現在の「語り継ぐ戦争」には、戦中派の人たちの「本当の思い」が抜け落ちている
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月16日 17時30分
ジャーナリストの佐々木俊尚が8月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。8月15日に開催された全国戦没者追悼式について解説した。
終戦から78年、全国戦没者追悼式を開催
終戦から78年を迎えた8月15日、 犠牲となった約310万人の戦没者を慰霊する政府主催の全国戦没者追悼式が東京の日本武道館で開かれ、全国から遺族の代表などが参列した。2023年は4年振りに47都道府県すべてから遺族が参列する予定だったが、台風7号の影響で10府県の遺族が参列を見合わせることとなり、参列者数は1855人だった。
飯田)終戦から78年を迎えた8月15日でした。
佐々木)大人として終戦を迎えた人は、既に100歳近い。(当時20歳の方は)98歳ですからね。長い年月だなと思います。
飯田)そうですね。
佐々木)私が新聞記者だった時代は毎年、5月~6月ぐらいになると平和報道取材班が組まれました。8月15日に向けて2ヵ月ぐらい取材し、終戦記念日の前後に連載する。どの新聞社やテレビ局もそういうスタイルで行っています。報道の内容は大体「語り継ぐ戦争」なのです。
飯田)報道の内容が。
佐々木)原爆被害者や空襲被害者、あるいは戦地に行った兵士たちに話を聞くのです。80年代終盤~90年代初頭までは、このやり方ができていました。
兵士として戦争体験した人は100歳に近い ~戦後78年も語り続けているうちに記憶が変化していることも少なくない
佐々木)当時は戦争経験者、例えば兵士として戦地に行った人はまだ70代ぐらいだったのでお元気で、皆さんに話を聞けたのです。しかし現在、例えば特攻隊で生き残った人に話を聞こうとすると、100歳くらいになっているわけです。
飯田)そうですね。
佐々木)取材の対象としては、現実的に難しい。さすがに戦後78年も語り続けていると、正直言って、話しているうちに記憶が変わってくるのです。我々も記憶が自分のなかで変わっていくことがあるではないですか。
体験者が戦後の価値観で話すようになってしまい、「実際に戦地に行った人たちが本当はどういう気持ちだったのか」は語り継げなくなっている
佐々木)戦後の価値観で話すようになってしまい、「実際に戦地に行った人たちが本当はどういう気持ちだったのか」ということを語り継げなくなっているのです。
飯田)なるほど。
佐々木)実際、私はかつて戦争に行った大正生まれの人たちに会って取材したことがあります。当時、20代ぐらいで戦争に行った人たちが戦後、どういう思いをしていたかと言うと、「自分たちはお国のためだと思って頑張って戦地へ行ったのに、帰ってきたら“お前たちのやってきたことは意味がなかった”と否定されてしまった」と言っていたのです。
飯田)かつて聞いた話では。
佐々木)戦後20年~30年経ったころは、(そう言われて)「何とも言えない気持ちだった」と言っていました。「自分たちがやったことは、なぜあんなに否定されなければいけなかったのか」ということを書いている作家も少なくありません。
戦中派の人たちの「本当の思い」が現在の「語り継ぐ戦争」では抜け落ちてしまっている
佐々木)「大正生まれの戦中派の方々の思い」のようなものは、もはや2023年の「語り継ぐ戦争」のなかでは完全に抜け落ちてしまっているところがある。
飯田)いま聞くと。
佐々木)最近の戦争映画などもそうですが、太平洋戦争の映画でも、まるで当時の日本人は全員反戦だったような描き方をするではないですか。そんなわけがないのですよ。実際には戦争を肯定した人が大勢いたのです。確かに末期の空襲が頻発していた時期はそう思っていたかも知れませんが、少なくとも真珠湾のころはそうではなかったわけです。
飯田)「スカッとした」という手記が残っていたりします。
佐々木)その辺りの記憶の改ざんもある。それに加えて、冷戦が終わってから34年も経ち、今回のウクライナ侵攻のように、日本が侵略する側ではなく「される側としてどう戦争を防ぐか」という考え方に切り替えなければいけない時代になっている。そういうことも含めて、平和報道のあり方を考えなければいけないと思います。
飯田)確かに、やりきれない気持ちのようなものに関しては、例えば小松左京さんがSFとして書いていたり、1960年代~1970年代ぐらいの作家の著作には残っていますよね。
佐々木)その時代の空気感が「もう終わってしまっている」というのは実に残念です。我々はもう1回、過去に学んでその部分を切り出した方がいいのではないかと思います。
飯田)戦史研究センターでは、当時の手記等を展示しています。
佐々木)それを学べば、「ウクライナ戦争で闘っているウクライナ人がどう思っているか」ということが理解できるのではないかと思います。
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