過去最高約9600億円 ふるさと納税が持つ「2つの問題」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月2日 17時40分
ジャーナリストの佐々木俊尚が8月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2022年の寄付総額が過去最高の約9600億円となったふるさと納税について解説した。
ふるさと納税額が過去最高の約9600億円に
飯田)ふるさと納税による寄付総額が、過去最高の9600億円余りになりました。利用者は10年連続で増加しており、制度をつくった菅さんはSNSで「1兆円に迫るまでになった」と感慨深そうにしていました。
佐々木)スタートはよい発想でしたよね。確かに東京や大阪などの都市部に集中していた税金を、再分配するという役割を果たしている。もちろん地方交付税交付金があるので、これで再分配しているのですが、上乗せ分という意味では地方にお金が回ってくる。しかも地方交付税交付金は単純に分配しているだけですが、ふるさと納税の場合は、各自治体が知恵を絞らなければいけない。頭を使ったところにたくさんお金が回るので、発想としては非常にいいと思います。
人気の産品があるところに集中してしまう ~冷凍できる肉や魚介類が獲れる自治体が有利に
佐々木)ただ、ここまで大規模になってしまうと、ネガティブな面も出てきます。1つが、人気の産品があるところに集中してしまう問題です。寄付額1位の九州・宮崎県都城市は、肉牛の生産量が日本トップクラスです。肉は冷凍できるからいいのです。ふるさと納税で購入すると、大量に送られてくるではないですか。
飯田)基本的にロットが大きいですよね。
佐々木)キロ単位などですからね。また、2位は紋別市です。
飯田)3位が根室市で、4位が白糠町。いずれも北海道の東の方ですよね。
佐々木)紋別はオホーツク沿いで、この辺りもウニやイクラなど、美味しい北海道の魚介類がドサッと送られてきます。これも冷凍できるからいいのですよ。
飯田)確かにそうですね。冷凍できるし日持ちする。
冷凍保存できない野菜は不利に
佐々木)最近の家庭の冷蔵庫・冷凍庫はみんな大きいですからね。ふるさと納税で野菜を買ったことがありますが、美味しいのですよ。例えば、限られたイタリアンレストランでしか使わないような北海道辺りの野菜セットがあって、買ったのですが、野菜は冷凍できないですよね。そうすると、ダンボール1箱ほど送られてきても、一般家庭では消費するのが大変です。
飯田)足が早いから。
佐々木)いくら美味しい野菜がたくさん採れるところでも、ふるさと納税だとうまく回らない。どうしても肉や魚介の方が有利になる傾向があります。
飯田)野菜が採れるところは、加工してパスタソースにするなど、売り方を工夫していますよね。
佐々木)でも、パスタソースよりも肉の塊がどかんと来る方がインパクトが強いですからね。このように、どうしても偏りができてしまう問題がある。その町の魅力そのものよりも、送ってもらえるもののありようの方が大事という。
規模が大きくなってしまい、ふるさと納税専門のポータルサイトでのカタログショッピングになってしまっている ~インパクトのあるものを買うだけで、その町には関心を持たない
佐々木)もう1つ、ふるさと納税が大規模化した結果、市町村の公式サイトなどでふるさと納税を調べるのが面倒くさいため、専門のポータルサイトがたくさんできているのです。
飯田)できていますね。
佐々木)ふるさと納税サイトのような。そうすると、「都城市が大好きだから都城市の肉を買いたい」という感じではなく、ポータルサイトを見て「どの商品がいいかな」とカタログショッピングをしている状態なのですよ。
飯田)どれが美味しそうかと。
佐々木)そこで選び、買っているだけです。「自分の選んだふるさとに納税する」ということではなく、「美味しくてインパクトのあるものを買う」という。ポータルサイトには訪れるのですが、町がどんなところなのかなど、その先のことには関心がないのです。
専門のポータルサイトで商品を購入するだけで、その地域の関係人口には結びつかない ~その土地に「行ってみたい」と思わせる仕掛けが必要
佐々木)本来のふるさと納税の理念から、少しずれてきている部分があります。本来はどこかの町へ旅行に行き、その町が気に入って「あそこで食べた魚が美味しかったからもう1回買おう」と、その町のサイトでふるさと納税し、魚を送ってもらうという流れだったはずです。「関係人口」という言葉がありますよね。
飯田)特定の地域に継続的に多様な形で関わる人。
佐々木)そこに住んでいる人でも、1回旅行に行って通り過ぎるだけの人でもない。継続してその土地に関心を持ってもらえる人、つながりを持ってもらえる人です。リピーターで何度も旅行に行っているなど。
飯田)関係人口。
佐々木)「ふるさと納税で関係人口を増やそう」というのが当初の狙いだったわけです。でも、ふるさと納税のポータルサイトで商品を買ってしまうと、関係人口にならないですよね。そういう問題が起きてしまい、少し理念からずれてきている部分はあると思います。
飯田)ものと一緒にその土地の紹介も送られてくるから、それがきっかけで「今度そこに行ってみよう」と考えてくれたらいいのですが。
佐々木)そうですよね。ポータルサイトで買ったとしても、食べたり飲んだりして、その土地の風景などに思いを馳せ、「ああ、行ってみたいな」と思えるかどうか。そういう仕掛けがもう少し欲しいですね。
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