音楽出版社をつくることになった「意外なきっかけ」 朝妻一郎
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年4月20日 22時5分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(3月30日放送)にフジパシフィックミュージック会長の朝妻一郎が出演。フジパシフィックミュージックの前身であるパシフィック音楽出版がつくられた経緯について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。3月28日(月)~4月1日(金)のゲストはフジパシフィックミュージック会長の朝妻一郎。3日目は、音楽出版社をつくることになった経緯について—
黒木)私の子供のころを思い浮かべると、オールナイトニッポンで育ったものですので、放送で聴いた曲のレコードをEP盤とLP盤と探して買うという時代でした。そうやってラジオから音楽を聴いていかれたり、ジュークボックスでヒット曲を聴かれたりしている10代でいらしたのですか?
朝妻)いまの方はほとんどジュークボックスをご存じないと思います。でも、1960年くらいまで、アメリカのレコードがヒットする道は、ラジオ経由がいちばんでしたけれども、その次はジュークボックスからだったのです。
黒木)そうなのですか。
朝妻)ジュークボックスでレコードのかかる割合をチャートにした「キャッシュボックス」というアメリカの業界誌がありました。どの地域のジュークボックスでかかったのかを記録したものです。この曲はシカゴでは1位だけれどもロサンゼルスでは5位だとか、ニューヨークでは2位だとか。そういったチャートが載っている業界誌があったくらいです。
黒木)ジュークボックスはレコードを取り出してかけてくれるのですよね。
朝妻)そうです。自分の聴きたい曲のボタンを押すと。自動で動くのです。『ボディガード』という映画にも出て来ますが、いまでも、アメリカの地方のバーのシーンなどでは、ジュークボックスが出てきます。
黒木)もともとフジパシフィックミュージックの前の会社、パシフィック音楽出版のときに、ラジオもこれから大変な時代になるから、音楽出版もつくろうということで、始められたのですね。
朝妻)そうです。石田達郎さんという、のちにニッポン放送の社長になられた方が、「テレビが出てきて、ラジオはいずれ滅びるかも知れない。でも滅びるのだとしたらニッポン放送は最後になろう。そのためにはいろいろなことを考えなくてはいけない」ということを言いだしたのです。
黒木)今後を見据えて。
朝妻)1つは、当時、アメリカで「カーステレオ」が流行っていて、8トラックとか4トラックのカセットで音楽が聴かれていたのです。
黒木)カセットテープの大きいやつですね。
朝妻)石田さんはそれをご覧になって、これまでは車を運転している間にラジオを聴いている人たちは自分たちのユーザーだったのに、ユーザーがラジオではなく、テープで音楽を聴いている。では、その敵を早くから自分たちの味方に入れてしまおうというので、「ポニー」というテープの会社をつくられたのです。それがいまの「ポニーキャニオン」というレコード会社に発展していくのです。
黒木)テープの会社をつくられた。
朝妻)当時はラジオでレコードを放送でかけたても、出所を明示すれば使用料は払わなくてもいいという法律があったのです。ですから放送局はレコードをかけたら、番組の最後に「きょう使用したレコードは、コロンビアレコード、東芝レコード、ビクターレコード……」と使用したレコードのレコード会社名を明らかにしていました。
黒木)おぼろげに覚えています。
朝妻)それはレコードの出所を明示しているわけです。出所を明示すれば使用料を放送局は払わなくてもいいという法律があったのですけれども、それがいよいよ外れるということになりました。いままでは払わなくてよかった著作権使用料を払うことになるのだから、新しく著作権使用料を稼げる出版社をつくっておいた方がいいのではないかということを石田さんがお考えになったのだと思います。
黒木)先見の明がおありだったのですね。
朝妻)石田さんはすごいバイタリティで、オールナイトニッポンなども石田さんの力があったからできたというところがあります。
黒木)それがいまだに続いていますものね。すごいですね。
朝妻一郎(あさつま・いちろう)/ フジパシフィックミュージック会長
■昭和18年 東京生まれ。
■昭和41年 株式会社パシフィック音楽出版に入社。
■昭和55年 常務取締役 就任。
■昭和60年 代表取締役 就任。
■昭和60年 合併により、「株式会社フジパシフィック音楽出版」と改称。代表取締役社長に就任。
■平成17年 代表取締役会長 就任。
■平成27年 株式会社フジパシフィックミュージックと改称。
■パシフィック音楽出版時代より、ザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」、モコ・ビーバー・オリーブの「海の底でうたう唄」、加藤和彦・北山修の「あの素晴しい愛をもう一度」をはじめ、山下達郎、大滝詠一、サザンオールスターズ、オフコースなど多くのアーティストのヒットづくりに携わる。
■2022年2月28日に著書『高鳴る心の歌 ヒット曲の伴走者として』(アルテスパブリッシング)を発売。
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