「領土を諦めればウクライナのNATO加盟もあり得る」 NATO幹部の「発言・即撤回」は、あえての戦略か
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月18日 11時35分
【G7広島サミット】記者会見するウクライナのゼレンスキー大統領=21日午後7時54分、広島市中区
日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が8月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナのNATO加盟に関するNATO幹部の発言について解説した。
NATO幹部が「ウクライナが領土を諦めればNATO加盟もあり得る」と発言 ~翌日に撤回
飯田)ウクライナ情勢についてですが、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を望んでいます。しかし、そのNATO幹部が「ウクライナが領土を諦め、その代わりに加盟するという解決策もあり得ると思う」と発言しました。翌日に事実上、その発言は撤回に追い込まれましたが、ヨーロッパも足並みが揃っていないのでしょうか?
秋田)私は5月にエストニアのタリンで開かれた国際会議に行きました。そこではエストニアの国防軍トップや、ラトビアの首相にインタビューする機会がありました。
ロシアに対して最強硬派のバルト三国とポーランド ~バッファゾーンを経ているドイツやフランスと「ウクライナにどこまで押し返して欲しいか」に温度差
秋田)バルト三国とポーランドは帝政ロシアの時代から、何度もロシアに侵略・併合された歴史がありますので、ロシアに対してはヨーロッパのなかでも最強硬派であり、厳しいのです。
飯田)バルト三国とポーランドが。
秋田)それに対して、バッファゾーン(緩衝地帯)を経てロシアと向き合っているドイツやフランスももちろん、ロシアには厳しいのですが、「第三次世界大戦になるようなことだけは避けたい」というところに力点があるのです。
飯田)ドイツやフランスなどは。
秋田)一方、バルト三国とポーランドは「併合されたくない」というところに力点があるので、それぞれウクライナに「どこまで押し返してもらうか」という点で温度差があるのですね。
米大統領選も控え、撤回を前提にわざと発言した可能性も ~ある程度のところで「ウクライナに停戦交渉に入って欲しい」という声の地ならし的な発言か
秋田)今回の発言は、NATO事務総長の補佐役を長年やっていた人によるもので、いわば官僚です。
飯田)ノルウェー出身のスティアン・イェンセン氏ですね。
秋田)その人が、口を滑らせてこんな問題発言をするとは思えないのです。
飯田)こんなあからさまな言い方をするとなると。
秋田)深読みすれば、ウクライナの反転攻勢がなかなか上手くいかないなかで、11月からはアメリカの大統領選が本格化します。トランプさんなどは「ウクライナ支援は欧州にすべてやらせるべきだ」というような立場です。
飯田)そうですね。
秋田)そうしたなかで、ウクライナにある程度のところで「停戦交渉に入って欲しい」という声も出てくると思います。そのため、地ならしも含めて発言し、その上で撤回したという面もあるかも知れません。
反転攻勢が上手くいかない場合は「どこかで落としどころを考えて欲しい」 ~肩叩き的なニュアンスも
飯田)ウクライナに対して、「それも考えておいて欲しい」というようなメッセージですか?
秋田)「そういう趣旨ではなかった」と撤回する前提なのですが、そういうことを言う。そのような発言がいろいろ出てくれば、ウクライナも「反転攻勢をさらに早く進めなければいけない」という無言のプレッシャーになります。
飯田)ウクライナに対して。
秋田)上手くいかなかったときは、クリミア半島をすべて取り返すところまでいかなくても、「どこかで落としどころを探して欲しい」という肩たたき的なシグナルもあるのではないでしょうか。
「ロシアを絶対に敗北させなければならない」は一致しているが ~「ウクライナがどこまで戦うのか」については温度差がある
飯田)フランスのサルコジ元大統領が、いまのマクロン政権のやり方は、「途中まではプーチン大統領と対話もしていてよかったのだけれど」というようなメッセージを出しましたが。
秋田)2月にミュンヘン安全保障会議に出る機会がありましたが、そこで感じたのは、「欧州の雰囲気は簡単にまとめて言えるものではないな」ということです。
飯田)複雑なところがある。
秋田)ただ、気を付けなければならないと思うのは、ボトムラインはフランス、ドイツも含めて「ロシアを絶対に敗北させなければならない」というところです。ここは最低限、みんな一致していると思います。その上で、1ラウンドで「ウクライナがどこまで戦うのか」については温度差があるということです。
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