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カベルナリア吉田氏は、なぜ「紀行ライター」になったのか

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年7月27日 17時25分

写真

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

紀行ライターのカベルナリア吉田さん

先日、東京ビッグサイトで開催された「クリエイターEXPO」。

イラストレーターやデザイナー、漫画家、写真家、書道家、絵本作家など、さまざまな才能を秘めた若きクリエイターが自分の作品を出展し、自分を売り込むイベントです。なかには商談まで持ち込むクリエイターもいるそうです。

そのなかに、「あれ?」と二度見してしまった男性がイスに座っていました。名前のプレートには「カベルナリア吉田」とあります。髭を生やし、丸いメガネを掛けた中年男性です。

職業をうかがうと、旅の本を書く「紀行ライター」とのこと。今回は、吉田さんがなぜ紀行ライターになったのか、どんな本を出されているのかをご紹介します。

母校・早稲田大学で社会人講座も開講

子どものころは無口で人見知りだったという吉田さん。話をするのは苦手でしたが、作文は好きだったと言います。みうらじゅんさんや泉麻人さんなどのサブカルチャー本を読んでは、「いつか自分もこんな本を出してみたい」と思っていたそうです。

吉田さんは早稲田大学を卒業後、読売新聞社に入社。新聞記者の採用ではなく、出版局で広告の営業をしていました。しかし、当時はバブルが弾けた時期で、なかなか広告が取れなかったそうです。

そのころから上司に内緒で原稿を書いており、使っていたペンネームが「カベルナリア吉田」。女子プロレスラー・吉田万里子さんの大ファンで、彼女の必殺技が「カベルナリア」だったことから、このペンネームにしました。

原稿を書けば書くほど本を出したいという思いが強くなり、29歳で退職。残った有給休暇で沖縄を2週間ほど旅しました。その沖縄で、吉田さんの人生が大きく変わります。

「沖縄はご飯がうまくて、冬も暖かい。そして知らない人が声をかけてくる。旅って面白いなぁ。本を書くなら、旅の本を書きたい!」

2つの出版社を渡り歩き、36歳でフリーになった吉田さん。現在57歳になりますが、この20年に出した本は39冊を数えます。1年に2冊のペースです。出版不況の時代に、どうしてこれほどの本を出すことができたのでしょうか?

吉田さんが出版した旅行本

カベルナリア吉田さんが出した39冊のなかから、一部タイトルをご紹介します。

—–

■『ひたすら歩いた沖縄みちばた紀行』

■『東京ワンデイ スキマ旅』

■『肉の旅 まだ見ぬ肉料理を求めて全国縦断!』

■『突撃! 島酒場 日本縦断ほろ酔い島めぐり』

■『全国ビジネスホテル朝食図鑑 ビジホの朝メシを語れるほど食べてみた』

■『ニッポンのムカつく旅』

—–

どれも目を引くタイトルですが、大手出版社からは1冊も出していません。

「大手は会議にかけたり、売れるか売れないかに関してとても慎重です。企画が通るまでに時間がかかり、結局ボツになることが多いんです。その点、小さな出版社はたくさん企画を持ち込むと、そのうちの1本が通るんです。出版不況と言いますが、小さな出版社は結構元気ですよ」

「クリエイターEXPO」のブースにて

吉田さんの旅の基本は、歩く、食べる、飲む。そして感じたことを書く。47都道府県すべてを旅したという吉田さんですが、「全国どこに行っても同じような街ばかりだ」と嘆きます。

バイパス沿いにはチェーン店が並び、旅情なんて感じられない。妙に健全な店ばかりで、それが逆に不健全だと思った吉田さんが、このほど出した本のタイトルは……『新日本エロい街紀行』。北海道から沖縄まで、全国のフーゾク街を訪ねる旅の本です。

夜の街を見て歩き、その街で暮らす人たちの話を聞き、早朝のフーゾク街を歩いたり、B級グルメを食べたり……現地に足を運ばないと知り得ない情報を、コミカルな文体で綴っています。

あとがきには、吉田さんのこんな思いが……。

「とにかく全国のエロい街を歩いてみて、どの街も人間の欲望に忠実で、微笑ましいとさえ思った。臭いモノにフタ的にエロを排除するんじゃなくて、もっとエロを気軽に語れる世の中になれば、少子化の問題も好転するんじゃないかな」

旅が好き、食べるのが好き、お酒が好き、そして女性も……カベルナリア吉田さんの旅は、この夏も続きます。

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