台湾・蔡英文氏と中国・習近平氏の演説が互いに「対立色を抑えた」その背景
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年10月11日 17時35分
台湾の双十節(建国記念日)祝賀式典で演説する蔡英文総統=10日、台北(中央通信社=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月11日放送)に国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が出演。「双十節」の式典で行われた台湾・蔡英文総統の演説について解説した。
台湾・蔡英文総統が「双十節」の式典で演説
台湾の蔡英文総統は10月10日、台湾の建国記念日に当たる「双十節」の式典に出席した。「台湾の人たちが圧力に屈するとは決して思わないで欲しい」と演説を行った。蔡英文総統は中国による軍事的脅威を踏まえて自己防衛能力を強化し、自由と民主主義を守る決意を改めて表明している。
飯田)直前に習近平氏も演説を行っており、それに対する返答の要素もあるとされていますが、一連のやり取りについて、どうご覧になりますか?
2通りの見方がある習近平氏と蔡英文氏のお互いの演説
神保)10月9日~10日にかけて、中国では「辛亥革命110周年記念日」、台湾の「双十節」は建国記念日に当たります。それぞれのトップが演説するという機会があり、それを受けていろいろと報道されたのですが、この報道のされ方が2通りあったと思います。
飯田)2通り。
神保)1つは対決色が深まったということです。習近平国家主席は「祖国の完全統一という歴史的任務を必ず実現させる」と強い言葉を使っていて、対する台湾の蔡英文総統は「圧力には屈しない」と言っています。これについて「激しい対立だった」という見方があります。確かに先週は台湾の空域に多数の中国軍機が侵入するなど、かなり緊張が高まった部分はあると思います。
習近平氏「平和統一」、蔡英文氏「現状維持」 ~お互いに対立色を抑えた演説
神保)他方でもう1つの見方を紹介したいのですが、今回、「中国と台湾の両者はかなり対決色を抑えた」のだという見方があります。私もこちらの見方を取っています。習近平サイドにとって、「台湾統一」というのは常に言及すべき課題です。ただ、ここ2年ほど、「我々は武力行使というオプションを放棄していないのだ」とか、「台湾の独立を断固粉砕する」というような激しい言葉を使っていたけれど、今回はこのような言葉には触れず、むしろよく読むと、「平和統一」という言葉を使っています。
飯田)平和統一。
神保)台湾側も「圧力には屈しない」と述べる傍らで、我々の主張は「現状維持だ」と。「両岸関係の緊張緩和を期待する」と言っているのです。蔡英文さんがいる民進党の綱領によると、「いずれは台湾の独立を目指す」ということなのですが、今回の演説のなかでは特に言っていないのです。
飯田)現状維持と言っている。
神保)そうなのです。評価としては、トーンを抑えたのではないかと思います。
スイスで行われた米中高官協議以降、台湾空域に中国軍機は飛んでいない
飯田)台湾の防空識別圏に中国軍機が飛んだという問題の傍らで、スイスでは米中の外交トップが会うということがありました。
神保)6日にスイスで米中高官協議があり、ジェイク・サリバン大統領補佐官が会っています。米中貿易協定をもう1度見直そうという話と、大事なポイントは、年内にオンラインで米中首脳会談を開催することが決定しています。そうするとお互いのトップを守らなければいけないということで、対決ムードを和らげる意図があったのではないかと思います。確かに6日~7日以降、台湾空域に戦闘機は飛んでいません。
飯田)そのようですね。
面子を保つため、その前に中国軍機を一気に飛ばした
神保)もし米中首脳会談のスケジュールが年内に決まってしまえば、その予定を惑わすような行動を人民解放軍は取りにくいので、その前に一気に飛ばしたのではないかと思います。
飯田)なるほど。抑える前に1度強く出ておくと。
神保)その証拠に、ピタリと止まりましたからね。もちろん、これからも起きる可能性はありますが、面子を守るということを重視したやり方ではないかなと思います。
飯田)アメリカ側も6ヵ国ぐらいの大きな演習を行い、最後にドカンとぶつかっておいて、そこから引いて行くという感じですか?
神保)年末にかけて、トーンは穏やかになるのではないでしょうか。
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