ロシアが気候変動による「勝ち組に」 安全保障と気候変動の問題
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月4日 17時45分
防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄が8月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。安全保障と気候変動の問題について解説した。
安全保障と気候変動の問題
飯田)35度を超えるような暑い日が続いていますが、安全保障の世界でも気候変動などの影響は受けるのでしょうか? その辺りも研究されているものですか?
高橋)安全保障と気候変動の問題は、オバマ政権時代に話題になりました。トランプ政権になって目立たなくなりましたが、バイデン政権になり、また注目されています。
飯田)民主党政権だと、CO2削減などにコミットしていく傾向があるのですか?
高橋)ミティゲーション(環境への影響の緩和)とアダプテーション(変動してしまった環境への適応)という考え方があります。ミティゲーションに該当するのがCO2削減であり、気候変動を和らげていくという話です。アダプテーションは変動した世界にどう対応していくか、ということです。
飯田)ミティゲーションとアダプテーション。
温暖化によって北極海の氷が解けることで、ヨーロッパからアジアへ直接船で行くことが可能に
高橋)特に重要なのが、北極海の氷が解けると、インド洋を通らずにヨーロッパからアジアへ直接、船で行くことが可能になるかも知れません。物流の流れが変わると安全保障が変わるということが注目されていた時期があります。
飯田)アダプテーション(適応)という言葉を聞くと、「暑いなかでどのように戦うか」というようなミクロな話かと思っていたら、北極海航路の話にもつながるのですね。
高橋)そうなのです。距離で言うと半分くらいになります。
飯田)確かに、これまではスエズ運河を通って、インド洋から南シナ海を通る「このシーレーンが大事だ」と言われていました。もしかすると、それが変わってしまうかも知れないのですか?
高橋)そうですね。
ロシアとの関係で北極海は使えないかも知れない ~気候変動にはいろいろな側面での考えが必要
高橋)一方で、今回のロシアとウクライナの戦争があり、ロシアとの協力という意味が変わっていますから、やはり北極海は使えないのではないかとも思います。
飯田)ベーリング海峡など、あの辺りが危険で近寄れなくなると、北極海が使えない。一旦アラスカで北まで上げてから、もう一度船にというような話になるのでしょうか?
高橋)それも考えられます。気候変動については、いろいろな側面で考える必要があるということです。
冷戦時代は北極海に米ソの潜水艦が向き合っていた
飯田)いままで北極海は、あれだけ氷に閉ざされていると、船が通れないから守る価値もないという感じだったのですか?
高橋)むしろ氷があるので、冷戦時はアメリカとソ連の潜水艦がいるような場所でしたし、米ソの場合は北極点を越えてミサイルを撃ち合う形になっていました。そこで船で戦うとは考えられていませんでした。
飯田)海の下か空の上か、というイメージだったのですね。
気候変動による勝ち組になるかも知れないロシア ~北極海を使うことができ、永久凍土が解けて農業耕作地が広がる
高橋)一方でロシアとしては、北極海氷が解けると、そこにアメリカのイージス艦や空母が入ってくるかも知れないので、警戒感を持っていました。
飯田)ロシアの戦略としても、歴史の教科書でよく学んだのは南下政策でした。凍らない港を求めて、という話でしたが、そこも気候変動で変わったかも知れない。世界史的にも変わったかも知れないですね。
高橋)一般的に気候変動はよくない影響の方が多いのですが、ロシアのように北にある国にとってはメリットもあります。
飯田)ロシアにとっては。
高橋)北極海が使えることもメリットの1つですし、あとは耕作可能な面積が増えていくこともあります。永久凍土が解けると、これまでよりも農業が可能になる見込みがあり、そういう意味でロシアは気候変動による勝ち組になるかも知れない。それは前から言われている話ですね。
飯田)確かに気候変動は悪いイメージだけでしたが、地球への理解の仕方が変わってくることになるのですか?
高橋)そのような立場から言うと、気候変動対策への真剣度も変わってくることになります。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
海自護衛艦「さざなみ」が台湾海峡を初通過、岸田首相が派遣指示…軍事的威圧強める中国をけん制
読売新聞 / 2024年9月26日 5時0分
-
「債務の罠」で押さえらえたハンバントタ港 中印が相互で監視、「冷戦」状態
産経ニュース / 2024年9月21日 10時46分
-
いつか移住?「火星」意外と知らない驚きの実態 夕方になると一転、赤色だった空は青色へと変化
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 18時0分
-
「それが中国流のやり方だ」北極圏でひそかに進む「軍民両用」研究の実態...ロシアとの接近、核持ち込みの懸念も
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月5日 17時17分
-
温暖化が原因で「1日の長さ」が伸びる!?...「地球の自転」に気候変動が及ぼす思わぬ影響とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月29日 15時29分
ランキング
-
13位の小泉進次郎氏、目を赤くして「チームは最高だった」…国会議員票トップも決選投票に進めず
読売新聞 / 2024年9月27日 17時45分
-
2石破氏、早期解散判断へ 衆院選最短で来月27日
共同通信 / 2024年9月27日 20時25分
-
3野党、解散前の予算委要求=立民内から「強敵」と警戒も―自民・石破新総裁
時事通信 / 2024年9月27日 20時10分
-
4高市早苗氏「結果を出せず自分を責めるばかり」「ゼロからのスタート」と敗戦の弁
読売新聞 / 2024年9月27日 17時34分
-
5【解説】石破新総裁“誕生のウラ側”…5回目の挑戦制す 勝敗のポイントは
日テレNEWS NNN / 2024年9月27日 19時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください