秘密裏にイラク戦争を計画~ラムズフェルド元米国防長官が死去
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年7月2日 21時30分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月2日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。6月29日に死去したドナルド・ラムズフェルド元米国防長官について解説した。
ドナルド・ラムズフェルド氏
1975年~1977年、そして2001年~2006年と2度にわたってアメリカ国防長官を務め、9.11同時多発テロの対応やアフガニスタン、イラクの2つの戦争を主導したドナルド・ラムズフェルド氏が6月29日、アメリカ西部ニューメキシコ州の自宅で亡くなった。88歳だった。
飯田)国防長官を2度もやられた。
宮家)戦後、特に冷戦時代から冷戦明けのころの共和党の主流にいた人です。やるべきこともやったけれど、やらなくてもいいことをやってくれた人でもあるかも知れません。少し辛口で申し訳ないですが。
9.11後、イラク戦争への流れをつくる
宮家)ラムズフェルドさんは、若くして政治家になって、フォード政権では40歳そこそこで首席補佐官をやるのです。そして43歳で国防長官になった。そのころは冷戦時代でしたから、いい意味でも悪い意味でも、対外政策は慎重だったと思います。1つ間違えたらソ連と核戦争になるわけですからね。国防長官というのはそういう立場だったのです。
飯田)当時は。
宮家)1回目はそれでよかったと思いますが、2回目は2001年で、9.11が始まったときの国防長官でした。ブッシュさんの息子の方が大統領だったけれども、それよりもチェイニー副大統領の力が強くてね。
飯田)『バイス』という映画がありました。
宮家)1991年の湾岸戦争でクウェートにサダム・フセインが入った。あのあとアメリカは、クウェートからはイラク軍を追い出しました。けれども、臭い匂いは元から絶たなくてはダメだということで、当時は「バグダッドまで行け」という議論もあった。でも当時、お父さんのブッシュさんはイラク侵攻はしなかったわけです。当たり前ですよ。あんなところに入って行ったら大変なことになりますからね。ところが、その問題をずっとラムズフェルドさんとチェイニーさんは考えていて、「今度何かあったらイラクは絶対に叩き潰す。サダム・フセインだけは生かしてはおかない」と、こういうことだったのだと思います。
飯田)ラムズフェルドさんとお父さんのブッシュさんは政敵同士だったという話がありますよね。ものすごく仲が悪かった。
専門家の言うことを聞かずイラク戦争を計画
宮家)そうなのです。というわけで、ラムズフェルドさんが9.11のあと、アフガニスタンに攻撃をする。アルカイダの拠点だったので、これはある程度わかります。でも、そのあとイラク戦争までやるというのはいかがなものかと思います。しかもあのとき、いまでも覚えていますけれども、ラムズフェルドさんは、ほとんど中東の専門家の言うことを聞かずに戦争計画を準備しました。その結果、大失敗をするわけです。できるだけ量の少ない部隊・装備でイラクに行けばいいと。
飯田)精鋭の特殊部隊を入れるというようなことでした。
失敗であったイラク戦争~その責任はドナルド・ラムズフェルド氏に
宮家)そうすれば、イラク人がアメリカ軍を解放軍として迎えてくれるから、全てがうまく行くと。うまく行くわけがないではないですか。中東の専門家であれば、絶対にそんなことは言わないですよ。国防総省のなかでも、秘密裏に作戦をつくったと言われています。そして案の定うまく行かなかった。イラク戦争は、戦争自体が間違っているとまでは言いませんが、そのあとのイラク占領計画は完全に失敗だったと思います。そのときの責任はドナルド・ラムズフェルドさんにないとは言えません。
飯田)失敗した責任は。
宮家)ジョージ・W・ブッシュ元大統領は彼のことを、「難しい決断の前にも決して怯まず、責任から逃れることはなかった」と言っていますが、つまり「責任があった」ということですよね。ブッシュさんの頭越しで物事が決まって行ったことがあるのではないかと思います。その意味では、非常に残念ではありますが、当時のアメリカを象徴するような人でした。
飯田)後世、歴史家が判断するところでもあるわけですね。
宮家)そうなるだろうと思います。
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