岸田総理の経済政策に「疑問」 安全保障・外交は素晴らしいが
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月16日 17時40分
記者団の取材に応じる岸田文雄首相=7日午後、首相官邸
ジャーナリストの佐々木俊尚が8月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。前期比プラス1.5%となった4月~6月のGDPの実質伸び率について解説した。
4月~6月のGDP実質伸び率、年率換算でプラス6.0%
内閣府が8月15日に発表した2023年4月~6月までのGDP速報値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3ヵ月と比べてプラス1.5%となった。これが1年間続いた場合の年率に換算するとプラス6.0%で、3期連続のプラスとなる。
佐々木)6%という数字だけを見るとすごいですね。高度成長期は10%ぐらいあったと言われています。6%というと、バブル期ぐらいの数字ではないでしょうか。円安で輸出が増え、インバウンドの外国人観光客が増えたところが押し上げ要因になっているけれど、内需が弱いことを経済学方面の方々から指摘されています。
物価は上昇しているが、賃金が追い付かないので消費が減退している
佐々木)しかし、押し上げられてはいるけれど、輸入が大きく減っている。円安でものが買えなくなっていることと、物価が上昇しているのに賃金が追い付かないので、消費が減退しています。それが輸入減につながっており、少し危ない状況になってきているのではないでしょうか。
飯田)そうですよね。
佐々木)基本的な考え方としては、いずれにしろ物価が上がらないと賃金も上がらないので、物価が上がらないことがいいというわけでもないのです。
飯田)物価が上がらなければ賃金も上がらない。
佐々木)ただ、物価が上がっても賃金がそれに追い付いていかないと、結局は消費が回らなくなってしまう。この状況が続くと、また物価が下がってデフレ時代に逆戻りする可能性があります。ここをどうやって乗り切るかということですが、物価が上がるのを抑え込むのはよくないですよね。
物価が上がっても消費が減らないように支える政策が必要 ~減税やガソリン補助金の延長など
佐々木)ですので、物価が上がっても消費が減らないように支えることが、政府の政策としては大事です。普通に考えれば減税など、消費を上乗せできるような手段が必要です。
飯田)消費を喚起することが。
佐々木)9月からガソリン補助金がなくなってしまうので、いまレギュラーでリッター200円はそろそろ……。
飯田)段階的に絞ってきているという話です。
佐々木)市中価格の200円もあっという間に突破するとなると、ますます消費が減退するので、もう1回、消費を刺激する何らかの政策を打たないといけない。でも、また消費増税の話などが出ています。
飯田)社会保障費の増額など。
佐々木)増税の話が何となくメディアのなかから出てきている。そのようなニュースが駆けめぐると「また増税するのか」ということで、ますます消費マインドを減らしてしまうため、よくないと思います。
メディアに求められること
佐々木)「デフレマインドからどう脱却するか」がいちばん大事なポイントなのです。
飯田)デフレマインドからどう脱却するか。
佐々木)「物価が上がるけれど賃金は上がっていない。だからここで消費を止めよう」とか、「なるべくものを買わないようにしよう」などと報道するのではなく、「ここは頑張って景気を上乗せし、賃金を上げていこう。そのためには政府が減税し、消費を刺激するような政策を打て」と訴えることが、いまのメディアに求められている役割ではないでしょうか。
社会保障費の負担も増えて可処分所得が減少 ~アメリカにならって「日本も利率を上げろ」という報道はおかしい
飯田)庶民からすれば消費しようとしても、可処分所得が減っている以上、「もうできない」となってしまう。可処分所得を増やすような手を打ってくれと思います。
佐々木)実質、年収ベースの中央値は400万円台半ばぐらいだと思いますが、その増減に加えて、社会保障費の負担が増えています。そのため、20年前と比べて可処分所得が減っているという話もあります。
飯田)使えるものも使えないし、ここで「財政規律を引き締めろ」という流れになると、「逆走していないか?」と感じます。
佐々木)アメリカは全体的に利率を上げて、インフレを抑えようとしているではないですか。それにならって、日本もそろそろインフレを止めようというような。
飯田)「金融緩和はやめよう」など。
佐々木)そのようにメディアが主導していますが、それもおかしな話ですよね。
欧米に追随してここで日本が金利を上げたら、景気が失速してデフレ時代に戻ってしまう ~ここは日銀に留まって欲しい
佐々木)欧米でインフレが進行しているため、「政策金利を上げよう」という話になり、実際に上げてきています。しかし、「日銀もそれに追随すべきだ」という論調がメディア内で主要になってきていますが、欧米の置かれている状況と日本の置かれている状況はまったく違うではないですか。
飯田)違いますね。
佐々木)特にアメリカはインフレで好景気が続いていた状況で、インフレ率が高すぎるから金利を上げよう、という話になっているだけです。
飯田)アメリカの場合は。
佐々木)日本はその間、ずっとデフレが続いていたけれど、今年(2023年)の初めぐらいからようやく景気が上を向いてきて、賃金もこの春闘でかなり上がってきた。
飯田)ようやく。
佐々木)「ここからだ」というところなのですが、なぜそこでインフレが続いていた欧米に追随し、金利を上げなければいけないのか。ここで金利を上げたら、間違いなくまた景気が失速して、デフレ時代に戻ってしまう。ここは何とか日銀に留まって欲しいです。
安全保障・外交政策はよいが経済についての政策がよくわからない岸田政権
佐々木)いちばん心配なのは岸田さんです。
飯田)岸田政権。
佐々木)岸田さんは外務大臣を長く務めており、特に安倍政権時代の外務大臣を経験したので、安全保障・外交政策は素晴らしいと思います。しかし、「経済をどう思っているのか」はわからないところがある。
飯田)安全保障・外交政策はいいけれど。
佐々木)「新しい資本主義」や「異次元の少子化対策」など、効果があるのかわからない政策ばかり打ち出しています。ここで財務省的な動きに引きずられて金利を上げる方向に政策誘導したり、増税の方向に走られると本当に困ります。
ブライダル補助金は少子化対策になるのか
飯田)ガソリン補助金についても、最初は暫定税率を一時停止すれば下げられるのではないかという議論があったのに、いつの間にかそこではなくなってしまいましたね。
佐々木)国民民主党がそれを指摘していたのだけれど。
飯田)玉木雄一郎さん。
佐々木)あの政党は、政策には強いなと思いました。自民党の動きは鈍いなという感じがしますね。
飯田)少子化対策に関しても「ブライダル補助金」という話が出ていますが、一部の業界のみになってしまうのではないかという批判が出ています。
佐々木)結婚している家庭や夫婦に対する支援は多いのですが、その前段として、子どもが生まれない大きな要因の1つは「結婚できない」ことなのです。
飯田)結婚したくてもできない。
佐々木)特に、貧困層に対する手当をどうするかという議論が抜け落ちています。常にバランスの悪い政策議論になっている感じがしますよね。
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