妻夫木聡、男泣き “盟友”と共に掴んだ栄誉 【第46回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞】
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年3月13日 11時45分
【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1107回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
3月10日、グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールにて「第46回日本アカデミー賞」授賞式が開催。映画『ある男』主演の妻夫木聡が、『悪人』(2010年)以来、12年ぶりに最優秀主演男優賞を受賞しました。
そこで今回は、俳優・妻夫木聡をクローズアップ。その功績を辿ります。
映画ファンを魅了する、妻夫木聡の多彩な“顔”
愛したはずの夫は、実はまったくの別人だった。
平野啓一郎による同名ベストセラー小説を実写映画化した『ある男』。妻夫木聡が演じたのは、窪田正孝演じる“ある男・X”の素性や過去を探る弁護士・城戸章良。
本作で初めての弁護士役に挑んだ妻夫木は、現役の弁護士への取材や裁判の傍聴などを積極的に行い、役作りをしたとのこと。その弁護士への取材を通じ、「人は置かれている状況に応じて、他人に見せる“顔”が変化する」という機微にあらためて気づいたことで、城戸役への手がかりが掴めたとか。
観る者に深い余韻を与える演技で、物語の主人公でありながらストーリーテリングとしての役割も持つ難役をモノにしました。
シリアスなドラマからコメディまで、これまで幅広い作品に出演してきた妻夫木聡。彼の凄いところは、『東京家族』や『家族はつらいよ』に代表されるような平凡な役どころや、『唐人街探偵 東京MISSION』で演じたような浮世離れしたキャラクターでも、徹底的にリアルに演じられること。
その芝居は近年、さらに円熟味を増し、作品ごとにまったく違った“顔”をみせてくれるのも、私たち観客を魅了してやまない理由のひとつとなっています。
授賞式でのスピーチでは、「俳優は“在る”ことが大切」という山田洋次監督からの言葉を明かした妻夫木聡。その言葉どおり、作品世界に確実にその身が“在る”からこそ、どこまでも人間臭く、そして確固とした存在感を放つことができるのでしょう。
今回の最優秀主演男優賞受賞を語るにおいて外せないのが、最優秀監督賞に輝いた石川慶監督の存在。石川監督の長編映画デビュー作『愚行録』で初タッグを組んで以来、石川監督の才能をいち早く見抜いていた妻夫木聡。
主演だけでなく、自身も企画に名を連ねた連続ドラマ「イノセント・デイズ」ではメガホンを託し、完成披露舞台挨拶の場でも、石川監督の卓越した演出力について言及。多大な信頼を寄せていることが言葉の端々から受け取れて、“俳優と監督”という枠を超えた絆の強さが垣間見えました。
そんな石川監督と3度目のタッグとなった本作が、作品賞をはじめ、今年度最多となる8つの最優秀賞を受賞したことは、妻夫木聡にとってはこのうえない喜びだったことでしょう。
プレゼンターの島谷能成日本アカデミー賞協会会長から「最優秀作品賞は、『ある男』」と読み上げられ、壇上に上がった『ある男』チーム。
そのセンターに立ち、「(石川)監督のデビュー作だった作品から一緒だから、彼の才能を間近に見ていた自負があるので本当に嬉しい」と、男泣きで語る妻夫木聡。
2023年は、俳優生活25周年となる節目の年。これからも、ひとつひとつの作品と真摯に向き合い、日本映画界を盛り上げる名演をみせてくれることを期待してやみません。
■ある男
2023年3月10日(金)から凱旋上映
出演:妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、坂元愛登、山口美也子、きたろう、カトウシンスケ、河合優実、でんでん、仲野太賀、真木よう子、柄本明
原作:平野啓一郎「ある男」(文春文庫刊)
監督・編集:石川慶
脚本:向井康介
音楽:Cicada
企画・配給:松竹
(C)2022「ある男」製作委員会
■愚行録(2017年公開)
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
出演:妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜、中村倫也、眞島秀和、濱田マリ、平田満 ほか
監督:石川慶
原作:貫井徳郎(創元推理文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース
(C)2017「愚行録」製作委員会
■連続ドラマW「イノセント・デイズ」(2018年オンエア)
DVDリリース
出演:妻夫木聡、竹内結子、新井浩文、芳根京子、ともさかりえ、長谷川京子、石橋蓮司、余貴美子 ほか
原作:早見和真『イノセント・デイズ』(新潮文庫刊)
監督:石川慶
企画:妻夫木聡、井上衛、鈴木俊明
(C)WOWOW
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/
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