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秋葉国家安保局長が訪中した「2つの理由」

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年8月19日 12時5分

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17日、中国の天津で会談に臨む、秋葉剛男国家安全保障局長(左)と中国の楊潔〓(タケカンムリに褫のツクリ)共産党政治局員(国家安全保障局が18日提供)

日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が8月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。8月17に行われた秋葉国家安全保障局長と中国・楊潔篪共産党政治局員との会談について解説した。

2022年8月17日、中国の天津で会談に臨む、秋葉剛男国家安全保障局長(左)と中国の楊潔〓(タケカンムリに褫のツクリ)共産党政治局員(国家安全保障局が18日提供) AFP=時事 写真提供:時事通信

秋葉国家安全保障局長が中国の外交トップと会談 ~秋の日中首脳会談の実現に向け、政府は対話を継続する方針

秋葉国家安全保障局長は8月17日、中国・天津で中国外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員と会談し、政府は「今後も対話を継続する方針を確認した」と発表した。日中国交正常化50周年を9月に控えるなか、岸田総理は日中関係を再構築したい考えで、習近平国家主席との首脳会談を模索している。11月15日から20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)など秋以降の国際会議に合わせた会談を探ると見られる。

秋葉国家安全保障局長が楊潔篪共産党政治局員と会談した2つの理由 ~1つは日中国交正常化50周年に向けて対話の機会を活かしたい

飯田)直近には台湾の話もありましたし、この路線でいいのでしょうか?

秋田)私もペロシ米下院議長の台湾訪問以来、日中関係がどうなるのか取材しておりました。秋葉国家安全保障局長が訪中して対話を継続するような流れになっていることについては、2つの理由があると思います。

飯田)2つの理由が。

秋田)1点目は即物的なことで、9月下旬に日中国交正常化50周年を迎えます。50周年は意外と大きな節目なので、これに向けて日中で緊張を緩和することができないかという希望があると思います。特に岸田政権は安倍政権よりも、そういう意味ではリベラルなので、中国に対する政策は安倍政権と基本的には変わりませんが、対話の機会を活かしたい意向はあるのだと思います。

日中の長い緊張が始まった ~衝突をさけるため「お互い、理解した上で緊張しよう」

秋田)ただ、それ以上に、中長期的な意味合いの方が大きいと思います。日本はアメリカの同盟国ですから、日米と中国の関係はおそらく話し合って改善する、緊張が緩和することはないのだと思います。

飯田)緊張が緩和することはない。

秋田)中国もそれは期待していないし、アメリカと日本側も「期待できない」と見るべきだと思います。なぜならば、目指す方向性が違うということが、ロシアのウクライナ侵略ではっきりしたからです。

飯田)ウクライナ情勢で。

秋田)中国はロシアをかばう。これは我々とまったく違う方向を見ているということです。我々はロシアに強い制裁を行っています。ロシアがやっていることはいまの秩序を壊すから、「許せない」と言って我々は制裁しているわけです。

飯田)そうですね。

秋田)その相手をかばうということは、ロシアがやっていることに関して、いまの秩序を壊してしまうと見ていないか、壊れてもいいと思っているのでしょう。多分、中国は壊したいと思っているのです。戦後のいまの秩序はアメリカ主導ですから。ウクライナ侵略前の日米と中国の関係は、「行動が問題である」という関係でした。サイバースパイや南シナ海に人工島をつくったことなどの。

飯田)中国の行動が。

秋田)そういうことがよくないというところから対立していたのですが、いまは人間関係で言えば、「目指す方向が違う」ということです。行動が問題なのではなく、会社で言えば、経営方針の違う幹部がいたら、言葉や行動を改めてもわかり合うことはできません。

飯田)経営方針が違えば。

秋田)そのようなフェーズに日米と中国は入っていて、だから台湾問題が緊張するのだと思います。台湾問題が原因なのではなく、構造的な対立が原因なのです。その結果として、台湾や尖閣が緊張するということだと思います。

飯田)なるほど。

秋田)秋葉局長の訪問を見ると、「長い緊張が始まった」ということをお互いわかっていて、衝突はお互い望んでいないので、ホットラインや危機管理を考える。もしくは険悪な状態でも話をしないと、もっと険悪になるので、「相手が何を考えているのか、お互いに理解した上で緊張しようね」という話だと思います。

経済的に結びついている分、かつての米ソ冷戦よりも深刻な「米中新冷戦」

飯田)価値観、ベースの部分でまったくわかり合えないと。かつてはまさにこれを「冷戦」と呼んでいましたが?

