権時代に傷ついた同盟国との関係の修復ということで、国防長官と国務長官が2人そろって、最初に日本にやって来ました。そこから韓国に行き、中国に足を伸ばさず、2人ともその地域を離れました。中国側が逆に追いかけるようにアラスカ州まで出向いて、初めての高官の会談が行われたということから見ても、同盟国重視をできるだけ前面に打ち出して行くという姿勢が、非常に強く表れた約100日だったのではないかと思います。
トランプ政権の影響が残る国内
宮家)外交よりも内政を固めたいという感じなのでしょうか?
辰巳)そうですね。国内的にもトランプ政権の影響がずいぶん残っています。共和党内でもその影響力が残っているところがあり、妥協しづらい雰囲気があるので、まず国内を建て直さなくてはということはあると思います。2022年には中間選挙ですから、そこも見据えていろいろな対策を打っているという感じです。
議論が分かれる移民問題~すぐに移民改革法案が成立されることは難しい
飯田)国内の話のなかで、移民の人たちの話がここのところテーマになっているように見えるのですが、その辺りはどうですか?
辰巳)コロナと移民と、トランプ政権の残滓をどうケアするかということに力を割いているように見えます。移民については、不法移民とはいえ、2000人の子どもを親から引き離すということがトランプ政権で行われたのです。その状況を是正して、まず子どもを親の元に返すということ、それから移民法案の改革。いままでできていなかったものを、これを機に腰を据えて頑張ろうという感じです。しかし、この問題はアメリカのなかでも議論が分かれるところですので、すぐに国内でコンセンサスに持って行って、大きな移民制度改革法案が成立するという綺麗な流れにはならないだろうと思います。
トランプ政権前に戻ったホワイトハウスとメディアの関係
宮家)もう1つ聞きたいのですが、トランプ政権時代にはメディア、特にリベラルなメディアと喧嘩になったではないですか。いまのアメリカのメディアの主流はバイデン政権をどのように報じていますか?
辰巳)主流メディアの間では、普通の日常が帰って来たということで、安心感が流れています。政権が発足してからすぐに報道官の定例記者ブリーフィングも再開されました。そのため、リベラル系のメディアに対しても、保守系のメディアに対しても、報道するネタはトランプ政権のときよりもはるかにある。政権側からも情報が定期的に出て来るので、そこに関してフォローしやすい。ホワイトハウスとメディアの関係は、トランプ政権前に戻った感じです。
アメリカのシフトは東アジアに変わった
飯田)日本とどうタッグを組んで行くかというところですが、最初に国務長官や国防長官が日本に来るというのは、シフトは東アジアに変わって来たと見ていいのでしょうか?
辰巳)そう思います。ただ、中東でアフガニスタンからどう撤退して行くか、規模を縮小させるかという点がまだ問題点として残ります。しかし、国務長官と国防長官が一緒にやって来るというのは、日程の調整だけでも大変な作業なのです。その大変な作業を最初に日本と韓国に来るためにやるというのは、中国を明確に意識してのことだと思いますし、その点でも、この地域での日本との同盟、韓国との同盟を重視するということを強く打ち出しています。
日米首脳会談では気候変動、排ガス規制の問題の他、台湾と中国の問題も議題に
飯田)菅総理大臣がワシントンを訪れてバイデンさんと会談をします。これはどういう展望が描けますか?
辰巳)メディアに出ているところでは、議論の対象が気候変動の問題、排ガス規制問題となっています。どこまで突っ込んだ議論がされるかわかりませんが、3月に国務長官と国防長官が日本に来たときの外務・閣僚防衛協議のあとの共同声明のなかで、初めて台湾に触れています。台湾、中国に関しても、これまでになくはっきりとした踏み込んだ発言を共同声明のなかでしていますので、対中政策のすり合わせ、それから台湾へのアプローチのすり合わせは当然、行われるのではないかと思います。また、北朝鮮問題のすり合わせもこの地域では外して語れない話なので、入って来るだろうと思います。
飯田)なるほど。辰巳さん、どうもありがとうございました。
辰巳)ありがとうございました。
バイデン大統領が初めて対面で会談する首脳が菅総理であるということの意味
飯田)日米首脳会談は世界中が注目するものになるということでしょうか?
宮家)そうですね。アメリカの新しい大統領が、初めて対面で会談する外国首脳の相手が日本であるというのは、隔世の感がありますよ。安倍さんはトランプさんのところに就任前に行きましたけれども、あれは例外中の例外です。公式の形で政権初の首脳会談が日米になるというのは、私も40年くらい日米関係を見て来たつもりですが、なかったことです。やはりアメリカの外交政策の優先順位が変わってしまったのだと思います。
飯田)それは日本にとってはもちろんありがたいこともある一方で、それだけここが世界中の緊張のポイントにもなっているということでもあります。
宮家)そうです。そして、日本がやるべきことをやらなくてはいけない時代が本当に来たということです。
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