中国が日本への団体旅行を解禁も かつての「爆買い」は期待できない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月17日 11時40分
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国から日本への団体旅行の解禁について解説した。
中国が日本への団体旅行を解禁 ~政治的意図はない
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中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け制限してきた、中国人の日本への団体旅行を8月10日から解禁した。中国から日本への団体旅行が再開されるのは約3年半ぶり。
飯田)日本だけではなく、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国、インド、オーストラリアなどの78ヵ国・地域が含まれています。
宮家)はじめは日本だけ最後に解禁されるのかと思っていましたが、78ヵ国を一気に解禁するということですね。3段階くらいに分けている、3年以上、国民に対して海外旅行を実質的に禁止していたわけですから。
飯田)中国政府が。
宮家)ある程度は余裕も出てきているので、中国国民が海外に行きたいと思うのは当然です。それもあって徐々に解禁しているのだと思います。その意味では、政治的な意図があるわけではないのでしょう。
中国も日本もWin-Winに
宮家)日本からすれば、Win-Winになることを期待したいですよね。一昔前のように中国から約959万人の旅行者、約1兆7000億円の消費額があった時代が戻ってくるとは思いませんが、中国からの旅行客は観光の大きな柱になるので、いいことだと思います。中国の方々が団体で来ると統率が取れない場合もありますが、それは昔の日本の団体旅行客にもあったことですよ。
飯田)かつての。
宮家)中国人も徐々に大人になっていると思うので、そういうことはないでしょう。その意味ではWin-Winなのだと思います。
不動産バブルは弾けたと言われるが、伸びしろがまだある中国経済
宮家)では中国人観光客の購買力がどこまで戻っていくのか。昔の爆買いのような形には戻らないのではないでしょうか。今の中国経済を見ると、かつてとは少し違うようです。いままでは右肩上がりで、「いずれはアメリカを抜くかも知れない」と言われていました。
飯田)そうですね。
宮家)しかし、悲観的な見方をする人によると、中国の不動産バブルは弾けて、デフレがこれから始まる。「日本のような失われた10年が中国でも始まるのだ」と言う人もいないわけではありません。
飯田)中国で「失われた10年」がこれから始まる。
宮家)しかし、専門家の話を聞くと、まだ中国の生産性は日本のような形で伸びきってしまったわけではない。伸びしろはまだ残っています。1人あたりのGDPは1万ドルくらいしかありません。日本が3万ドル、シンガポールなどは5万ドルだと考えると、中国にはまだ経済的な伸びしろがあるとも言えます。中国の場合、1990年台初頭の日本のように、生産性も完全に伸びきってしまったときとは違う活力があるので、まだまだ伸びる余地はあるのだと思います。
若年層の失業率が20%を超え、楽観視はできない
宮家)しかし、不動産やデフレなどの状況を見ていると、それほど楽観もできない。そうなると、中国からどれくらいの人が外国に来てお金を使ってくれるのか、なかなか読みが難しいと思います。ある程度の水準までは徐々に上がってくると思いますが。
飯田)若年層の失業率などが深刻だという指摘もあります。
宮家)20%を超えているのですよね。平均では4.4%ですが、若年層では20%を超えてしまう。これは一体どのような数字なのかよくわからないのですが、残念ながら若い人たちにとっては、相当大きな痛手になっていると思います。
中国国民の対日感情がよくなっても、中国政府の政策は変わらない
飯田)外交面において、個人や団体で日本へ旅行に来て、実相を知ってもらうことによるソフトパワー的な影響はあるのでしょうか?
宮家)中長期的にはあります。ただし、中国の問題は中国人民ではなく、中国政府なのです。政府の外交政策、対内政策がポイントです。民主主義のないところですが、実は民衆の対日感情が心の底ではよくなってきている。日本はアニメでも有名ですし、安全で食べ物も美味しい。そういう情報は広がっていると思います。
飯田)国民の間では。
宮家)ただ、政府がもし対日政策を悪化させたら、それに反対する人がいるかと言うと、そのような人はいません。反対できるわけがないのです。その意味では、限界があるのだと思います。
習近平政権になり、性格が変わりつつある北戴河会議
飯田)いま北戴河で、長老も含めた「北戴河会議が始まったのではないか」と言われています。
宮家)行われているとは思うのですが、昔のように長老を本当に尊重しているのかどうか。習近平さんは「長老の言うことを聞かなくても十分やれる」と思っているのではないでしょうか。その意味では、北戴河会議の性格も徐々に変わっていく。少なくとも習近平政権が続く限り、変わる可能性はありますよね。昨年の共産党大会で胡錦濤さんが途中で退場した画像が象徴的だったと思います。
飯田)路線はそうそう変わらない。
宮家)変わらないでしょう。物事を言う長老がいなくなってしまったのではないかと思います。でも長老の存在は大事ですよね。
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