打楽器「プロパノータ」 なぜ「プロパンガスのボンベ」で楽器製作に至ったのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年7月26日 17時25分
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
「プロパノータ」という楽器をご存知でしょうか? 名前の由来は「プロパンガスのボンベ」。廃棄処分待ちのガスボンベから生まれた「音階のある打楽器」です。
菅井肇さん・53歳は、「プロパノータ」という楽器の生みの親です。菅井さんは千葉県八千代市の出身。20代の時期はバックパッカーとして、中南米の国々・約10ヵ国を巡っていました。
その最後に訪れたメキシコシティの大きな公園で、打楽器を持ち寄った人たちが、リズムを取りながらセッションしている風景に出くわします。たまたま見ていた人たちも自然と体が動き、踊り出していました。
菅井さんは「何て心地いい音色なんだ」と、一気に打楽器の魅力に引き込まれます。
菅井さんは帰国後、縁あって静岡県藤枝市で花火師さんに弟子入りします。夏は全国の花火大会の会場を巡り、数々の花火を打ち上げていきました。
当時、花火の打ち上げ現場では点火装置の1つとして、小さいプロパンガスのボンベのようなものが使われていました。それを見た菅井さんは、かつての海外の打楽器を思い出します。
「このボンベで音を奏でてみたい」
そこで菅井さんは、花火師さんの仲間にある相談を持ちかけました。
菅井さんが相談したのは、本業は鉄工場に勤めている花火師さんでした。
「楽器をつくりたいんですが、このガスボンベの真ん中をカットして、上下の丸いところをつなぎ合わせてもらえませんか?」
溶接は簡単にできるという話で、ガス会社に勤めるご近所さんにも恵まれ、安全なボンベを提供してもらえました。
加工されたボンベが手元に届くと、喜び勇んで鳴らしてみますが……予想に反して、なかなかいいドレミの音が出ません。そこで、菅井さんはボンベの内側を削ったり、金属にスリット・切り込みを入れて長さを調節したりと、試行錯誤を繰り返しました。
作業を続けること約2年。ガスボンベだった金属の塊は、きれいなドレミの音を奏でる楽器へと生まれ変わりました。菅井さんはこの楽器を、プロパンガスのボンベにちなんで「プロパノータ」と名付けます。
「叩くだけでこんなに楽しい楽器だし、きっと売れるぞ!」
しかし、インターネットなどで紹介しても、さっぱり売れる気配がありません。どうもガスボンベと楽器とのギャップが大きすぎて、うまくイメージしてもらえないようでした。
1つも売れずに、再び数年が経ったある日。地元出身の有名ミュージシャンが、テレビのローカル番組のロケでふらりと工房にやって来ました。
とても面白がってくれて、「プロパノータ」を1つ購入する様子が放送されると、後を追うようにさまざまな地元メディアが注目していきます。
菅井さんは40歳のとき、10年勤めた花火会社を辞め、「プロパノータ」1本に絞ります。程なく東京に拠点を移し、葛飾区の京成線・お花茶屋駅の近くに「スガイ打楽器製作所」を構えました。音楽イベントなどを通じ、「プロパノータ」を知ってくれる人も増えてきました。
「金属なのに、これほど優しい音が出るんですね!」
「プロパノータ」を初めて鳴らした方は、必ずというほどそんな感想を漏らします。特に楽器を演奏したこともなく、癒しの音色を求めて購入する方も多いそうです。
しかし、菅井さんは「プロパノータにはもっと大きな可能性がある」と言います。
「紙のテープを貼ったり、ビニールを挟んだりするだけで、プロパノータは音色が全く変わります。演奏の上手い・下手は関係なく、もっと自由にプロパノータを叩いてもらい、人間に備わったリズムを取る楽しさや、音を鳴らす喜びを多くの人に感じて欲しいんです」
日本において、1人でも多くの仲間が集まり、いろいろな楽器を奏でながら純粋に「音を楽しめる」日を夢見て……菅井さんは、きょうも「プロパノータ」をつくり続けます。
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