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G20財務相会合「最低法人税率15%以上」で何が変わるのか

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年7月12日 17時35分

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20カ国・地域(G20)外相・開発相会合の開催地イタリア南部マテラ

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月12日放送)に中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が出演。7月10日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議について解説した。

20カ国・地域(G20)外相・開発相会合の開催地イタリア南部マテラ=2021年6月28日 AFP=時事 写真提供:時事通信

合意による新たなルール~15%以上の最低税率と「デジタル課税」の導入で一致

イタリア北部ベネチアで開催された20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は7月10日、共同声明を採択して閉幕した。法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけるため、「15%以上」とする最低税率の導入で合意した他、巨大IT企業を念頭にグローバル企業の税逃れを防ぐ「デジタル課税」でも一致した。

飯田)日本からは麻生副総理兼財務大臣と日銀の黒田総裁が出席しています。画期的だという話が出ています。

野村)国際課税のルールについては、大きく分けて2つ合意ができました。1つは「世界の法人税の最低税率を15%以上にしよう」ということに決まった。それから、デジタル課税と言って、GAFAと言われるグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのような会社に対して、課税の仕方を新しいものに変えようということで合意しました。

拠点がなくても、売り上げに対して一定率で課税する~巨大IT企業からも税金が取れるようになる

野村)本来なら税収があるはずのものが、十分取れていないという財政上の危機感がG20のなかに共通してあるということです。1つは、GAFAのような巨大IT企業に対するデジタル課税です。いままで、税金をかけるのは、「工場や店舗など、自分の国に拠点があること」が条件になっていました。ところがIT企業の場合は、そういうものがないのに営業だけが行われていて、利益だけがそこで上がっているという状態なのです。拠点主義の考え方からすると、課税できないということで、儲けだけを持って行かれて、税金を払わないことが問題になっていました。そこで、拠点主義をやめて、「拠点がなくても、売り上げに対して一定率で課税する」ということになるわけです。これである程度、巨大IT企業から税金が取れるようになる。ここが1つ大きなポイントなのです。

GAFAのロゴやアイコン GAFA売上に10%罰金=2020年12月15日 写真提供:共同通信社

一律15%よりも低い課税のときは、その差額分は本国の方で取れる~「タックスヘイブン」で利益を上げることで税金を安くしようとする人たちの思惑を挫く

野村)もう1つは、わかりにくいのですが、「法人税を15%で一律」と言っているのですけれど、世の中には「タックスヘイブン」と言われている場所があります。ここでビジネスをやると、「税金が安いので有利だ」という場所をつくって、国際的な企業を誘致している国がたくさんあるのです。例えばAという国であれば30%の税金がかかるところを、ある場所では10%で済むということになれば、みんなそちらに行ってしまうではないですか。

飯田)そうですね。

野村)そうすると、Aという国は、税金がまったく取れなくなってしまうという問題があるのです。これについては、日本でもこれまで「タックスヘイブン対策税制」と言い、「日本で上がった利益をタックスヘイブンでつくっている会社に流して、そちらで利益が上がったように見せている場合については課税する」という制度をつくっていたのです。それは合算して国内でということなのですが、それでもタックスヘイブンできちんとビジネスをやっていると、取れないのです。

飯田)一応は人がいて、書類をつくって、などをやっていると。

野村)「そこできちんと上がった利益だから、取れない」ということになってしまう。それを今回は「一律15%よりも低い課税のときは、その差額分は本国の方で取れてしまう」という課税にしようとしているわけです。これまでのタックスヘイブン対策税制では取りこぼしているものについて、タックスヘイブンで利益を上げることで税金を安くしようとする人たちの思惑を挫くことが狙いなのです。

今後はタックスヘイブンがなくなって行くことに

飯田)各国が誘致合戦で、「この条件ならどうか」という税金の割引を相当やっていて、利益をいろいろな国を回して持って来るというようなことを、よく「Double Irish With a Dutch Sandwich(ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ)」と言います。アイルランドに2つ会社をつくりながら、オランダの会社に回すようなことをやるというのも聞きますが、こういうことが実質できなくなるのでしょうか?

野村)そうですね。それぞれの国が、タックスヘイブンをやっても意味がなくなるわけです。そこに置いてビジネスをやっても税金が変わらないということになると、わざわざそこに行ってやらなくても、同じ税金がかかることになるので、実際は何が減るかというと、まずタックスヘイブンが減って行く状況になるわけです。そういう方向に向かって行く可能性があります。今回合意したことによって、G20としては、これまで取りこぼしていた税金を取れるようにしようと。そして財政を安定させようということです。

飯田)アメリカは取りっぱぐれている部分がかなりあるでしょうから、賛成に回るのはわかるのですが、イギリスはタックスヘイブンをうまく使っている国です。よく賛成しましたね。

野村)やはりそこは国際的な流れもあるし、「オフショア」と言われている、近隣に税制上、優遇措置をする場所をつくっているのですが、国内の方でのいろいろな「特区」のような形になっている部分もあります。それをうまく組み合わせながら自分たちの国益を追求することは間違いないので、損はしないということだと思います。

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