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子宮頸がん予防 HPVワクチン積極的勧奨 8年前の中止の「ボタンの掛け違い」と再開後の「これから」

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年11月24日 18時25分

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 子宮頸がんワクチンの接種を受ける女性=9日、横浜市

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月24日放送)に川崎市健康安全研究所・所長の岡部信彦氏が出演。HPVワクチンのこれまで、そしてこれからについて訊いた。

子宮頸がんワクチンの接種を受ける女性=2021年11月9日、横浜市 写真提供:共同通信社

原因がワクチンかどうか、科学的に実証することが難しい

子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を予防するワクチンについて、積極的勧奨の再開が11月に決定された。積極的勧奨が中止された8年前の様子をよく知る川崎市健康安全研究所・所長の岡部信彦氏に、HPVワクチンのこれまで、そしてこれからについて訊いた。

飯田)HPVワクチンに関して、日本では小学校6年生~高校1年生までの女性が無料で受けられる定期接種がありますが、8年前に国は積極的勧奨を差し控える決定を下しました。その2013年6月、差し控えを提言した副反応の検討部の委員でした岡部さんにお話を伺いました。当時について、そして再開まで8年かかったことに、大変心を痛めていらっしゃいました。

飯田)積極的勧奨が中止になってから8年の歳月が経ちます。これほど時間が経つとは思って正直思っていらっしゃらなかった。

岡部)経つべきではないと思いました。

飯田)べきではない。

岡部)予防接種ワクチンの難しいところは、どうしても、全体を考えた上での判断をせざるを得ない。何か健康被害が生じてしまった場合、科学的にワクチンが原因なのか、あるいは違うのかどうかが言いにくい、わかりにくいことがほとんどなのです。それを検証するには、膨大なエネルギーと費用がかかります。そこまで行かないうちに話が拗れてしまったようなところもあります。

因果関係があってもなくても支援は必要

岡部)しかし、因果関係があろうがなかろうが、社会的にも注目を浴びたり、本当に気の毒な状態になっている方もいます。そこに対しては、きちんと支援をするという意味でのフォローが必要だと思います。

飯田)金銭的なものも含めて。

岡部)「取り戻す」ということはできないのです。できるのは医学的なサポートや金銭的な支援、あるいは差別にならないような働きかけが必要だろうと思います。

がんはすぐに症状が出るわけではないので、接種を受ける方も勧める方も遅らせがちになる

飯田)築地市場が豊洲に移転するときも思ったのですが、「安全」と「安心」の話に入って来ると、「安全」の部分は科学的に話ができるし、100%は難しいかも知れないけれど、ある程度の蓋然性は証明できる。ただ、「心」の部分は難しいと思います。その辺りについての見通しはありますか?

岡部)小児の皮膚感染症や肺炎球菌感染症は、急性の病気なのです。だから、やるかやらないかで、明らかにわかる症状などが短い期間で見えて来る。いまの新型コロナワクチンも副反応の出方は心配だけれども、必要なものとして受け止めているわけです。「いま防がないと」という気持ちがあるので、答えとしては「いま」なのです。

岡部)ところがHPVワクチンは、子宮頸がんなどのがんを防ぐものです。しかし、がんは明日罹るわけではありません。すぐに症状が出るわけでもなく、5年先、10年先のことになるから、本当に効果があったのか、被害があったのかわかりにくい。

飯田)そうですね。

岡部)そのため、何か問題点があると、受けようとする方も先送りするし、勧める側も「明日に関わる問題ではない」ということで、遅らせがちになるのではないかと思うのです。

飯田)あの年齢のお子さんたちだと、お母さんの判断が重要になるので、「こういう報道があるのであれば、やはり娘に打たせるのはやめておこう」という方向になる。

厚生労働省が作成した子宮頸がんやHPVワクチンに関する啓発リーフレット(部分) 写真提供:共同通信社

高校3年生になって自身で理解できてから接種するべき ~予防接種の期間を限定するべきではない

岡部)中学生~高校1年生くらいの年齢は、多感な時期ですよね。もう自分の判断を尊重するべきではないかと思うのです。もちろん親御さんの意見は強いのですけれど、一斉に全員がやるから、または親御さんがやれと言ったからではなく、最終判断は子どもさん自身が決めていいと思うのです。「私はまだ子宮頸がんについてわかっていないから」という人であれば、「あとでやります」という判断もありだと思います。

飯田)高校1年生の年齢を過ぎてからでも。

岡部)高校3年生や大学生の年齢になってから、「これは必要だ」と判断して打ってもいいと思うのです。でも、予防接種の制度には「何歳までで、定期接種ですよ」という傾向があって、その年齢を過ぎてしまうと、お金がかかるわけです。

飯田)例えば、1人ひとりにクーポンのような形で渡しておいて、納得できたら打つようにするなど。

岡部)そうですね。それをもっと長い有効期間にして、「何年何月何日の誕生日を過ぎたら使えません」という形にしなくてもいいと思うのです。

飯田)そう考えると、本当にボタンの掛け違いだったというところですか?

岡部)そうですね。

接種に疑問を持つ人には考える時間があってもいい

飯田)そのボタンの掛け違いが8年に及んでしまった。今回ここまで漕ぎつけたことに関して、どうお考えですか?

岡部)HPVワクチンの接種を、急ブレーキを踏んでやめるというつもりはなかったのだけれども、アクセルは離した方がいいだろうという感じでした。

飯田)一旦は。

岡部)しかし結局、ブレーキがずっとかかってしまった。接種が止まったことについては、非常に責任を感じています。日本で接種が再開できたというのは、女性にとって喜ばしいことですし、必要なことだろうと思います。ただし、健康被害を受けた方については、ワクチンと直接の関係があるなしに関わらず、丁寧に見て行かなければいけないと思います。「いつまでにやらなければいけないからやりましょう」とか、「お金がかからないワクチンだから早くやりましょう」という方向でやると、トラブルが起きやすくなる。疑問のある方には、少し踏み留まって考える時間があってもいいと思うのです。

飯田)先ほどおっしゃった、高校1年生で区切るのではなくて、という話につながりますね。

マスコミ報道に左右された事例の1つ

飯田)子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルスは、性交渉によって感染すると言われているので、小学校6年生~高校1年生の女性に接種することになっています。8年前に積極的勧奨が中止されたとき、リスクとメリットが冷静に見られていたのかどうか。

数量政策学者・高橋洋一)それについては疑問ですよね。WHOなどでは、(日本は)「医学的・統計的な根拠なし」で判断を下したと言われています。判断を下すときには、きちんとした根拠がないといけないのだけれど、マスコミの報道に左右された事例の1つとして紹介されています。

飯田)岡部先生が一方で強調していたのですが、特異な例として出て来るものは、「統計的に見れば」という全体的な政策とは別の面で、そういう人たちに対してのサポートはもちろん必要であり、全体の意思決定とはまた別個で考えなければいけないということです。「鳥の目」と「虫の目」、両方が必要なのだと話されていました。

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