秋田)私は新聞で記事を書くときに、「新型冷戦」や「新しい冷戦に入った」と書いているのですが、「米ソ冷戦」とは違い、米中は経済的に結びついているので、「冷戦と呼ぶべきではない」という批判を受けます。しかし、米ソ冷戦と違うから「新型冷戦」と言っているのです。

飯田)あのときはイデオロギーの部分で完全に対立し、完全に分断していた。

秋田)経済のつながりはほとんどありませんでした。いまは経済のつながりがあり、その上で方向性がまったく違ってきているという意味では新しい冷戦であり、経済がつながっている分、より深刻とも言えます。

飯田)かつての冷戦よりも。

秋田)離れたくてもお互いに依存して、同じ土俵から逃げることができない。しかも喧嘩しています。

飯田)そうですね。

秋田)米ソ冷戦の時代は、代理戦争のようにベトナム戦争や朝鮮半島での戦争がありましたが、それぞれ違う土俵に立っていたのです。しかし、いまの米中は人間の身体で言えば、下半身の部分が経済的に結びついていて、上半身で殴り合っているようなものです。それは米ソ冷戦よりも深刻かも知れません。

25日、教師や学生代表との座談会で重要演説を行う習近平氏。習近平(しゅう・きんぺい)中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は25日午前、青年節(5月4日)を前に北京市の中国人民大学を訪れ、思想政治科目のスマート教室、博物館、図書館を視察した。(北京=新華社記者/鞠鵬)=配信日:2022(令和4)年4月26日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ

軍事力が上である中国との喧嘩は絶対に避けるべき ~余計な喧嘩をしないために「隙のない状態」をつくった上で共存する

飯田)そんな状況のなかで、日本としてはどうするべきですか?

秋田)日本は中国のお隣さんですから、喧嘩したくなくても、少し肘が当たったり足がぶつかったりして、熱くなって喧嘩してしまう可能性があります。それは絶対に避けるべきだと思います。中国の方が軍事力では上だからです。

飯田)中国の方が。

秋田)中国は軍事費で4倍以上、人口は10倍以上の差があり、国土も大きいし、核弾頭も300発以上持っています。戦争になればお互いに傷つきますが、日本の方が圧倒的に被害を受けるわけです。ここは緊張を管理しながら、でも「話し合って改善する」という幻想もあまり抱かずに、「危機を起こさない」という大人の対応、態勢が必要だと思います。

飯田)「こちらとしてはこう考えている。君がそこまでするなら、うちだってやるからね」ということを示して意志を理解させないと、いたずらに緊張することになる。

秋田)まずは家の戸締りや警報などの防犯をきちんと整えないと、緊張しながらお隣さんと共存することは難しいですよね。

飯田)「あそこの家は備えが甘いから盗れるかな」と思わせてはいけない。

秋田)お互いに。中国もそうしていますし、余計な喧嘩をしないためには、逆説的に聞こえるのですが、それぞれの守りをきちんと対策して、それぞれ隙がない状態をつくる。その上で共存するのだと思います。

台湾有事への備えが足りない日本

飯田)秋田さんは、日経新聞の昨日(8月18日)のオピニオン欄に記事を書かれています。

—–

『台湾有事、備え足りぬ日本』

~『日本経済新聞』2022年8月18日配信記事 より

—–

秋田)台湾海峡でもし戦争になってしまった場合、先日の中国の軍事演習でもわかりましたが、日本の排他的経済水域にミサイルが落ちてくるのです。そういう距離にあります。従って戦争になれば、日本の先島諸島はおそらく戦域になってしまうと思います。中国に侵略するつもりがあろうがなかろうが、戦場になってしまう可能性があることを考えると、日本にとっては有事なのです。

飯田)台湾有事は。

秋田)そのためにどういう備えがあるのかを取材して記事に書いたのですが、一言で言えば、日本はほとんどと言っていいほど有事の備えがないと感じました。

飯田)ほとんどない。

秋田)戦後80年近く、日本は幸いなことに1度も戦争していません。ですから、いまのパンデミックもそうなのですが、平時の体制でやってこられたのです。しかし、軍事衝突になってしまった場合は、まったく次元の違う緊張を強いられます。その訓練が足りないと思います。

自衛隊という筋肉はあっても、それを使う大脳や小脳(政治)が動かなければ機能しない

飯田)現場の自衛隊云々という話よりも、日本全体、日本政府全体としての動きということですか?

秋田)一言で言えば、政軍関係。政治が軍を指揮するという政軍関係が決定的に足りないと思います。日本は筋肉がたくさんあるのです。自衛隊という筋肉はありますし、これからも防衛費を増やして増強していくわけです。筋肉はあるけれど、それを使うのは大脳や小脳です。筋肉と脳が中枢神経でつながっていないと、筋肉ばかりあってもダメですよね。

飯田)機能的に動かなくなってしまいます。

シミュレーション演習を首相や大臣も行って訓練する必要がある

秋田)不随意筋になってしまいます。脳はある意味で政治・政治家であり、最高指揮官は首相。さらに防衛大臣が指揮します。そこから中枢神経で筋肉につながるのですが、台湾海峡で危機が起きると、先日行われた机上演習と言うのでしょうか。

飯田)シミュレーション演習ですね。

秋田)シミュレーション演習を都内で実施していましたけれど、あれを見ていても、1時間単位で国の命運を左右するような決断を政治家がしなければならない。いつ防衛出動するのか。尖閣諸島に漁船が押し寄せてきただけで防衛出動するのか。そうすると相手に対しては宣戦布告になりますが、その場合、相手の国に大勢の日本人がいるけれど、大丈夫なのか。そういう決断を政治家がしなければいけないのです。

飯田)被害がどれだけ出るのかということも含めて決断しなければならないけれど、決断できるかどうか。

秋田)やったことがないので、図上演習を首相や大臣も行って、訓練する必要があると思います。

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